DNA の抽出: 原理、プロトコール、注意点など

experiments/dna/extraction
2018/08/28 更新


  1. 概要: DNA 抽出の原理
  2. 非侵襲的手法 (糞や毛からの抽出)
    • 糞からの DNA 抽出

広告

概要: DNA 抽出の原理

DNA は水溶性であるため、基本的には水の中で組織を破砕すれば溶け出てくる。ただし、それなりの量の DNA を高純度で得たい場合には、組織を効率的に破砕し、かつ DNA 以外の水溶性物質を取り除く必要がある。

したがって、DNA 抽出は大まかに以下の 3 つのステップから成る (1)。

  1. 細胞を破壊 (溶解) する。さらに 3 パターンがある。
    • SDS などの ionic detergents を使う方法。
    • グアニジン塩など、分子の疎水結合を弱めて水溶性を高める ionic detergents を使う方法。
    • アルカリと ionic detergent を組み合わせる方法 (→ アルカリ法によるプラスミド抽出)
  2. DNA とタンパク質の結合を切り離す。
    • プロテアーゼ を使用する方法。
    • DNA を吸着するマトリックスを使う方法。
    • フェノール/フェノクロ処理などでタンパク質を変性させて取り除く方法。
  3. 最後に エタノール 沈殿で塩を除く必要がある。

TNES 緩衝液 がよく使われる。


非侵襲的手法

絶滅危惧種の DNA 分析、野生の個体群からの試料採集など、DNA を非侵襲的に得る必要がある研究分野も多い。哺乳類では、毛や糞を用いるのが普通であるが、これらは細胞数が少なくかつ不純物が多いために、保存方法や DNA 抽出方法を工夫する必要がある (2)。

非侵襲的」という言葉は捕獲せずに採取できる場合に使い、バイオプシーなど非致死的と区別される (2)。英語では、非侵襲的は non-invasive、非致死的は non-destructive である。

以下のような試料が使われる。

試料 特徴
腸管細胞が含まれる (2)。多くの動物で主流となっている非侵襲的分析の試料である。
類人猿の場合は、ベッドで寝るので採集が容易 (2)。
尿
精液 糞や毛に比べると DNA 抽出は容易であるが、採取の機会は少ない。
血液

糞からの DNA 抽出

成功のポイントは

  • 新鮮な試料の 表面 からサンプリングすること (2)
  • Quiagen Stool kit など PCR 阻害物質を取り除ける方法で抽出すること (2)

このほか、条件に応じて試料の量、サンプルの保存方法などを検討する必要がある。ミトコンドリア DNA を標的とする場合は、当然だが解析は容易になる。


> いくつかの種については、経過日数と解析成功率の関係が報告されている (2)。
  • 当然のことながら時間の経過とともに DNA の分解は進むので、新鮮な試料を用いる方がよい。
  • 条件次第であるが、数日から 1 週間程度経過すると、PCR の成功率は低下するようである。
  • 湿度が高かったり、雨が降ったりすると成功率は低下する。

> 糞の表面からサンプリングすると成功率が高い (2)。
  • 表面を生理食塩水で洗い、それを試料とする方法。表面を削り取る方法も有効。
  • おそらく、糞の絶対量を減らして不純物を少なくすることにも意味がある。
  • 表面を綿棒で拭い取る方法もある。

> 抽出は Qiagen の 糞専用の stool kit を用いるのがベストかつ主流 (2)。
  • ただしこのキットは高価なので、その他の方法もよく用いられている。
  • フェノールクロロホルム法、Chelex-100 を使う方法。

広告

コメント欄

フォーラムを作ったので、各ページにあるコメント欄のうち、コメントがついていないものは順次消していきます。今後はフォーラムをご利用下さい。管理人に直接質問したい場合は、下のバナーからブログへ移動してコメントをお願いします。


References

  1. Green and Sambrook, 2012a. Molecular cloning: A laboratory manual, 4th edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press.

  1. 井上 2015a (Review). 非侵襲的試料を用いた DNA 分析 - 試料の保存, DNA 抽出, PCR 増幅及び血縁解析の方法について - 霊長類研究 31, 3-18.