エスカレーターの歩行と片側空け: 歩くのは本当に危険なのか
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このページの最終更新日: 2024/12/15広告
概要: エスカレーターの片側空けについて
「エスカレーターでは歩かず、二列に並んで乗りましょう」という呼びかけがされるようになって久しい。いつから始まったのかは定かではないが、JR 東日本が 2018 年 12 月 17 日から 2019 年 2 月 1 日まで、東京駅で呼びかけを行ったらしい (1)。
JR などでは引き続き二列に並んで乗ることを推奨しており、私たしは少なくとも数年間、ずっとこれを意識させられているはずだが、依然として片側空けの習慣は残っている。このページでは、エスカレーターの歩行と片側空けについての論点を整理してみたい。
片側空けはいつから始まったのか
大阪では、阪急電鉄が 1967 年ごろから 1998 年まで、急いで歩く人のために「右側にお立ち願います」というアナウンスを行っていたらしい。地域によって右側空けと左側空けの違いがあるが、大阪が左空けになったのはこれが理由。東京では、1989 年ごろに自然発生したようだ。
二列で乗った方が早い (輸送効率が高い)
二列で乗った方が良いとする根拠の一つがこれ。東洋経済の記事 (1) でも反論されているが、これはあまり説得力がない。
駅では急いでいる人もいれば、そうでない人もいる。全体の輸送効率が上がっても、急いでいる人には何のメリットもない。そこから、エスカレーターを歩いて上がりたいという需要が生じるわけだ。
一方で、急いでいない人には、片側空けで自分が多少並ぶことになっても、急いでいる人のために道を譲ろうというモチベーションがあるわけである。これは、「みんなが空けている側に立ってると文句を言われる」という消極的な理由もあるかもしれないが、多くの人はもっと積極的に道を譲っているように思われる。だとしたら、これはかなり利他的な選択であり、むしろ褒められるべきかもしれない。
「急いでいる人は階段を使ってください」もあまり説得力がない。階段よりも、エスカレーター + 歩行の方が早いのだから。
つまり、「急いでいる乗客」「急いでいない乗客」のニーズが片側空けで一致してしまっている状態で、JR など運営側だけが「片側空けはやめましょう」と言っているのが現在の状態なのである。
乗客にこれを「我慢」してもらうためには、それなりの理由が必要となるが、「全体の輸送効率」は受け入れられていないということだろう。
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エスカレーターの片側空けは危険である
エスカレーターの片側空けは危険であることから、二列で乗ることを推奨するケースもある。これが本当に危険だったら、乗客は片側空けをやめるだろう。赤信号で交差点を渡るのが一般的でないことと同じである。
では、片側空けが危険というデータはあるのか?
また東洋経済の記事 (1) からの情報だが、エスカレーターの事故についての最新データは2015 年 10 月に発表された 2013 - 2014 の 2 年間のデータらしい。ただしこの記事も 2019 年なので、新しい情報が出ているかもしれない。この 2 年間の災害は 1475 件で、転落事故が 5 件、挟まれ事故が 312 件、転倒は 1023 件。ただし、歩行中であったか否かは、データには含まれていない。
少なくとも健康な成人ならば、エスカレーターを歩いて危険を感じることはないだろう。これも片側空けがなくならない理由の一つと思われる。
References
- 東洋経済 エスカレーター「片側空け」は本当に危険なのか.Link: Last access 2024/04/17.
- NHK エスカレーター 乗り方の“暗黙のルール” 調べて分かったこと.Link: Last access 2024/04/17.
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