核酸研究の歴史: DNA が遺伝物質とわかるまで

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2018/09/25 更新


  1. グリフィスの実験
  2. Avery–MacLeod–McCarty の実験
  3. ハーシーとチェイスの実験

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グリフィスの実験 (Griffith experiment)

グリフィスの実験の概要は以下の通り (図; ref 1)。図には 4 つのパターンが書かれているので、左からパターン 1, 2, 3, 4 としよう。

  1. R 型菌は病原性がないので、マウス に注射しても死なない。
  2. S 型菌は病原性で、注射すると死ぬ。
  3. しかし、加熱によって S 型菌をあらかじめ殺しておくと、注射してもマウスは死ななくなる。
  4. ところが、R 型菌と加熱後の S 型菌を混ぜると、再びマウスが死ぬようになる。

生きているマウス (パターン 1 と 3) の血からはバクテリアは単離されなかった。しかし、死んだマウスの血 (パターン 2 と 4) からは、いずれも S 型菌が回収された。



この実験の結果は、R 型菌と加熱殺菌した S 型菌を混ぜることによって、R 型菌が形質転換 transform された と解釈された。

つまり、死亡した S 型菌の中に R 型菌の性質を変えることができる物質が含まれているということ。もっと言えば、バクテリアの形質は 物質によって規定され、それは元のバクテリアが死んだ後も残存している ということである。

たとえば、生物が死ぬと魂が抜けて、残るのはなんの機能もない体だけだという考えでは、この結果は説明できない。


  • なお、R 型菌はマウスの免疫系によって殺されるので、いずれにせよ血から単離することはできない。実際に S 型と R 型の違いは多糖類の皮膜であり、S 型は皮膜をもっているので免疫系に破壊されず、病原性を示す。
  • 図では簡略化して書いてあるが、R 型は IIR、S 型は IIIS、パターン 4 で死んだマウスの血液から単離された R 型は IIIS である。この事実から、R 型が単に突然変異を起こして病原性になった可能性が否定される。なぜならば、この場合 IIR からは IIS ができるので、IIS が単離されなければならないためである。

この実験で遺伝は物質ベースであることが示された。次の疑問は「その遺伝物質とは何か?」である。遺伝物質が DNA であることを示したのが、次の Avery–MacLeod–McCarty の実験である。


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Avery–MacLeod–McCarty の実験

実験デザインは、Griffith の実験のパターン 4 を発展させたものである。

加熱殺菌した S 型菌をホモジナイズし、DNA、RNA、またはタンパク質のいずれかを 酵素 で分解する。DNase 処理したもののみが病原性を示さなかったため、DNA が遺伝物質の本体であることが示された。

  1. 加熱殺菌した S 型菌を プロテアーゼ 処理し、マウスに注射。マウスは死亡。
  2. 加熱殺菌した S 型菌を RNase 処理し、マウスに注射。マウスは死亡。
  3. 加熱殺菌した S 型菌を DNase 処理し、マウスに注射。マウスは生存。

ハーシーとチェイスの実験 (Hershey–Chase experiment)

ハーシーとチェイスの実験は、DNA が遺伝物質であることを放射性トレーサーを使って Avery–MacLeod–McCarty の実験とは別の角度から証明したものである。

図 (ref 2) の左側をパターン 1、右側をパターン 2 とする。

  1. バクテリオファージの タンパク質35S で標識する。大腸菌に感染させたあとにチェックすると、35S は大腸菌の中に入っていなかった。
  2. バクテリオファージの DNA32P で標識する。大腸菌に感染させたあとにチェックすると、32P は大腸菌の中に入っていた。

Genetics: A Conceptual Approach (Amazon link) では、このあとバクテリオファージが大腸菌を破壊して出てきたときに、32P がバクテリオファージに含まれていたことまでが述べられている。これは重要な点だと思う。


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References

  1. By Madprime, Purodha, ふわふわ - modification of Griffith_experiment.svg, CC 表示-継承 4.0, Link
  2. By Thomasione - Modified from German Wikipedia [1], GFDL, Link