モーリスの水迷路試験: Morris water maze test

experiments/behavior/morris_water_maze
2018/08/13 更新

  1. 概要: モーリスの水迷路試験とは
  2. 方法
    • 測定するパラメーター
    • 実験の流れ
    • 結果に影響する要因
    • 注意点
  3. 関係する脳領域

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概要: モーリスの水迷路試験とは

モーリスの水迷路試験 Morris water maze とは、空間学習能力 spatial learning と記憶力を測定するための行動試験である (6)。

Morris water maze という名前が最も一般的であるが、Morris swimming pool, Morris maze, swimming maze, spatial navigation task などとも呼ばれる(6)。Morris らのグループからの論文では、謙虚に単に water maze としている。


方法

概要は下の写真 (4) に示す通り。



  • ラット を不透明の直径 1 m のプールに浮かべる。
  • プールには、見えないように platform が設置されており、動物はそこに辿り着くと登って休むことができる。
  • Platform の場所は、装置に設置された visual cue (下の図では青、オレンジ、緑の図形)を手がかりにして記憶する。通常は、platform の位置を変えずに、ラットを入れる位置を変えて学習させる。
  • 何回かトレーニングを行ったあとでは、記憶力が高い動物ほど、platform に辿り着くまでの時間が短くなる。
  • 一度、このテストを行ってルールを理解したラットは、新しい迷路に入れられても、早く課題を学習することができる (5)。学習効率がデータになる。

測定するパラメーター

Latency to reach the platform (sec):

見えないプラットフォームに辿り着くまでの時間 (5). 肉眼で観察しながらストップウオッチで計測することも可能だが、プールの上からカメラで撮影し、PC で解析すれば遊泳距離なども同時に測定できる (8)。

Total distance (m):

プラットフォームに辿り着くまでに泳いだ距離 (7)。

Path efficiency

Shortest path length/actual path length (7).

Time periphery (s):

プールの縁の部分で過ごした時間 (7)。


実験の流れ

Learning phase

Hidden-platform に辿り着くまでの時間などが短くなっていく様子を測定する。文献 7 では 5 日間行っている。

Probe test

学習が成立したあとに platform を取り除いて行うテスト。プールを 4 等分して、それぞれの区画 quadrant にいる時間を測定する。場所を覚えている場合、platform があった区画にいる時間が長くなる。

普通は通常の試験の後に行うが、時間が 60 s と長いことが問題になる場合もある (3)。場所を覚えていない個体は動き回り target qurdrant にいる時間が少ない。しかし、賢い個体もすぐ次を探す行動に出るため、同様に時間が少なくなる。

Reversal test

Platform の位置を変えて行う再テスト。最初に platform の位置を覚える acquisition learning に対して、新しい位置を覚えるような記憶の上書き作業を逆転学習 reversal learning という。 Acquisition learning とは違った結果を与えることがある。


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結果に影響する要因

動物の種類、コンディションなど

> ラット で考案されたテストで、マウスには問題点が指摘されている (6)。
  • 一般に、モリス水迷路でのマウスの遂行能力 (空間学習記憶)はラットよりも低い。
  • しかし、課題遂行の動機付けが「水からの逃避」でない場合は、マウスとラットの遂行能力は同等。
  • 水泳能力、視力、水に対する反応性などの違いが影響していると考えられる。

> 一般にメスよりもオスの方が空間認識能力に優れる (6)。
  • テストステロン testosterone, エストラジオール estradiol など性ホルモンの影響も調べられている。
  • 成績は上がったり下がったりと色々な報告がある。おそらく投与量による。

> 加齢によって成績は低下する (6)。
  • 遊泳能力の低下はその一因であるが、加齢による認知能力の低下は他の試験でも示されている。
  • 認知能力の低下は、加齢による海馬体 hippocampal formation の萎縮などと関連している。

> 食べ物、栄養状態によっても左右される (6)。
  • 老化の速度を介した二次的影響かもしれない。
  • ブルーベリー、ほうれん草、ストロベリー抽出物による成績の向上。抗酸化作用による?
  • DHA, EPA などの n-3 系高度不飽和 脂肪酸 による成績の改善。

実験装置の影響

> 周辺の景色に影響される。
  • カーテンで覆うと成績が下がるので、visual cue を使っていることは確かである (6)。
  • どれだけ visual cue を用意すれば十分であるかはわかっていない。

> 装置自体にも影響される。
  • 水を不透明にするために、ある論文では粉ミルクを、他の論文では塗料を使ったりしている。
  • 水温は遊泳能力に影響するため、重要である。
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関係する脳領域

複数の領域の相互作用

  • Thalamic lateral internal medullary lamina lesion で、hidden-, visible platform の学習が阻害 (6)。
  • Lesions of licus coeruleus, raphe nuclei も成績に影響する (6)。
  • Raphe dorsalis lesion は影響なし (6)。
  • Nucleus accumbes lesion も影響なし (6)。

海馬体 hippocampal formation

海馬体 hippocampal formation は、MWM でテストされる空間記憶 spatial memory で中心的な役割を果たす領域である (6)。

> 海馬の機能に関連する記憶と、関連しない記憶を両方テストすることができる (3)。

> Hippocampus lesion で、hidden- but not visible platform の成績が低下する (6)。

: Visible platform での成績が変わらないので、この低下は少なくとも遊泳能力や視覚認知のせいではない。
: 常に同じ位置にある platform は認識できるので、heading ventor の能力は低下していない。

> Hippocampus lesion による impairment の程度は lesion する容積に依存する (6)。
> Dorsal hippocampus lesion の方が、ventral hippocampis lesion よりも影響が大きい (6)。

> HIPP lesion で失われ、MWM でテストされる空間記憶は、他の記憶と違う部分があるかもしれない (6)。

: Ibotenic-acid HIPP lesion されたラットは、hidden-platform task が阻害される。
: しかし、味などを指標にした discrimination task を正常にこなすことができる。


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これまでに投稿されたコメント

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2019-10-17 08:10:24.306520

 

動物が可哀想だと思いますが、このような実験が科学の発展に貢献しているのでしょうね。

アップデート前、このページには以下のようなコメントを頂いていました。ありがとうございました。

2017/05/18 10:16 おもしろいテストですね!



References

  1. Leng et al. 2005a. Effects of prenatal methylazoxymethanol acetate (MAM) treatment in rats on water maze performance. Behav Brain Res 161, 291-298.
  2. Hanell & Marklund 2014a (Review). Structured evaluation of rodent behavioral tests used in drug discovery research. Front Behav Neurosci, 8, 252.
  3. Gerlai 2001a (Review). Behavioral tests of hippocampal funciton: simple paradigms comprex problems. Behav Brain Res 125, 269-277.
  4. Chan et al. 2012a (Review). From objects to landmarks: the function of visual location information in spatial navigation. Front Phychol 3, 304.
  5. ベアーほか 2007a (Book). 神経科学 脳の探求. 西村書店.
  6. D'Hooge R & De Deyn PP. 2001a (Review). Applications of the Morris water maze in the study of learning and memory. Brain Res Rev 36, 60-90.
  7. Timic et al. 2013a. Midazolam impairs acquisition and retrieval, but not consolidation of reference memory in the Morris water maze. Behav Brain Res, 241, 198-205.
  8. 行動薬理学のススメ. Web.