寄稿記事: イヌをアメリカから日本へ連れて行く (2024 年版)

UBC/organism/Mammalia/canis_familiaris_transport_US_Japan

このページの最終更新日: 2024/09/15

このページは、愛犬家 様からの寄稿記事に、Ultrabem 編集委員会が許可を得てマイナーな改変 (関連ページへのリンク、参考文献など) を加えたものです。記事のご提供ありがとうございました。


イヌをアメリカから日本へ連れて行く手続きは複雑で、8 - 10ヶ月を見込んでおく必要がある。ただし、日本に連れて行って隔離するというオプションもある。

まず、基本的な手続きの流れは以下の通り (2)。

  1. マイクロチップの埋め込み
  2. 狂犬病予防注射 1 回目、2 回目
  3. 狂犬病抗体検査
  4. 輸出前待機
  5. 事前届出
  6. 輸出前検査
  7. 輸出国の証明書の取得
  8. 日本到着後の輸入検査
イヌをアメリカから日本へ輸送する際の手続き

このほか、重要なポイントとして 飛行機でどう輸送するか という点も考えなければならない。

  1. 飛行機でどう輸送するか

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マイクロチップの埋め込み

USDA certified のマイクロチップでなければならない。うちの犬はシェルターから引き取った犬で、シェルターですでにマイクロチップを埋め込まれていた。

マイクロチップは Homeagain というメーカーで、読み取り機はこんな感じのもの。犬の背中側、両方の前足の間ぐらいの位置にこの機械を当てると、985512792175178 のような 15 桁の固有の数値を読み取ることができる。

ペットマイクロチップスキャナー

事前届出 の書類には、マイクロチップの種類を記入しなければならない。

日本の検疫機関にあるスキャナーで番号を読み取れる必要があるので、犬のマイクロチップの種類はきちんと把握しておいた方がいい。ISO certified という規格であれば安心。

重要なポイントなので、必ず自分の犬について確認してほしいが、15 桁の番号だったら ISO certified である可能性が高いようだ (6)。134.2 kHz で読み取ることができ、15 桁の番号で、かつ最初の 3 桁がメーカーならば ISO compliant としているページもあった。また、日本の検疫所には多くのスキャナーが揃えてあるので、読み取れないということはほとんどないらしい。

上に書いたように番号が 15 桁の場合、最初の 3 桁がメーカーを意味する。985 で始まっていれば HomeAgain というメーカーのものである。

狂犬病予防注射 1 回目、2 回目

フローチャートにあるように、2 回の狂犬病注射が必要であり、2 回目のあとに採血、そこから 180 日間は待機が必要である。2 回目の注射と採血を同時に行うとして、ここが一番時間のかかるプロセスである。

犬は、普通に獣医さんに定期的に通っているならば、狂犬病ワクチンは切れることなく接種しているはずである。まずはその書類をチェックすること。その記録が見つかり、以下の条件を満たすならば、輸送のための狂犬病注射は 1 回で良いはずである。

  • 直近の狂犬病注射が、91 日齢以降であること。年齢不詳の犬もいると思うが、91 日は本当に子犬である。
  • 直近の狂犬病注射から 30 日以上経っていて、かつ有効免疫期間内であること。

USDA に承認されたワクチンの有効免疫期間は、最低でも 3 年間 である (5)。市町村によっては毎年ワクチンを必要とするところもあると書かれているが、この輸送は USDA のルールに従うはずなので、3 年と考えて良い。もちろん、きちんと獣医さんと確認すること。

狂犬病抗体検査

獣医で狂犬病ワクチン (2 回目) を打った後、そのまま採血をお願いするのが効率的。血液は、狂犬病抗体検査のため、獣医さんが検査機関に送ってくれた。

検査機関は、アメリカでは事実上一ヶ所、カンザス州立大学の Rabies Laboratory というところ。メールで獣医さんに結果が送られてきて、それを転送してもらう。約 1 ヶ月ほどかかったが、要は 180 日以内にあればよいので、ここはそれほど急がなくてもいい。

ただし、抗体価が 0.5 IU/mL 以上でなければならず、この値に達していないと追加免疫が必要になる。これを考えると、結果を早めに見るに越したことはない。

輸出前待機

ここは、とくに書くことはない。180 日はとても長い。

事前届出

到着予定日の 40 日前までに、到着予定の空海港を管轄する動物検疫所に事前届出をする。基本的には、チケットを予約して到着予定日をまず確定させる必要がある。ページ下の 飛行機でどう輸送するか を参照のこと。

ただし、届出自体は到着予定日「未定」でも提出することができる。この場合は、便名が決まり次第変更届を出すことになるので、二度手間にはなるが、時間がない場合は有効である。

飛行機のチケットを予約したら、このページ に事前届出の書式と説明がある。

動物検疫所は、基本的に電話でなくメールで連絡をとり、返信には 1 週間ぐらいかかる。が、輸出の時期が迫ってくるとレスポンスは早くなってくる。こちらにミスがあっても、「このミスがあるから輸入できません」という態度ではなく、「輸入するためにこのミスを修正してください」というポジティブな指摘をくれた。「輸入するまでに必要なことを、正しいタイミングでやる」という姿勢が徹底あるので、輸入に関する満足度は高かった。

