統合失調症でみられる白質 white matter の変化 (ヒト)

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6-18-2017 updated

  1. 概要: 全体的な変化
  2. 領域ごとの事例
    • 脳梁 corpus callosum
    • Fronto-parietal pathway

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概要: 全体的な変化

統合失調症 schizophrenia では、脳 brain に多くの形態異常がみられ、白質 white matter の変化についても盛んに研究が行われている。しかし、現在までのところ報告は多岐にわたっており、必ずみられる特徴というものはない。結局のところ 統合失調症の病因は複数ある ので、white matter の変化もそのうちの一つと認識し、conclusive な結論を求めるべきではないのかもしれない。

DTI と FA

ヒトでは、解剖して調べることが難しいので、多くは白質の変化を非破壊で調べることができる diffusion tensor imaging (DTI) を用いている。このページで取り上げる研究も、多くが DTI を用いたものである。

DTI では、白質の変化は主に fractional anisotropy (FA) という指標で表される。FA は統合失調症患者で低下しているとする報告が大部分を占めるが、変化していないという報告も多い (ref 1; meta-analysis)。

> 低下の報告が 72% (13/18), 変わらずが 28% (13/18) (1R)。
  • 2014年のメタアナリシス。
  • 大麻の使用が統合失調症のリスクを上げることに言及している。

技術上の問題

たとえば患者で脳梁の volume 低下が認められたとして、これは脳全体の容積も低下させる。これをどのように補正するか? 脳全体の容積を対照群と一致させて比較する方法が一般的だが、これは脳梁 volume の低下を過小評価することになる (6)。このような問題には完全な解答はなく、結果を解釈する際に注意が必要である。


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領域ごとの事例

多くは患者 vs 健常者の比較だが、患者をグループ分け (幻覚 hallucination の有無、発症時期が早い/遅いなど) して比較している論文もある。


> 統合失調症患者で FA が白質全体にわたって低く、老化に伴う低下も顕著であった (3R)。

: 42名の日本人患者と、42名の健常者で比較した論文。健常者でも老化による低下がみられている。


脳梁 corpus callosum

脳梁 corpus callosum (CC) は、左右の半球で大脳皮質 cortex の相同な部位を繋ぐ神経繊維の束である。統合失調症で CC の容積は低下するという報告が多いが、その変化はわずかであり、研究対象によって結果が異なるのが普通である。

CC の容積の低下は callosal axon 数の低下によるとするデータもあり (6)、統合失調症で認知能力が低下する原因の一つと考えられる。Myelination の低下も報告されている (6)。


> 2003 年のレビュー (6)。CC にみられる変化はわずかであると主張。

: Summarizes 21 morphological study from 1994 to 2001.
: 患者で CC のサイズが 0.5 cm などの単位で小さくなる論文、変わらないとする論文が多い。
: Small CC と negative symptom に相関を認めた例もあるようである。
: Posterior CC で 約 20% の肥大を認めたケースも。


> 2001 年の Shenton によるレビュー (5) では、これまでの結果が inconsistent であるとまとめられている。

: 27 の MRI study のうち、17 が肥大を、10 が縮小を報告している。
: 実験上の問題点が指摘されているが、CC は大きな構造なので、部位による違いもあるのでは。


> 1999 年の患者同士を比較した論文では、CC の変化が発症の時期との関係から議論されている (8)。

: 1972、1990 年に、患者の CC size が増大しているという報告。
: Thicker CC, early onset, more negative symptom. Thinner CC, late onset, more positive symptom.
: ただしこれらの変化は女性のみでみられ、男性では CC が全般に小さくなる。
: 患者同士の比較であり、この論文では健常者は対象に含まれていない。


Fronto-parietal pathway

認知能力に関わる prefrontal cortex (PFC: human, rat) や orbitofrontal cortex (OFC: human, rat) を含む frontal area の異常は、統合失調症患者でかなり共通してみられる変化である。

患者でも対照群でも、low FA は verbal working memory, PANSS score, severity score of auditory hallucination などと相関しており、病状と密接な関係があると考えられている (7)。また、病状が顕在化する前から変化がみられる ため、予防や診断に使える可能性が指摘されている。


> 幻聴のある患者は、frontal-temporal area を結ぶ白質、左右半球を結ぶ白質で FA が低かった (2R)。

: Healthy, schizophrenia patients with or w/o auditory verbal hallucination で比較。
: N = 14, 14, 17。DTI 結果を TBSS (tract-based spatial statistics) で解析。
: 患者の両半球で FA が低かった領域は以下の通り。

Anterior thalamic radiation, body of the corpus calossum (forceps minor), temporal part of the superior longitudinal fasciculus and a small area in the inferior fronto-occipital fasciculus.

: 右半球のみで FA が低かった領域は以下の通り。

visual cortex-optic radiation, forceps major, body of the CC, inferior parietal lobule/auditory cortex.

: Fronto-temporal connection は、言語情報の処理に関係していると言われている。
: 低い FA は、言語情報の処理の障害 (自分の声が聞こえるなど) に関係しているかもしれない。


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References

  1. Cookey et al. 2014a. White matter changes in early phase schizophrenia and cannabis use: an update and systematic review of diffusion tensor imaging studies. Schizophrenia Res 156, 137-142.
  2. Ćurčić-Blake et al. 2013a. Not on speaking terms: hallucinations and structural network disconnectivity in schizophrenia. Brain Struct Funct, published online.
  3. Mori et al. 2007a. Progressive changes of white matter integrity in schizophrenia revealed by diffusion tensor imaging. Psychiatory Res 154, 133-145.
  4. van den Heuvel & Fornito, 2014a (Review). Brain network in schizophrenia. Neuropsychol Rev 24, 32-48.
  5. Shenton et al. 2001a (Review). A review of MRI findings in schizophrenia. Schizophrenia Res 49, 1-52.
  6. Innocenti et al. 2003a (Review). Schizophrenia, neurodevelopmen and corpus callosum. Mol Psychiatry, 8, 261-274.
  7. Schmidt et al. 2015a (Review). Approaching a network connectivity-driven classification of the psychosis continuum a selective review and suggestions for future research. Front Hum Neurosci, 8 Article 1047.
  8. Scheller-Gilkey & Lewine 1999a. Age at onset and sex differences in corpus callosum area in schizophrenia. Schizophr Res 40, 229-235.