0. 概要
1. ALS による反応
2. AHAIR による反応
3. DHAD による反応
4. BCAT による反応

概要

バリン Val は図のような炭化水素の側鎖をもつ 3 種の 分岐鎖アミノ酸 (BCAA; branched-chain amino acid) の一つである。

なお、他の BCAA は ロイシン および イソロイシン であり、生合成経路も互いに深く関わっている。

Val の生合成は、途中までは Leu の生合成経路と同一であり、Ile の合成とは競合する関係にある (1)。

合成の出発点となる hydroxyethyl-TPP もピルビン酸から合成されるため、2 分子のピルビン酸から生合成される と書かれている文献もある (2)。このあたりの反応の詳細は、第一段階の AHAS による反応の項で述べる。

以下の 4 つの酵素に触媒される段階的反応である。

1. アセト乳酸シンターゼ, ALS
2. アセトヒドロキシ酸イソメロリダクターゼ, AHAIR (別名 KARI)
3. ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ, DHAD
4. バリンアミノ基転移酵素, TA

この図には示していないが、Ile が Thr を使わずに Pyruvate と アセチル CoA から合成される経路をもつバクテリアもいる。

1. ALS による反応

酵素 アセト乳酸シンターゼ (acetolactate synthase, ALS; also called acetohydroxy acid synthase, AHAS; EC 2.2.1.6) は、Val 生合成において最初の段階を触媒する酵素である。EC 4.1.3.18 として 1972 年に登録されたが、2003 年から EC 2.2.1.6 に変更されている。

2. AHAIR による反応

酵素 アセトヒドロキシ酸イソメロリダクターゼ (acetohydroxyacid isomeroreductase AHAIR; EC 1.1.1.86) は、2-aceto-2-hydroxyacids を、2-keto-3-hydroxyacid に変換し、さらに NADPH 依存的に 2,3-dihydroxyacids に還元する酵素である。

Ketolacid reductoisomerase (KARI) とも呼ばれる。詳細は AHAIR のページ を参照のこと。

3. DHAD による反応

酵素 ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ (dihydroxy-acid dehydratase, DHAD; EC 4.2.1.9) は、Val, Leu, Ile のほか panthothenate および coenzyme A (CoA) の合成にも関わる酵素である。

4. BCAT による反応

酵素 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ (branched-chain amino acid transaminase; EC 2.6.1.42) は L-Leu および 2-oxoglutamate から 4-methyl-2-oxopentanoate および L-glutamate を合成する反応が KEGG に記載されているが、この逆反応で 2-oxoisovalerate から L-Val を合成できるようである。

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References

1. Berg et al. 2006a. (Book). Biochemistry, 6th edition.

2. Oldiges et al. 2014a (Review). Application of metabolic engineering for the biotechnological production of L-valine. Appl Microbiol Biotechnol, 98, 5859-5870.
3. Binder 2010 (Review). Branched-chain amino acid metabolism in Arabidopsis thaliana. The Arabidopsis Book.