輸出前検査

獣医師による狂犬病とレプトスピラ病のチェック、さらに政府機関の endorsement が必要。

レプトスピラ症は耳慣れない病気であるが、国立感染症研究所のページ によると、以下のような病気である。

レプトスピラは, ネズミなどの野生哺乳動物の腎臓に保菌され, 尿とともに排出される。ヒトやイヌなどは, レプトスピラを含む尿との接触, あるいは尿に汚染された水や土壌との接触により偶発的に感染し発症する。イヌの感染初期症状としては, 発熱, 倦怠感, 食欲不振, 嘔吐, 脱水, 出血がみられ, その後, 腎不全, 肝不全に発展し, 治療が遅れれば死に至る疾患である。


かなり重篤な症状に思える。英語での病名は Leptospirosis、原因菌は genus Leptospira の 10 菌種ほど。アメリカでは、ワクチンがあるほか、家畜、池などの水を避けることで感染の確率を減らすことができる。

輸出国の証明書の取得


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飛行機でどう輸送するか

これも 2024 年はじめの情報。

まず、日本に運ぶなら JAL または ANA がよい。アメリカの航空会社は非常に厳しい条件がある。夏の間は暑くなるので輸送は一切できないとか、航空会社と直接交渉はできずにエージェントを間に入れないといけないとか。当然、エージェントの費用はバカ高く、$7,000 - $12,000 ぐらいの範囲。

ANA を使う方法について。ホームページに詳しい情報がある。まず、方法は 2 つ。

  1. 自分も同じ飛行機に乗って、犬は貨物として運ぶ。日本の空港でケージを受け取る。
  2. 自分はその飛行機に乗らない、つまり犬だけ送る。この場合、エージェントを入れなければならない。

ちなみに、アメリカの航空会社では 1 の方法を許していないところが多く、したがって必ずエージェントを入れなければならないことになる。

アメリカンは 1 の方法が可能だが、ペット愛護の観点から 12 時間以上のフライトではそもそも犬を送ることができない。ほとんどのアメリカ発・日本着のフライトは 12 時間以上。西海岸からは 11 時間 50 分とかだが、これもダメと言われた。シアトルなら 10 時間 30 分なので、交渉してみる価値はあるかもしれない。

ANA に話を戻そう。エージェントは、たとえば日本の業者では、エコノムーブジャパン。ただし、アメリカ発のフライトならアメリカのエージェントが必要である。いずれにせよ費用が高いので、1 の方法が現実的だろう。

ここからは、ANA で自分も同じ飛行機に乗って犬をアメリカから日本へ輸送する場合の注意事項である。2024 年の情報なので、最新情報は ANA と確認すること (ANA ページ)。

時期と犬種

「短頭犬種」と呼ばれる種類は、5/1 - 10/31 の間は輸送することができない。以下の犬種が短頭犬種になる。

ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、シーズー、ボストン・テリア、ブル・テリア、キングチャールズ・スパニエル、チベタン・スパニエル、ブリュッセル・グリフォン、チャウチャウ、パグ、チン、ペキニーズ

予約、料金

ANA 運行便でなければならない。ANA と他の航空会社の共同運行便では、「他の航空会社」のルールに従うことになる。

予約は電話のみ、料金は $400/ケージ。

ケージの要件

ケージには厳しい条件がある。犬は 1 匹/ケージで、ケージは IATA 規定に適合したものでなければならない。Amazon で IATA dog crate for airline travel で検索、さらに International Travel Approved というフィルターをかけることができる。こんな感じのケージである。

IATA認証の犬用ケージ 国際輸送用 アマゾン

ANA の条件は以下のようなもので、IATA 認証のケージに、鍵、吸水マットなどを取り付けることになるだろう。ケージ購入後にチェックが必要な項目に下線をつけておいた。

  • 頑丈な屋根がついている
  • 丈夫なケージである(硬質プラスチック、金属製、木製など)
  • 換気用の窓が備わっているなど通気性がある
  • 外側に機能的な取手付がついている
  • 逃亡や接触を防ぐために鍵がついている
  • 車輪は取り外しが可能、または固定が可能
  • ペットが立つ、座る、寝る、回転できる大きさである
  • 吸水剤の下敷きなどがあって、液体や汚物などが外に漏れないよう耐水装置がある
  • 保冷マット、飲み水やエサ用の適当な容器や皿が、ペットの状態や輸送時間に応じて準備されている(乗継地でのエサやりは不可)
  • 5/1 - 10/31 の間は、通気性を確保するためにカバーなどは不可。
  • ペットケージの 3 辺(縦・横・高さ)の和が 292 cm (115 インチ) 、もしくはペットとケージの総重量が 45 kg (99 ポンド) を超える場合は不可。

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References

  1. USDA Pet travel from the U.S. to Japan. Link: Last access 2024/01/05.
  2. 指定地域以外から日本に犬・猫を輸入するための手引書 (最終更新 2021年11月). Link: Last access 2024/02/24.
  3. 犬のアメリカから日本への帰国準備、落とし穴. Link: Last access 2024/02/24.
  4. By Tony Webster from San Francisco, California - Pet Microchip Injection and Scanner, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44777764
  5. Dodds et al. Duration of immunity after rabies vaccination in dogs: The Rabies Challenge Fund research study. Can J Vet Res 84,153–158.
  6. アメリカから犬を連れて日本に帰国する時のポイントと注意点. Link: Last access 2024/05/24.

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