NMR チューブ: 取り扱い、洗浄、再利用など

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. NMR チューブを使う際の一般的注意事項
  2. NMR チューブの洗浄方法
    • 洗浄が不十分な場合

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NMR チューブを使う際の一般的注意事項

NMR チューブを選ぶ際に、重要な項目は以下の通り。

内径 (ID; inner diameter)

5 mm のものが一般的で、少ないサンプル用の 3 mm (Shigemi tube など) と、サンプルが多い場合に使う 10 mm チューブがある。

ただし、10 mm チューブは 10 mm プローブでないと scan できない ので注意。3 mm チューブは、一般的な 5 mm bore の NMR で scan できるが、プローブから遠くなるためにシグナルは弱くなる。

内径の公差

通常、最大値と最小値で表示されているはずである。これが大きいと、定量性に影響する。


NMR チューブを取扱う際には、以下の点に注意する。

  • チューブを汚さない。最悪の場合、プローブを汚してしまって大ごとになる。具体的には、チューブに触った後は必ずキムワイプなどで汚れをとる。
  • サンプルに固形物が入っていると良くないので、フィルターをかける。高価なものでなく、パスツールに脱脂綿を詰めたものとかで大抵は OK。サンプルが吸収されないように、脱脂綿は NMR 溶媒で共洗いしておくこと。
  • NMR チューブはスピンする場合があり、厚くテープを貼るとバランスが崩れる可能性がある。
  • NMR 内部でサンプルが漏れると悲惨なことになる。この可能性がある行為は避ける。
    • 床に落としたら再利用しない。
    • 長期保存のときは凍らせていたが、これもしない方がいいのか?

NMR チューブの洗浄方法: Wilmad manual から

Wilmad が提供する NMR ガラスチューブは、金属製の型 metal mandrel や潤滑油を使って作られているため、化学的に完全にクリーンであるとは保証できない。厳密な測定が必要なときには、以下の Difficult Cleaning Problems の項に沿った洗浄を推奨する。


Simple cleaning

まず重要なことは、NMR チューブの洗浄の際には ブラシを使ってはいけない ということ。

理由は Wilmad のマニュアルにはっきりと書かれている (1)。チューブの内面に細かい傷がつき、そこにサンプルが入り込む可能性があるためである。

基本的には、水または有機溶媒でリンスすれば良いようだ。Final rince は、有機溶媒ならアセトン、水系溶媒なら蒸留水で大体の場合は大丈夫と書かれている (1)。数が多いときには、 NMR チューブ専用の洗浄器がある。


Difficult cleaning

長期間サンプルが中に入れられていたチューブは、より洗浄が困難である。強い無機酸の中に 1 - 3 日程度漬けて、有機物を分解することが推奨されている (1)。

  • 発煙硝酸 fuming nitric acid を推奨。有機物に対する酸化力が強い。
  • クロム酸は、クロムが NMR の結果に影響する可能性があるので良くない。

酸を使った場合には、当然十分な洗浄が必要とされる。


乾燥の方法

乾燥機に入れるときには、変形の恐れがあるために 125 度で 30 - 45 分程度が推奨されている (1)。

このときには トレイの上に寝かせて置く。ビーカーなどに立てかけた状態で乾燥機に入れてはいけない。 チューブが曲がってしまう恐れがあり、最悪の場合には NMR 本体を傷つける可能性もある。

さらに、D2O による共洗いが推奨されている。


適当な洗浄の結果

Difficult cleaning に相当すると思われる、2 年ほど室温でサンプルが入ったまま放置されたチューブを水洗いし、H-NMR spectra を新品のチューブと比較してみた。

異なる血清サンプルをスキャンしているのでわかりにくいが、赤が中古チューブ、青が新品チューブ、緑が差分である。500 µl の溶液中、10% の血清が含まれた試料で、約 2 - 4 ppm の範囲を載せている。厳密なことは言えないが、とんでもなく突出したピークが現れるわけではない と考えてよいのではないか。



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References

  1. Proper Cleaning Procedures for NMR Sample Tubes. Link.