乳がん: 病態、原因、治療、予後など
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乳がんとは
乳がんは女性にもっともよくみられるがん cancer の一種である。Duct および lobule 部位で発生しやすい (6)。また、乳腺とリンパ節が繋がっていることから、リンパ節を通して他の組織に転移しやすいという特徴がある。
乳がんのマンモグラフィー結果 (7)。矢印が腫瘍を示す。マンモグラフィーとは、乳がんの診断を目的とした乳房の X 線撮影のこと。しこりになる前の小さな乳がんでも発見できる。
- 女性の浸潤性がんの 22.9% を占め、女性では最もよく見られるがんである (5, 全世界のデータ)。
- 世界では、年間およそ 100 万件の診断例があると見積もられる (5)。そのなかで 12 - 20% は triple negative breast cancer であり ER, PgR, and HER2 がネガティブ。
- 女性のがんの 16%、がんにおける死亡の 18.2% は乳がんである (出典不明)。
乳がんは乳腺に生じるがんであり、女性に多いものの、男性も罹患する可能性がある。以下のような兆候が知られている。
- しこり lump が乳房に生じる。全てのしこりががんであるわけではないが、発見された場合早急な診断が望まれる。
- 一方の乳頭に発疹 rash がみられる。
- くぼみ pitting や皮膚が赤くなる。
- 乳頭が陥没する。
- 血液を含む分泌物が出る。
- 皮膚がむけたり裂けたりする。
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乳がんの放射線治療
> 乳がんには 2 つの病態が混在するとされる (スペクトラム理論; Ref. 3)。
- 1 つは、乳がんは原発巣からリンパ節転移を経て全身へと順序立てて広がるという病態である。これは 1890 年代に提唱された古い理論で、
ハルステッド理論 と呼ばれる。 - この場合、乳房切除術後に広い範囲に放射線治療を行うことで、予後を改善できることになる。この治療は長く行われてきたが、目立った生存率の改善は見られなかったようである。
- さらに、乳房切除術後に化学療法などの全身治療を行うことで生存率の上昇が認められるようになり、乳癌は臨床的に発見された時点ですでに全身に転移しているという
全身病モデル が支持されるようになった。 - 現在では、全身化学療法と局所的な放射線療法を併用することで、さらに生存率を高められることが示されている。
分割照射と寡分割照射
乳がんの放射線治療では、手術した乳房全体に、45 - 50 グレイを照射するのが一般的である (4)。腋窩のリンパ節に転移があった場合は、鎖骨上窩にも照射することがある。
45 - 50 グレイというのは照射される放射線の総量であり、これをどのようなスケジュールで照射するかという問題がある。
日本乳癌学会の HP (4) では、2 グレイ未満の線量を 5 週間かけて照射するという方法を一般的としている。1 回の照射は 1 - 3 分程度である。照射を分割して行うので、この方法を
一方、高線量を少数回照射する
> 分割照射と寡分割照射による急性皮膚炎のリスクを比較したメタ解析 (8)。
- Acute radiation dermatitis (ARD) は、放射線治療の一般的な副作用の一つである。
- HFRT reduced the risk of ARD in breast cancer patients as compared with CFRT (RR = 0.28, 95% CI = 0.19–0.43) と書かれているように、寡分割照射の方が ARD のリスクが低い。
乳がんと人種
アメリカでは、乳がんのリスクが人種によって異なることが知られている。
たとえば、ヒスパニックの女性は乳がんのリスクが低い (2I)。これは人種による環境要因の違いだけでは説明できず、遺伝的要因があると考えられている。
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References
- Breast Cancer: Causes, Symptoms and Treatments. Retrieved December 07, 2016, from. Link.
Kim et al. 2016a. Red meat, poultry, and fish intake and breast cancer risk among Hispanic and Non-Hispanic white women: The Breast Cancer Health Disparities Study. Cancer Causes Control, published online.- 総説1 乳癌放射線療法の基本. 日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン.Link: Last access 2019/12/09.
- Q31.乳房温存手術後の放射線療法について教えてください. リンク切れ https://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g4/q31/
Wahba & El-Hadaad, 2015a. Current approaches in treatment of triple-negative breast cancer. Cancer Biol Med 12, 106.- By Mikael Häggström, M.D.- Author info- Reusing images - Own work. Source image:File:Breast anatomy normal.jpg by Patrick J. Lynch., CC BY 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=82827243
- By <a href="//commons.wikimedia.org/wiki/User:Bakerstmd" title="User:Bakerstmd">Bakerstmd</a> - <span class="int-own-work" lang="en">Own work</span>, CC BY-SA 4.0, Link
Xie et al. 2021a. Risk factors related to acute radiation dermatitis in breast cancer patients after radiotherapy: a systematic review and meta-analysis. Front Oncol 11, 738851.
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