こうじ酵素は効くのか? - 酵素商品に関する考察
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3-18-2017 updated
- 酵素商品のもやっとする点
- こうじ酵素について
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酵素商品のもやっとする点
昔から「酵素入り商品」に対して専門家として釈然としないところがあったので、一般の方向けにまとめてみました。
まず「酵素 enzyme」という言葉ですが、酵素とは、生体内で起こる化学反応を触媒する物質のことを言います。ところが、生体内では膨大な種類の化学反応が進行しており、それぞれに必要とされる酵素は異なります。つまり
いくつか例をあげてみましょう。「酵素」という大きなグループの中に、「消化酵素」「抗酸化酵素」などの小グループがあり、さらにアミラーゼ、リパーゼなどというグループがあります。
リパーゼにも膵臓リパーゼ、肝性リパーゼなどのメンバーが含まれます。これらが単一の種類の物質 (タンパク質)です。
消化酵素 |
食べたものを分解する酵素です。 例えば、唾液にはデンプンを消化するアミラーゼという酵素が含まれています。理科の実験でやった人もいるかもしれません。 食べた脂肪を分解し、吸収しやすくするのがリパーゼという酵素です。黒烏龍茶で阻害されます。 |
抗酸化酵素 |
私たちは酸素を使ってエネルギーを作っていますが、その副産物として生体を酸化する活性酸素という物質ができてしまいます。これを分解するのが抗酸化酵素です。 スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼなどが有名な抗酸化酵素です。アンチエイジング効果があると言われています。 |
合成酵素 |
合成と分解は表裏一体ですが、合成反応の方に重きを置く場合、合成酵素という言葉が使われます。 たとえば DNA ポリメラーゼ は DNA を合成する酵素です。主に細胞が分裂するときに働きます。 |
このように、酵素には様々な種類があるにも関わらず、十把一絡げにして「酵素入り!」と宣伝されると釈然としない気分になります。
洗剤の効き目を良くしたいときに、リパーゼを添加するのは有効と思われます。油汚れがよく落ちるようになるでしょう。DNA ポリメラーゼを洗剤に添加しても、おそらく効果は望めないでしょう。
「こんどスポーツ観に行こうよ!」と誘われているような気分です。相手によっては、なんのスポーツでもいいから一緒に出かけたい場合もあるでしょうが、「もうちょっと特定してくれると判断しやすいなあ」という状況もあると思います。「酵素」を売りにした商品は、私にとってはそういう存在です。
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こうじ酵素について
こうじ酵素に対して特に恨みがあるわけではありませんが、最近よく聞くようになった言葉で、意味がよくわからなかったので調べてみました。それがこの記事を書く動機にもなったので、ここで取り上げています。
こうじ酵素とは、
- 非加熱で抽出
- ビタミンなどを含む七穀米が原料
- さらに「レジスタントプロテイン??」がプラスされている
の 3 点が売りのようです (1)。
一般に「酵素商品は効かない」と言われるのは、酵素が吸収されるときには分解されてしまうためです。つまり、酵素を食べても体内でそのまま働くことはないというのがその理由です。
これ自体は正しいのですが、逆に言えば酵素は腸までは生きたまま届くわけです。もし、腸で働く酵素を想定している場合には、効く可能性もあるかもしれません。とすると、非加熱で穏和な条件で抽出というのは、一応の説得力があります。
ビタミン、ミネラルなどは酵素よりも安定で、吸収されて働きます。こうじ酵素の効果が本当なら、実際に効いているのは酵素ではなく、これらの低分子なのかもしれません。
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References
- こうじ酵素は効かない? 効果は嘘!?飲む時間や下痢の副作用まで徹底解説. Link.