電位依存性ナトリウムチャネル:
構造、機能、ブロッカーなど

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: 電位依存性ナトリウムチャネルとは
  2. 分子進化
  3. アイソフォームと組織分布
  4. 電位依存性カリウムチャネルについて

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概要: 電位依存性ナトリウムチャネルとは

電位依存性ナトリウムチャネル (voltage-gated sodium channel; VGSC) は,膜電位に依存して開口するナトリウムイオン Na+ のチャネルである。 Na+ は細胞内よりも細胞外の方が著しく濃度が高いので,VGSC の開口は大きな内向き電流を生じ,細胞を脱分極 depolarization させる。

VGSC は、一般に以下のような構造 (4) をもっている。



糖鎖が付加された 1 個の α-サブユニット (260 kDa) と,1 個または 2 個の β-サブユニット (33 - 36 kDa) から成る (1) 。図は α-サブユニットで,I - IV の 4 つの繰り返し構造をもつ。I - IV のそれぞれが 6 つの膜貫通ドメインをもっている。

> α-サブユニットは,それぞれ 6 個の膜貫通ドメイン (丸数字) をもつ 4 つのドメイン (I - IV) から成る (1) 。

  • ドメイン III の 5 と 6 間にある疎水性のループが pore を形成する。図では S で示されている。
  • 緑で示された 4 が電位センサー。荷電性アミノ酸が多数含まれ,脱分極による構造変化を起こす。
  • III, IV の間のループは細胞内に描かれているが疎水性で,inactivation 時に pore を塞ぐ。

> ループ部分 (S) は,イオンの選択性を決定する領域でもある (1) 。

: よく保存された Lys, Ala を Glu に置換すると,カルシウムを透過させるようになる。

> テトロドトキシン抵抗性は,Cys374 (cardiac channel), Ser356 (sensory neuron) に依存する (1) 。

多くの薬と,ヤドクガエル由来の毒 Batrachotoxin は,ドメイン IV の6に結合する (1) 。


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分子進化

> 電位依存性カルシウムおよびカリウムチャネルと相同で,大きいスーパーファミリーを形成する (1) 。

 
> ヒトでは,少なくとも10個のαサブユニット遺伝子が知られている (1) 。Splicing variant もある。
: ヒトのαサブユニット遺伝子は,ゲノム上で4つのクラスターを形成する。
: C. elegans にはVGSCがなく,神経伝達はゆっくりとしたシグナルによると考えられている。
 
> Drosophila にはβサブユニットがない (1) 。

アイソフォームと組織分布

以下の表 (文献1-3) のように,VGSC αサブユニットには多くのアイソフォームがあり,組織分布も一部重複している。それぞれの役割分担についても,まだ研究の途上である。

Channel Gene name Key tissue distribution TTX IC50 (nM)
Brain type I (Nav1.1) SCN1A Brain, spinal cord. 細胞体と樹状突起に多い。Dorsal root ganglia (DRG)  6
Brain type II (Nav1.2) SCN2A

Brain, spinal cord. とくに投射線維 projection fiber に局在し,活動電位の発生に重要と考えられている。

 13

Brain type III

(Nav1.3)

SCN3A Brain (embryonic in rat), DRG. ヒトでは成体でも多く発現しているが,細胞体と樹状突起に多い。  4

Brain type VI

(Nav1.6)

SCN8A Brain, spinal cord, glia, DRG. 細胞体と樹状突起に多い。  3

Skeletal muscle

(Nav1.4)

SCN4A Skeletal muscle  5
Cardiac (Nav1.5) SCN5A Cardiac musle  2000
PN1 (Nav1.7) SCN9A DRG, neuroendocrine cells  4
SNS (Nav1.8) SCN10A DRG only  31000
SNS2 (Nav1.9) SCN11A DRG only  1500
Atypical heart/glial SCN6A, 7A Heart, uterus, lung, dorsal root ganglion, glia  ?

> TTX-sensitive, TTX-resistant という分類では,Nav1.8, 1.9 が resistant, 1.5 は moderate (3) 。

> 感覚神経 sensory neuron では,少なくとも6種のVDSCが発現している (3) 。

  • Nav1.1, Nav1.3, Nav1.6-1.9 である。
  • Nav1.1, Nav1.6 は脳にも高いレベルで発現している。その他はほぼ末梢に限られる。

> Open, resting, inactivated の3つの状態がある (1) 。

  • 脱分極が 1 ms 以上続くと inactivated となり,チャネルが閉じる。
  • この状態は,再び膜が分極するまで維持される。分極すると resting state となる。
  • 通常,このサイクルは ms オーダーである。

> PKA, PKC にリン酸化され,cellular excitability が変化する (1) 。

電位依存性カリウムチャネルについて

内容が十分になるまで、独自のページを作らずにここに記載しておく。

VGSC が、活動電位の発生に関係するのに対し、電位依存性カリウムチャネル (voltage-gated potassium channel; VGPC) は筋肉および神経細胞の exitability に重要である。


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References

  1. Clare et al. 2000a (Review). Voltage-gated sodium channel as therapeutic targets. Drug Discov Today 5, 506-520.
  2. ナトリウムチャネル - 脳科学辞典 http://bsd.neuroinf.jp/wiki/ナトリウムチャネル.
  3. Shah et al. 2010a.Voltage gated sodium channel blockers: potential treatment for neuropathic pain. CRIPS 11, 11-16.
  4. By Cthuljew - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10251445.

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