大学・理系研究室における学生の指導 mentoring

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このページの最終更新日: 2020/06/11

  1. メンタリング mentoring とは
  2. Mentoring plan の作り方
  3. Mentoring の有効性
  4. 学生のモチベーション

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メンタリング mentoring とは

メンタリング mentoring とは、講義とは異なる 対話を中心とした指導方法 のことで、指導する側を mentor、指導される側を mentee という。Mentee は protege と呼ばれることもある。

大学における研究指導は、基本的に mentoring に該当すると考えて良いだろう。

英語の mentoring の定義もいくつか示しておく (1)。

  • Mentoring is a supportive learning relationship between a caring individual who shares knowledge, experience and wisdom with another individual who is ready and willing to benefit from this exchange, to enrich their professional journey.
  • Mentoring is an intense work relationship between senior and junior organisational members. The mentor has experience and power in the organisation, and personally advises, counsels, coaches and promotes the career development of the protégé.

"Mentoring" を形容する語句としては、internsive (Google Scholar hit 2,300 件, 2019 年 8 月、以下同じ)、close (1,700 件)、good (5,000 件)、sustained (560 件) などがある。


Mentoring plan の作り方

ネット上で、このような Mentoring Agreement の例 (pdf file) を見つけることができる。ポイントを見てみよう。

  • Mentor と mentee の間で交わす契約書のようなもの。定期的にコミュニケートすること、mentor 側の守秘義務などが記されている。
  • 長期目標、短期目標などを書いておく欄がある。
  • 役に立ちそうだと思ったのは、long-term skill/career development plan というページ。学生の将来のビジョンに照らして、身に着けたい実験などをリストにしてくれていると、教員としてもプランを立てやすい。
  • Plan は Evaluation Plan も含む。つまり、予め評価項目を決めておけば、それに従って mentoring を進めることができる。論文数、学会発表数など。
  • Mentee による教員評価のようなフォーマットがある。教員がこれを見る場合は書きにくいので、第三者に直接これを届けられるような体制があると良いのだろう。

私は、基本的にこのような mentoring plan は机上の空論であり、あまりに細かい plan は無意味であると考えている。実際の指導には、個人差による部分が極めて大きく、画一的なセオリーは成り立たない。学生を総体として捉えれば、統計的に最大の教育効果をもたらす手法は考案できるのかもしれないが、そういう態度は多様性の理解を基本とする生物学の大前提と反しているようで好きになれない。

しかし、例えば教育系プログラムで予算を申請する場合などには、役人や教育学部の教授のような輩が審査員に含まれる可能性を考慮し、彼らが好むような単語を申請書にちりばめる必要がある。このページは、mentoring 系の単語を整理する目的で作っている。


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Mentoring の有効性

講義よりも、実際に手を動かしたりすることで教育効果が向上することは感覚的に理解できる。私にはあまり馴染みのない分野だが、実際に教育効果を測定し、論文を書くような分野があるようである。

> 博物館に行くなどの informal learning の有効性を示した論文 (2)。

  • オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパでは、enrolments of senior school students to science subjects が 1990 年代から継続して減少傾向。具体的に何を数えているのかはっきりしないが。
  • 対象は 10–16 歳の小中学生。ある science program に参加した学生は、有意に content knowledge や science motivation を得たという結論。
  • 参加者と非参加者でテスト。Pre knowledge, post knowledge などを測定。

> Tripartile engagement framework というのがよく使われるらしい (2I)。

  • Cognitive engagement は、内容を理解したり、スキルを身につけたりすることへの意欲。
  • Behavioral engagement は、実際に参加する行動のこと。
  • Emotional engagement は、学習過程におけるポジティブまたはネガティブな感情のこと。

> DNA のビーズモデルが、高校生の教育に有用であることを示した論文 (3)。

  • Traditional lecture format で 116 人、ビーズモデルで 71 人、イラストレーションで 71 人の高校生を教育。テストとインタビューで評価。
  • Appendex として、実施されたテストも見ることができる。

> Research mentoring がキャリア志向に変化を及ぼすことを示した論文 (4)。

  • STEM は他のフィールドよりも早く成長している。
  • 最初は retention を上げるために research program を始めた。
  • 追跡調査をしてみたら,キャリア選択にもかなり影響していた,という話のようだ。研究活動をした方が,学生の gain は大きい。研究している時間の長さに比例する。研究の経験が,大学院の合格率を上げた。

> 学部での研究が STEM、non-STEM で同程度に有効なことを示した論文 (8)。

  • Undergraduate research の有効性については、STEM 分野の論文が多い。
  • この論文では、Drexel University の 12 年間の記録を解析し、non-STEM でもほぼ同様に learning gain と motivation の向上がみられることを示している。

