魚の卵巣: 発達段階と見分け方
- 概要: 魚類の卵巣
- 卵巣の構造
- 卵巣の発達様式
- 卵巣の各成熟段階の特徴
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概要: 魚類の卵巣
写真はナイルティラピアの卵巣 (3)。卵巣ページ と 精巣のページ に、生殖腺関係の用語集があります。
魚類の卵巣は、形態から以下の 3 種類に分類される (4)。
卵巣の構造と発達様式 (卵細胞の分化) に分けて表にする。魚類の系統的位置、卵巣の構造、発達様式、生殖モードには関係があるが、これらがどの程度まで一致するのか、まだよくわからない。
卵巣の構造
裸状型卵巣 |
膜に包まれていない卵巣をいう。卵子が体腔に直接放出される。系統的に古い魚種にみられる原始的な方式。 例: アミア (4)。ハイギョやチョウザメもこの構造をもつようである。 |
Secondary gymnovarian |
卵子は一度体腔に放出されるが、その後、直接卵管に入る。 例: ウナギ、サケ (4)。 |
嚢状型卵巣 |
卵巣が卵巣膜で完全に包まれている。卵巣から卵管に至る経路が、膜によって繋がっている。 例: ほとんどの真骨魚はこの方式。クロマグロ (4)。 |
卵巣の発達様式
完全同時発生型 |
全ての卵細胞が一様に発達し、一生に一度しか産卵しない (4)。 例: サケ、ヤツメウナギ (4)。 |
部分同時発生型 |
卵巣中に 2 から 3 の発達群がある (4)。一般に、年一回の産卵をする。 例: ニシン、マコガレイ、クロガレイ、コイなど (4)。 |
非同時発生型 |
Asynchronous type ともいう。複数の段階の卵細胞が、同時に卵巣内に存在する。一般に、産卵期が長い多回産卵魚がこのタイプ。 例: マダイ、ヒラメ、ブリ、カタクチイワシ、キスなど (4)。 |
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卵巣の各成熟段階の特徴
魚類の成熟段階は、生殖腺の形状に応じて 4 - 6 段階程度に分類される。以下、4 段階の分類を基本に、それぞれの大まかな特徴を示す。
Immature stage
透明で、やや赤みがかった黄色 pale reddish yellow color であることが多い。中空で双葉構造 bilobed structure をとる。
おそらくこの段階を stage I と II に分けて、それぞれ卵巣がきわめて小さく卵粒が認めがたい状態、卵巣が stage III ほど大きくなく卵粒が認めがたい状態としている報告もある (2)。
Maturing stage
固く膨らんだ状態 firm and turgid になり、淡いオレンジ色 pale orange color を呈する。サイズも大きくなる。
Stage III: 卵巣が肥大し、卵粒が用意に認められる状態 (2)。
Mature stage
成熟した卵巣はさらに大きく膨張し、明るい黄色を呈すとともに、複数の血管も視認できるようになる。卵母細胞 oocyte も肉眼で視認可能である (例えば文献 1, Merluccius merluccius の論文)。
Stage IV: 卵巣が最大となり完熟卵が混入した状態 (2)。
Stage V: 放卵中の状態で、卵巣の大きさは Stage IV よりも小さい。
Spent stage
卵巣は不透明で萎れた状態 flaccid で、色は yellowish brown になる。
Stage VI: 放卵を完了し、卵巣が収縮した状態。
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References
Al-Absawy 2010a. The reproductive biology and the histological and ultrastructural characteristics in ovaries of the female gadidae fish Merluccius merluccius from the Egyptian Mediterranean water. African J Biotech 9, 2544-2559.板谷, 藤岡 2006a. 石狩湾におけるソウハチの成熟全長と年齢. 北水試研報 70、81−87.Sun et al. 2016a. Global DNA methylation changes in Nile tilapia gonads during high temperature-induced masculinization. PLoS ONE, 11, e0158483.広瀬 1987a. クロマグロの成熟と産卵 – 可能な催熟刺激法. 養殖研ニュース, 13, 2-7.
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