HPLC の原理と概要: 順相、逆相、サイズ排除など

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このページの最終更新日: 2024/12/26

  1. 概要: HPLC とは
  2. 逆相と順相
  3. サイズ排除 HPLC
  4. 粒子径
  5. カラムのサイズ

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概要: HPLC とは

HPLC は high-pressure liquid chromatography の略で、高圧で行う液体クロマトグラフィーのことである。低圧での実験に比べカラムの担体の粒子が細かく、高密度に充填されている。そのため、実用的な流速を得るために高い圧力を必要とする (1)。

このページは、HPLC の原理および種類 を中心にまとめている。移動相、固定相、線速度など、クロマトグラフィー全般に当てはまる知識については、クロマトグラフィーの概要 のページと重複する部分もある。

HPLC の実際の取り扱いについては、以下のような関連ページがある。

HPLC は、図 (7) のような一連の装置を使って行われる。主な構成要素は以下の通りである。

  • 移動相とそれを流すポンプ
  • サンプルインジェクター (オートサンプラー)
  • カラム、カラムオーブン
  • 検出器
  • フラクションコレクター
HPLC

HPLC の条件を決定する際に検討できる項目は、主に以下のようなものである (2)。

  • カラム: ブランド、修飾基、サイズ (長さと内径)、粒子径
  • 移動相: 移動相の種類 (有機溶媒か緩衝液か)、pH
  • 試料: 注入量、試料溶媒

HPLC には以下のようなモードがある。基本的にはカラムと移動相によってモードが決定される。

  1. 分配モード、分配クロマトグラフィー
    • 逆相モード
    • 順相モード
  2. サイズ排除モード
  3. イオン交換モード
  4. イオン排除モード

逆相と順相

極性の高い・低いは相対的な指標であるが、移動相の極性 > 固定相の極性となる場合を逆相系、そうでない場合を順相系という。

逆相 HPLC

逆相系の HPLC では、カラム内に疎水性の官能基が並んでいる。よく使われる逆相カラムの一つに ODS カラム がある。ODS は octadecyl silica であり、18 個の炭化水素基 -CH2 が並んでいる (末端は -CH3)。ODS カラムは炭化水素鎖が長く、サンプルとの相互作用が強いカラムである (2)。溶出にかかる時間が長すぎる場合は、C8、C4、C3 などのカラムが使われる。

一般に、逆相 HPLC の移動相には有機溶媒系と水系の混合溶液が用いられる (2)。

> 水系の移動相の割合が増えるなどして、溶離液の極性が上がったらどうなるか?

  • 試料の疎水性部が反発を受けて、カラムのオクタデシル基と強く密着するようになる (2)。
  • すなわち、系全体の疎水性部の表面積を小さくする方向に働く。
  • その結果、試料の保持時間は長くなる。

移動相の pH が変わると、溶質の構造が変わって溶出時間も変化する。溶質が電離する -OH 基を含む場合などには特に影響が大きい。そのため、移動相には緩衝液を加え、pH を一定に保つのが一般的である。

アセトニトリル

カラム圧や UV 吸収が低い (2)。最も汎用的で便利な有機溶媒と言える。

メタノール

アセトニトリルよりもカラム圧が上がり、かつ UV を吸収してしまうが安価 (2)。

テトラヒドロフラン

溶出力は大きいが、PEEK 樹脂を膨潤させる。試料が溶出しないときや、分離パターンを変えたいときに用いる (2)。

イソプロパノール

溶出力は大きいが、カラム圧が高い (2)。試料が溶出しないときや、分離パターンを変えたいときに用いる。


順相 HPLC

順相 HPLC では、C18 基をつけないシリカゲルそのものなどが充填剤として使われる (5)。原理はシリカを使った TLC と同じで、シリカとサンプルが電気的に相互作用する。

サイズ排除 HPLC

とりあえずは ゲル濾過クロマトグラフィー を参照のこと。


粒子径

一般に、カラムの粒子径は理論段数 theoretical plate と反比例する。理論段数はカラムの性能に関わる指標の一つで、数値が大きいほどピークがシャープになり、「良いカラム」であると判断される (ref 4, 計算式もリンク先にあります)。

一方、粒子径が小さいとカラムの圧力は高くなる。


カラムのサイズ

カラムの内径が細いと、移動相の溶媒を節約できる というメリットがある (6)。移動相の線速度が等しければ、内径を変えても保持時間や分離度は変わらない。

ただし、カラムの内径が細いほど、試料のバンド幅は広くなる (6)。試料溶媒を移動相と同じ、または移動相よりも極性を高くすることによって、試料溶媒の影響を抑えることができる。

一般的な内径は 5 mm 前後。分取した試料の使い道によって、数十 mm までスケールアップすることが可能である。内径が細いものが分析用、太いものが分取用。


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References

  1. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  2. 一般財団法人化学物質評価研究機構 クロマト技術部. これでレベルアップ 逆相 HPLC におけるメソッド開発に役立つノウハウとトラブルシューティングの解説. Web (pdf).
  3. 逆相カラムの上手な使い方. Link: Last access 2018/05/05.
  4. 理論段数とは? 島津 HP. Link: Last access 2018/05/05.
  5. 第3部:逆相・順相、HILIC、イオン交換等のカラム. Link: Last access 2018/05/05.
  6. カラム内径の特徴と選択. Link: Last access 2018/05/08.
  7. By https://commons.wikimedia.org/wiki/User:YassineMrabet/Gallery

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このページの目次

1. 概要