高度不飽和脂肪酸 PUFA の酸化
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このページの最終更新日: 2024/02/14広告
概要: PUFA の酸化
高度不飽和脂肪酸 (polyunsaturated fatty acid, PUFA) は、魚介類の主要な栄養素の一つであるが、酸化されやすいという特徴がある。PUFA の酸化物は魚介類に特徴的な匂いの原因にもなる。
PUFA 酸化のメカニズムと bis-allylic carbon
PUFA が酸化されやすいのは、
例として、DHA の構造 (Public domain) を見てみよう。炭化水素鎖の部分に、2 重結合をもつ炭素原子が並んでいる。上の方に山形に飛び出している炭素原子が、2 重結合をもつ炭素原子に挟まれていることがわかるだろう。
このような炭素原子を
EPA は 4 個、DHA は 5 個の bisallylic carbon をもつ。MUFA, SFA には 1 個もない。したがって、一般に不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて酸化されやすいが、高度不飽和脂肪酸はとくに酸化されやすいと言える。
PUFA の酸化分解物
PUFA には複数の bisallylic carbon があるため、どの水素原子が最初に引き抜かれるかによって、酸化の反応経路が異なる。そのため、多様な酸化分解物が知られており、未知の分子もまだ存在すると考えられている。
代表的な PUFA 酸化分解物を表にしておく。
マロンジアルデヒド |
|
4-ヒドロキシノネナール |
PUFA 過酸化の測定法
間接定量法
脂質過酸化物の定量法は、数多く知られている (3,4)。以下のような方法が代表的である。定量には、ガスクロマトグラフィー、質量分析、NMR などが使われる。
- 過酸化物価 peroxide value (PV) の測定: 滴定が使われることが多い
- カルボニル価 carbonyl value (CV)
- アニシジン価 anisidine value (AnV) の測定: 比色法でカルボニル化合物を測定
しかし、定量法の多くは PUFA の酸化分解物を定量するもので、一般に次のような問題点がある。マロンジアルデヒドや 4-HNE などがよく定量に使われる。
> これは副産物を測る間接定量法であり、以下のような問題点が指摘されている (2)。
- これらの副産物は、脂質過酸化で必ず生成するわけではない。
- 金属イオンの存在量に大きく左右される。
- 副産物の生成は特異的。たとえば 4-HNE は ω-6 PUFA からのみ生成する。
- 細胞内に多量にある コレステロール やオレイン酸からは MDA, 4-HNE は生じない。
- MDA は、ng/ml のオーダーで血小板でも作られる。
- 以上のことから、
過酸化量の過大/過小評価が起こりやすい 。 - ヒトの過酸化脂質量は、0.3 - 30 µM と大きくばらついている。
日本の基準では、CV 50 µmol/g という値が、食品の基準値として定められているようである (1)。
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References
Liu et al., 2020a. Model for prediction of the carbonyl value of frying oil from the initial composition. LWT-Food Science and Technology. 2020, 117, 108660.- フナコシ Lipid Hydroperoxide Assay kit manual. Pdf file.
Albert et al. 2013a (Review). Oxidation of marine omega-3 supplements and human health. BioMed Res Int Article ID 464921.- 油脂および油脂食品の劣化度測定法. Link.
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