重水素: NMR の溶媒に添加したりする水素の同位体
- 概要: 重水素とは
- NMR 溶媒と重水素
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概要: 重水素とは
水素原子は通常 1 個のプロトンをもつが、これに 1 つ中性子が加わり原子量 atomic weight が 2 になった同位体を重水素 deuterium といい、2H または D と表す。元素記号をもつ同位体は、この重水素とトリチウム 3H (T) のみである (1)。
重水素は、ハロルド・ユーリー Harold Urey によって 1932 年に発見された (1)。わずか 2 年後の1934 年に、ユーリーはこの業績によりノーベル化学賞を受賞している。
2H2O, または D2O のことを
一般に、同位体の化学的性質は同じであるが、原子量の小さい水素の場合は中性子の存在が大きく影響し、
たとえば、水を電気分解すると軽水素が先に反応し、重水素を選択的に濃縮することができる (1)。重水は現在この方法で生産されている。
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NMR 溶媒と重水素
重水素を含む薬品は、NMR 試料の溶媒としてよく用いられる。以下の表に、一般的な重水素化溶媒とその特徴をまとめた。
重水 D2O |
水溶性物質に用いられる。D2O のみでも良いが、H2O との混合物にすると exchangable proton も観察できる。 安価で単一の強い lock signal が見られること、ラーモア周波数が H と大きく異なるため spectra がきれいなことなどが利点。欠点としては |
クロロホルム CDCl3 |
安価で多くの脂溶性物質を溶かす便利な溶媒。 毒性、発ガン性がある。また、光によって酸化し 2 CDCl3 + O2 → 2 COCl2 + 2 DCl のように塩酸を生じる。これが pH に影響を与える可能性がある。 |
DMSO |
図のような構造 (2) をもち、水と任意の割合で混ざる。 蒸発しにくいこと、他の溶媒と比べて粘性が高いため、molecule が tangle しやすく、シグナルが乱れる場合があることが欠点。また、融点が高いため、低温での NMR には注意が必要である。さらに吸湿性もある。 |
アセトン C3D6O |
極性が中程度の物質に適した溶媒。可燃性が高い。 |
アセトニトリル CD3CN |
HPLC の溶媒としてよく使われるため、そのまま NMR にかけることができる。他の有機溶媒よりも高価である。 |
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