NMR によるグルコースの検出と定量

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 1H NMR による検出と定量
  2. 13C NMR による検出と定量

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1H NMR による検出と定量

グルコースは 7 つの non-exchangable protons をもつため,1H NMR スペクトルは複雑なパターンを示す。さらに,水溶液中ではα-アノマーと β-アノマーが平衡状態で存在する ため,両者のピークが観察される。



水溶液中では,α-アノマー(α-グルコース)が 36%,β-アノマー(β-グルコース)が 64% で,直鎖状グルコースはほとんど存在しない(2)。

グルコースのケミカルシフト値は以下のとおり(1)。DSS-trimethyl singlet を標準(0 ppm)にしたときの値である。測定条件は 35℃,pH 7-8,Multiplicity は 250 MHz の磁場で観察されたもの。1CHのピーク(α は 5.216 ppm,β は 4.630 ppm)が比較的観察しやすいが,後者は水の周波数に近く,water suppression をしていると見えない。

α-アノマー

 

Group Shift (ppm) in D2O Multiplicity J (Hz) Connectivity
1CH 5.216 Doublet 3.8 1-2
2CH 3.519 DD 9.6 2-3
3CH 3.698 Triplet 9.4 3-4
4CH 3.395 Triplet 9.9 4-5
5CH 3.822 Multiplet 1.5 5-6
6CH 3.826 DD 6.0 5-6'
6'CH 3.749 DD -12.1 6-6'

 

β-アノマー

 

Group Shift (ppm) in D2O Multiplicity J (Hz) Connectivity
1CH 4.630 Doublet 8.0 1-2
2CH 3.230 DD 9.1 2-3
3CH 3.473 Triplet 9.4 3-4
4CH 3.387 Triplet 8.9 4-5
5CH 3.450 Multiplet 1.6 5-6
6CH 3.882 DD 5.4 5-6'
6'CH 3.707 DD -12.3 6-6'

NMR のピークは,条件によっては定量性を示すため,グルコースのピーク面積からその量を測ることが可能である。ただし,一般に以下のような問題点がある。

 

> 最も見やすい α-アノマーH1(1H-NMR で 5.22 ppm)は,水のピークに近くベースラインが平らでない。

> α-アノマーとβ-アノマーが,試料溶液中で平衡状態であることの確証がない。

> 蟻酸塩 formate を外部標準として,血糖値を測定した報告がある(3R)。

: NMR で求めた値は,生化学的手法で測定した値よりも約 20% 低かった。

: NMR で血漿 plasma,生化学的手法で血清 serum を使ったためと考えているが,そんなに違うものか。

: なお,血糖値の自動測定装置には ± 10% 程度の誤差が見込まれるらしい。

13C NMR による検出と定量

References

  1. Govindaraju et al. 2000a. Proton NMR chemical shifts and coupling constants for brain metabolites. NMR Biomed 13, 129-153.
  2. Gurst 1991a. NMR and the structure of D-glucose. J Chem Educ 68, 1003-1004.
  3. Ando et al. 2010a. Quantification of molecules in 1H-NMR metabolomics with formate as a concentration standard. J Toxicol Sci 35, 253-256.

 

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