節足動物門 Arthropoda: 昆虫、甲殻類、クモなど

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このページの最終更新日: 2024/03/13

  1. 概要: 節足動物門とは
  2. 節足動物の体の構造に関する用語
  3. 節足動物門に含まれる分類群
  4. その他未整理
    • モンハナシャコ
    • カニ類の幼生

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概要: 節足動物門とは

節足動物門 Arthropoda とは、節のある足 jointed legs で定義される動物門である (2)。以下のような特徴がある。

  • 完全な消化系と解放血管系をもつ。
  • もっとも多くの種が記載された動物門で、現在 100 万種以上を数える (2)。

体は大きく Cephalon, thorax 胸郭, pygidium に分かれる。図 (3) を参照のこと。腹部 abdomen という用語もある。

節足動物の体の構造に関する用語

気門
Spiracles

気管 trachea とともに昆虫などに存在する呼吸器官。気管が外部へ開いている孔のことを気門という。

外皮系

Integumentary system

マルピーギ管
Malpighian tubule

消化管から伸びる浸透圧調節および排出のための菅。マルピーギは人名なので、通常は Malpighian と大文字で示す。

マルピーギ管

図 (Public domain) のように、midgut と hindgut の境界付近で消化管に繋がっており、水や代謝産物を排出する機能がある。血リンパに浸かっており、腎臓と同様に原尿を作る。

Tonofibrillae

筋肉の末端とクチクラ層を繋ぐ細い結合組織。筋肉とクチクラ層の結合形式には apodeme というものもあり、これは外骨格が内側に伸びているものをいう。

腹膜
Peritoneal membrane

腹部の臓器を覆う膜。節足動物だけの組織ではなく、人間などにもある。

らせん糸
Taenidium, taenidia

昆虫の呼吸器系の組織の一つ。気管の内部にあるクチクラが肥厚した部分。

眼柄
がんぺい
Eyestalk

目が頭部と離れている場合、それらを繋ぐ組織を眼柄という (画像は Public domain)。甲殻類、昆虫類、腹足類のほか、シュモクザメにも存在する。

甲殻類の眼柄は、サイナス腺と X 器官をもつ内分泌器官である。

眼柄

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節足動物門に含まれる分類群

節足動物には、以下のような分類群が含まれる。亜門 subphylum、綱 class などの分類レベルは文献によって異なるが、ここでは NCBI Taxonomy のもの (2023 年 6 月) を採用している。

節足動物は、以下の 4 つの亜門に分けられている。

鋏角亜門
Chelicerata

口の直前にある 1 対の付属肢、鋏角 chelicera をもつ分類群。代表的な綱は以下の通り。

  • クモ綱 Arachnida: クモ、ダニ、サソリなど
  • 節口綱 Merostomata: カブトガニ、ウミサソリなど
  • ウミグモ綱 Pycnogonida

多足亜門
Myriapoda

細長い体と多くの足をもつ。代表的な綱は以下の通り。

  • ムカデ綱 Chilopoda
  • ヤスデ Diplopoda

ヤスデとムカデは、生殖口の位置、発生様式、体節あたりの歩脚の数、毒のある顎の有無などが異なっている。

甲殻亜門
Crustacea

エビ、カニ、オキアミ、ミジンコなどが含まれる分類群。六脚亜門 (昆虫および内顎類を合わせたもの) と合わせて単系統と考えられている。

さらに以下の 11 の群に分けられる: 貝虫類 Ostracoda・ヒゲエビ類 Mystacocarida・鰓尾類 Branchiura・シタムシ類 Pentastomida・カイアシ類 Copepoda・ヒメヤドリエビ類 Tantulocarida・鞘甲類 Thecostraca・軟甲類 Malacostraca・鰓脚類 Branchiopoda・カシラエビ類 Cephalocarida・ムカデエビ類 Remipedia

六脚亜門
Hexapoda

主に昆虫類。

その他未整理

面白い種など、節足動物に関するランダムなメモ。

モンハナシャコ

モンハナシャコ peacock mantis shrimp Odontodactylus scyllarus は、海洋性動物で最速のパンチ速度を誇る動物。通常の水槽では壊してしまうため飼育できず、パンチ時には腕の周りの水が沸騰してキャビテーションを起こす。

モンハナシャコ

カニ類の幼生

カニ類は、ゾエア幼生 zoea およびメガロパ幼生 megalopa という段階を経て稚ガニとなる。両者のイラスト (4)。左がゾエア幼生、右がメガロパ幼生。チチュウカイミドリガニ Carcinus aestuarii という種の幼生。

チチュウカイミドリガニのゾエア幼生とメガロパ幼生

写真も載せておく。King crab Paralithodes platypus のゾエア幼生。

キングクラブのゾエア幼生
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References

  1. Hine 2015a. A Dictionary of Biology.

信頼できる定義 (情報源) を手元に持っておくことは重要である。自分の勉強にも役に立つが、外部に向けた書類を (レポート、論文、申請書など) 書く場合の効率が一段とアップする。そして、辞書は なるべく権威のあるもの の方が何かと便利である。

日本語では 岩波 生物学辞典 第5版 をお勧めしているが、英語では Oxford の辞書がよい。大学の初級あたりをターゲットにしていて、あまり難しい単語は載っていないが、英語での定義をしっかりと押さえるにはとても便利。価格帯も非常に手頃。



  1. Amazon link: Starr et al. 2016a. Biology Today & Tomorrow.
  2. By Sam Gon III - http://www.trilobites.info, Attribution, Link
  3. Auguste Le Roux - <span class="int-own-work" lang="ja">投稿者自身による作品</span>, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

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