アスコルビン酸 (ビタミン C): 構造、機能、代謝など

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2018/04/12 更新

  1. 概要: アスコルビン酸とは
  2. アスコルビン酸の誘導体
  3. アスコルビン酸のラジカル

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概要: アスコルビン酸とは

アスコルビン酸 (ascorbic acid, ビタミン C) は、図 1 のような構造をもつ補酵素の一種である。霊長類およびモルモットはこれを生合成することができないので、食物から摂取する必要のあるビタミンに分類される。

図 1: アスコルビン酸の構造

基本的な性状は次の通り (1)。

  • 無色結晶、融点 190-192℃、水に可溶、エタノールに不溶。
  • 還元力の強い物質で、酸化還元電位は +0.058 V (pH 7.0)。抗酸化物質として働く。
  • 新鮮な果汁、緑茶、大根などに多く含まれ、抗壊血病作用をもつ。D 体にはその効力がない。
  • 水溶液中で酸性を示すのは、エノール型水酸基の一つが解離するためである。

アスコルビン酸の誘導体

アスコルビン酸の誘導体を含む化粧品が多く販売されており、それらは基本的にこの分子の極性をコントロールすることで肌に浸透しやすくなることを売りにしているようだ。

細胞膜を含む生体膜 biological membrane は、脂質二重膜でできており、水溶性の高い分子は透過しにくい構造になっている。したがって、ビタミン C を含む化粧水を皮膚に塗っても、細胞の中までは浸透せず、抗酸化効果などは限定的であると予想される。

ビタミン C を誘導体化 (構造を少し変えること、修飾ともいう) することによって皮膚への浸透性を上げ、よりよい化粧品にするという方法論には説得力がある。また、ビタミン C 自体を安定化する修飾もある。


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アスコルビン酸のラジカル

アスコルビン酸は抗酸化作用のある物質である。これは、アスコルビン酸自身が生体分子の代わりに酸化されやすい性質をもつことを意味する。

酸素を受け取ったら酸化、水素や電子を受け取ったら還元 (生化学の格言) なので、アスコルビン酸が酸化されやすいということは、水素や電子を手放しやすいということである。実際、アスコルビン酸は 活性酸素に電子を 1 つ渡して自らがラジカルになる という性質をもっている (1,2)。

アスコルビン酸ラジカルの共鳴

アスコルビン酸は、上の構造式で左下の水酸基 (五員環に直接結合した -OH の左の方) が活性酸素に電子を渡して -O・ となり、アスコルビン酸ラジカルを形成する。

ただし、アスコルビン酸ラジカルは五員環を利用して共鳴するために、連鎖反応を引き起こさないとされる (3)。最終的に、自らは不均化反応によって水素原子のとれたデヒドロアスコルビン酸 (4、右図) に変化する。この際、さらに 1 個の電子を失うので、アスコルビン酸の酸化は two-electron reaction と表現される (2)。

以上のことから、アスコルビン酸は食品添加物として広く用いられている。

> 食品中のアスコルビン酸の酸化が、過酸化水素を生み出すことを示した論文 (2R)。
  • 酸素および銅の存在下で、過酸化水素 hydrogen peroxide の生成を確認。
  • 過酸化水素がさらにアスコルビン酸ラジカルを生み出すという連鎖反応も存在する。
  • この反応はアスコルビン酸濃度が 0.1 - 0.2 mM で活発で、低および高濃度では H2O2 量が低下。

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References

  1. 岩波 理化学辞典 第5版.

このサイトでは、私が持っている 1987 年の第 4 版を引用していることが多い。1998 年に第 5 版が発行されている。

ネット情報の問題点の一つは、信頼できる定義になかなか出会えないことである。Wikipedia には定義らしいことが書いてあり、普段の調べ物には十分なことも多いが、正式な資料を作るときにはその引用は避けたいものである。

そんなときに役に立つのが理化学辞典や生化学辞典。中古でも古い版でもよいので、とにかく 1 冊持っておくと仕事がはかどる。



  1. Boatright 2016a. Oxygen dependency of one-electron reactions generating ascorbate radicals and hydrogen peroxide from ascorbic acid. Food Chem 196, 1361-1367.
  2. 中村 2013a (Review). 活性酸素と抗酸化物質の化学. 日医大医会誌 9, 164-169.
  3. By Me, Stanislaw Gackowski (Soeb) - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8808961

参考図書

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