原子力発電のバックエンドコストについて
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このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要: バックエンドコストとは
- 政府によるバックエンドコストの推計
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概要: バックエンドコストとは
核燃料を発電に使用した後に残る使用済燃料には、様々な放射性物質が含まれている。使用済燃料の処理および処分に必要なコストを、バックエンドコスト back-end cost という。
使用済燃料は、大きく分けて以下の 2 通りの方法で処理・処分される。
- 使用済燃料をそのまま処理するワンススルー方式。
- 使用済燃料の中に含まれるプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクル方式。
核燃料サイクル方式における再処理の過程で、高レベル放射性廃液が発生する。これは液体のままだと処理が難しいため、ガラスに混ぜて固体にするが、このガラス固化体の放射線量が毎時 14,000 シーベルトと非常に高い。
また、超ウラン元素廃棄物 (trans uranic waste; TRU) も核燃料サイクル方式における再処理で生じる。「超ウラン」とは、原子番号が 92 番のウランよりもあとにくる元素の意味である。TRU の中には、半減期が 100 万年以上になる放射性物質も含まれている。したがって、核燃料サイクルの方がバックエンドコストが高くなる。
日本では、ガラス固化体および TRU は地中深くに埋設する予定であるが、数万年以上という半減期の長さと、日本列島が現在の形になってからわずか 3 万年しか経っていないことを考えると、これが安全な処理方法とは言い難い。以上のような問題点にも関わらず、日本では全使用済燃料の再処理を国策としてとっている。
このほか、原発の解体およびそれに伴う放射性物質の処理のコストもバックエンドコストに含まれる。
以上のバックエンドコストは、電力を消費したあとに生じるものである。このコストは電力会社の利益に比べて非常に大きいことが明らかになり、2004 年から国がバックエンドコストを負担するという制度が検討されるようになった。
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政府によるバックエンドコストの推計
2004 年ごろ、青森県六ヶ所村にある再処理工場の運転開始を控え、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会で、原子力発電のバックエンドコストが議論された。
合計は 18 兆 8000 億円であった。主なコストを以下に示しておく。
- 再処理 11 兆円
- 返還高レベル放射性廃棄物管理 3000 億円
- 返還 TRU 放射性廃棄物管理 5700 億円
- 高レベル放射性廃棄物処分 2 兆 5500 億円
- 使用済燃料中間貯蔵 1 兆 100 億円
さらに、このバックエンドコストが計算された 2004 年は、青森県六ヶ所村にある再処理工場の運転開始が間近に迫っているころであった (1)。つまりこの推計は、バックエンドコストを電気代に加算し、国民に負担させる具体案としてなされたものであった。
しかし、この 18 兆を超えるバックエンドコストにも漏れがあると考えられている。文献 1 では、次のような問題点が指摘されている。
- この推計には、六ヶ所村の再処理工場でのコストのみが計上されている。六ヶ所村再処理工場の処理能力は年間 800 トンであり、これを 40 年間運転させるとする試算であるが、これは原発から発生する使用済燃料の約半分にしかすぎない。
- 劣化ウラン、回収ウラン、MOX使用済燃料の処理・処分コストが含まれていない。
- ナトリウム火災事故以来停止している高速増殖炉もんじゅのコストが含まれていない。
- ウラン処理施設の解体に関わるコストが含まれていない。
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References
大島, 2011a. 原発のコスト - エネルギー転換への視点. 岩波書店.
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