> 大学の retention に関する総説 (5)。

  • Student retention は長い間議論されてきた問題。しかし、ほとんど改善されていない。
  • 1960 年代、low retention の原因は students に能力・やる気がないことと考えられていた。
  • 1970 年代、環境 (つまり大学) に原因があるという理解になってきた。Tinto は最初にこの説を詳細に本にしたと書いている。
  • 特に最初の一年が重要。授業以外で faculty とコンタクトすることが重要。かつては involvement という単語で。次第に engagement が使われるようになった。
  • 過去の communities と繋がっていると、大学に残る傾向がある。家族、協会、tribe など。
  • First year が重要なことは明らかなのに、非常勤講師や経験の少ない教員が講義を担当するケースが多い。

学生の意欲: Engagement

学生の意欲は、英語では engagement という言葉で表されることが多い。

> Engagement には、さまざまな定義がある (7)。

  • Investment, commitment, partifipation など。Effortful involvement in learning というのがわかりやすく良い定義のように思う。

> Engagement は、複数の theoretical constructs に分解される (7)。

  • Behavioral/emotional/cognitive engagement に分ける方法。
  • Behavioral は出席、宿題提出率などで測定可能。Emotional は interest, frustration, boredom など。Cognitive は behavioral より内面の問題で、アンケートなどによって測定されるらしい。

> Gamification とモチベーションの関係を調べた日本語論文 (6)。

  • イントロで、モチベーションの要因として、以下の 5 つを挙げた研究を引用している。外発的動機づけ、内発的動機づけ、健康度、対人関係、学院への適応度。学院への適応度と成績との間に正の相関関係があった (6I)。
  • Gamification とは、対象作業にゲームの娯楽性を導入すること。一般にモチベーションの向上を目的に行われる。
  • モチベーションの評価には、アンケートを用いている。

Engagement の測定方法

Engagement を測定する方法は、大きく以下の 4 つに分けられる (7)。複数の方法を組み合わせる例が多いようである (7)。

  1. Quantitative self-report
  2. Qualitative measures
  3. Quantitative observational measures
  4. Others

Quantitative self-report は、定量的な要素をもつアンケート形式の調査である。とりあえずは最も使われている NSSE のみを示しておくが (7)、文献 7 には 10 種類以上の survey が載っている。

NSSE

Indiana University で 2001 年に開発された National Survey of Student Engagement というテストで、college experience の質に対する全体的な評価として使われる (7)。


Qualitative measure は、インタビュー、教師による観察、記述式のアンケートなどによる定量的でない評価のこと (7)。2 番目によく使われる手法であり、exploratory study に有効であるという論文があるようだ (7)。欠点は (当然ながら) 定量的でないことであり、ゆえに quantitative self-report を補完するものとして捉えるのが良いだろう。

3 番目は quantitative observational measures で、アンケートによらない定量評価である。Discussion board への書き込みの回数、出席、オンライン資料の閲覧回数など (7)。

4 番目の others には、成績 performance が含まれる (7)。成績は engagement の一部ではないが、相関するという報告があることから、間接的な評価として使っているという解釈になる。ただし、「無理やり勉強させられている状態」では engagement が低く、短期の performance は高い。ただし、長期的な performance は「自主的に勉強している状態 (つまり engagement が高い状態)」で高くなるため、安易に成績を engagement の指標とすることには問題がある (7)。


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References

  1. 16 mentoring definitions. Link: Last access 2019/04/19.
  2. Martin et al. 2016a. The role of museum-based science education program in promoting content knowledge and science motivation. J Res Sci Teach, 53, 1364-1384.
  3. Rotbain et al. 2006a. Effect of bead and illustrations models on high school students’ achievement in molecular genetics. J Res Sci Teach, 43, 500-529.
  4. Carpi et al. 2017a. Cultivating minority scientists: Undergraduate research increases self-efficacy and career ambitions for underrepresented students in STEM. J Res Sci Teach, 54, 169-194.
  5. Tinto et al. 2006-2007a. Research and practice of student retention: Wat next? J Coll Stud Ret, 8, 1-19.
  6. 田中ら, 2016a. ランキングを用いた小テストによる学生のモチベーションと成績への影響. 電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report: 信学技報, 115, 153-158.
  7. Henrie et al. 2015a (Review). Measuring student engagement in technology-mediated learning: A review. Comput Educ 90, 36-53.
  8. Stanford et al. 2017a. Early undergraduate research experiences lead to similar learning gains for STEM and Non-STEM undergraduates. Stud High Educ 42, 115-129.

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