ビオチン Biotin: カルボキシル基転移酵素の補酵素

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このページの最終更新日: 2024/07/13

  1. 概要: ビオチンとは
  2. ビオチンの生合成
  3. ビオチンとアビジンの結合

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概要: ビオチンとは

ビオチン biotin は図のような構造 (public domain) をもつ水溶性ビタミンである。ビタミン B7、ビタミン H、補酵素 R などと呼ばれることもあるが、「ビオチン」という名称が最も一般的である。

ビオチンの構造

ビオチンは、カルボキシル基転移酵素 の補酵素として働く。代表的なカルボキシル基転移酵素は以下の通り。

  • ピルビン酸カルボキシラーゼ
  • アセチル CoA カルボキシラーゼ: 脂肪酸合成の律速酵素
  • プロピオニル CoA カルボキシラーゼ: 奇数鎖脂肪酸およびいくつかのアミノ酸から生じるプロピオニル CoA を TCA 回路または 糖新生 に乗せる反応の一部を触媒する。図は public domain。
ビオチンが関与する反応 プロピオニルCoAの代謝

ビオチンの生合成

> シアノバクテリアから珍しいビオチン合成酵素を同定した論文 (1)。

  • これまで、8-アミノ-7-オキソノナノエート(8-amino-7-oxononanoate, AON)から7,8-ジアミノノナノエート(7,8-diaminononanoate, DAN) への変換を担うアミノ基転移酵素 BioA が関わるビオチン生合成経路のみが知られていた。
  • シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803 は BioA 遺伝子が欠損しており、かわりに BioU が機能する。
  • BioU は自身のリジン残基を介した AON との共有結合 (還元)、CO2付加、DAN カルバミン酸の生成という3つの反応を行う酵素。
  • さらに、この過程でリジンのアミノ基が失われる。つまり一回の反応しか触媒できない自殺酵素である。
  • なお、チアミンの生合成にも自殺酵素が関与する。反応後、自殺酵素が再生されるのかどうかは不明。

応用: ビオチンとアビジンの結合

ビオチンは、糖タンパク質である アビジン avidin と強く結合する性質がある。このビオチン - アビジンの結合は、発現タンパク質の精製など、生化学・分子生物学実験に応用されている。


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References

  1. Sasaki et al., 2020a. A suicide enzyme catalyzes multiple reactions for biotin biosynthesis in cyanobacteria. Nat Chem Biol 16, 415-422.

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