DNA の抽出

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4-11-2017 updated


  1. 概要: DNA 抽出の原理
  2. 非侵襲的手法 (糞や毛からの抽出)
    • 糞からの DNA 抽出

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概要: DNA 抽出の原理

DNA の抽出は,大まかに以下の 3 つのステップから成る (1)。

  1. 細胞を破壊 (溶解) する。さらに 3 パターンがある。
    • SDS などの ionic detergents を使う方法。
    • グアニジン塩など,分子の疎水結合を弱めて水溶性を高める ionic detergents を使う方法。
    • アルカリと ionic detergent を組み合わせる方法

  2. DNA とタンパク質の結合を切り離す。
    • プロテアーゼを使用する方法。
    • DNA を吸着するマトリックスを使う方法。
    • フェノール/フェノクロ処理などでタンパク質を変性させて取り除く方法。

  3. 最後にエタノール沈殿で塩を除く必要がある。

非侵襲的手法

絶滅危惧種の DNA 分析,野生の個体群からの試料採集など,DNA を非侵襲的に得る必要がある研究分野も多い。哺乳類では,毛や糞を用いるのが普通であるが,これらは細胞数が少なくかつ不純物が多いために,保存方法や DNA 抽出方法を工夫する必要がある (2)。

非侵襲的」という言葉は捕獲せずに採取できる場合に使い,バイオプシーなど非致死的と区別される (2)。英語では,非侵襲的は non-invasive,非致死的は non-destructive である。

以下のような試料が使われる。

試料 特徴
腸管細胞が含まれる (2)。多くの動物で主流となっている非侵襲的分析の試料である。
類人猿の場合は,ベッドで寝るので採集が容易 (2)。
尿
精液 糞や毛に比べると DNA 抽出は容易であるが,採取の機会は少ない。
血液

糞からの DNA 抽出

成功のポイントは

  • 新鮮な試料の 表面 からサンプリングすること (2)
  • Quiagen Stool kit など PCR 阻害物質を取り除ける方法で抽出すること (2)

このほか,条件に応じて試料の量,サンプルの保存方法などを検討する必要がある。ミトコンドリア DNA を標的とする場合は,当然だが解析は容易になる。


> いくつかの種については,経過日数と解析成功率の関係が報告されている (2)。
  • 当然のことながら時間の経過とともに DNA の分解は進むので,新鮮な試料を用いる方がよい。
  • 条件次第であるが,数日から 1 週間程度経過すると,PCR の成功率は低下するようである。
  • 湿度が高かったり,雨が降ったりすると成功率は低下する。

> 糞の表面からサンプリングすると成功率が高い (2)。
  • 表面を生理食塩水で洗い,それを試料とする方法。表面を削り取る方法も有効。
  • おそらく,糞の絶対量を減らして不純物を少なくすることにも意味がある。
  • 表面を綿棒で拭い取る方法もある。

> 抽出は Qiagen の 糞専用の stool kit を用いるのがベストかつ主流 (2)。
  • ただしこのキットは高価なので,その他の方法もよく用いられている。
  • フェノールクロロホルム法,Chelex-100 を使う方法。

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References

  1. Green and Sambrook, 2012a. Molecular cloning: A laboratory manual, 4th edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press.

  1. 井上 2015a (Review). 非侵襲的試料を用いた DNA 分析 - 試料の保存, DNA 抽出, PCR 増幅及び血縁解析の方法について - 霊長類研究 31, 3-18.