アメリカの研究費のシステム

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8-27-2017 updated

  1. 概要
  2. NIH グラントの種類
  3. NSF グラント
  4. その他のグラント
  5. グラントと給与
    • 教員
    • ポスドク
    • 大学院生

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概要

研究のために資金が必要なのはどこでも同じであるが,アメリカの研究費事情は,日本のそれとかなり異なっている (1)。大きな違いとしては,次のような点が挙げられる。

  1. 教員,ポスドクの給与のうち,かなりの割合が競争的資金に依存している。そのため,外部の競争的資金を獲得できない研究者は,十分な給与を得られないというサバイバル的環境である。
  2. 大学院生も,教員のグラントから給与をもらう。
  3. 教員は,外部資金を獲得した際に 間接経費 overhead cost/indirect cost を大学に納める。これが十分でないと,講義などを増やして労働力で大学に貢献しなければならない。日本にも間接経費のシステムはあるが,多くの場合講義の配分とは関係していない。

NIH グラントの書き方 のページも参考にして下さい。


NIH グラントの種類

NIH (National Institute of Health) は,公的研究費を支給しているアメリカで最大の機関であり (6),研究費は以下の 4 つに大別される (2)。それぞれはさらに細分化されている。ここでは,NIH Grant についてまとめる。

  1. NIH grant
  2. NIH contract
  3. Cooperative agreement
  4. Research training

なお,RePORT というページから,誰がどんなグラントを受け取っているか調べることができる。


NIH grant

NIH 所外研究費の大部分を占める。ほとんどは,研究者がアイディアを出す ボトムアップ型 の研究費である。非常にたくさん種類がある。

NIH のグラントは,基本的に 年に 3 回申請することができる。締め切りはグラントの種類によって異なり,1, 5, 9 月のものや 5, 7, 12 月のものなどがある。いずれもほぼ等間隔のインターバルである。2016 年 12 月の時点では,このページ に締め切り日の一覧が載っている。

以下の表は複数の情報源 (2,3) の寄せ集めである。各グラントの性格を把握するのには有効と思われるが,古い情報もあるかもしれないので,正確なところは NIH の公式サイトで確認して頂きたい。


K Award: Career development Awards

K Grant は,若手研究者の独立支援という性格をもっているグラントで,K Awards ともいう。基礎研究者向けと臨床研究者向けがある。NIH のサイト (4) で 2015 年 7 月に確認できたものを赤字で示しておく。

Grant Year $/year Comment
K01 3 - 5 12万 Mentored Research Scientist Development Award. メンターのもとで,独立した研究者を目指す。
K02 5 12万 Independent Scientist Award. 新規に PI になった研究者のためのグラント。
K05 5 12万 Senior Scientist Award. 独立した研究者のためのグラント。
K07 2 - 5 12万 Academic Career Award. 臨床研究者のためのグラント。
K08 3 - 5 12万 Mentored Clinical Scientist Development Award. 臨床研究者が基礎研究を始めるためのグラント。
K12 5 40万 Mentored Clinical Scientist Development Program Award. K08 よりも長くて高額。
K18 0.5 - 2 17万 Career Enhancement Award for Stem Cell Research. Stem Cell を使った研究を始める若手への支援。
K22 3 12万 Career Transition Award. ポスドク経験 2 年以上,独立した研究者として 2 年以下の人向け。さらなるキャリアの発展を支援。
K23 3 - 5 14万 Mentored Patient-Oriented Research Cereer Development. 臨床研究を始める若い研究者のためのグラント。基礎から臨床への transition か。
K24 3 - 5 10万 Mid-Career Investigator Award In Patient Oriented Research. 臨床医学研究歴 15 年以内の中堅クラスの臨床研究者。臨床家に臨床研究の時間を確保し,臨床研究の指導者となることを目標としたグラント (2)。R01 をもっていないと申請できない (4)。
K25 3 - 5 14万 Mentored Quantitative Research Career Development Award. 工学から基礎医学,臨床医学の方向を目指す。
K26 3 - 5 13万 Mid-Career Investigator Award In Mouse Pathobiology Research.
K30 5 20万 Clinical Research Curriculum Development. 臨床医学分野での新しいトレーニングプログラムの開発などのためのグラント。
K99 Pathway to Independence Award. R00 とも。ポスドクの final stage から independent へのキャリアアップ。ポスドク経験 4 年以内。

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R Grant

R01, R03, R21 には米国市民権は不要である。しかし,その他のほとんどのグラント (とくに K Awards などのキャリア支援型ものも) は米国民を対象としたものである。

Grant Year $/year Comment
R01 3 - 5 25万

Traditional Research Grant. これを取れたら一人前の研究者とされる。日本の科研費とは違って 期間満了後に更新が可能 である。もちろん,その際にも審査が必要である。また,一人の研究者が複数の R01 を取ることも可能。結果を得られる可能性の高い,過度にチャレンジングでない研究が対象である。2015 年の採択率は約 13%。

R03 2 年以下 5万

Small Grant と呼ばれる。Pilot study, development of research technology などを支援する。更新できないのが特徴。2015 年の採択率は約 11%。

R21 Exploratory/developmental Grant という。
R29 5 35万

First Grant と呼ばれる。5 年間で 35 万ドル。5 年以上の研究経験があると申請できない。


NSF グラント

National Science Foundation (NSF) は,NIH とともにアメリカの 2 大グラントもとである。健康に関連する研究を支援する NIH に対して,NSF は一般科学を支援する。日本のシステムに例えると,NIH は厚生労働省,NSF は文部科学省に相当すると言えるだろう。

検索は このページ から行うことができる。NIH と異なり,NSF への申請は基本的に 年 1 回のみ である。


その他のグラント

その他,それぞれの州,民間企業,学術支援団体などもグラントを提供している。とりあえず,私のアンテナに引っかかったものを表にしておく。数が増えてきたら整理する。

研究費

グラント コメント

TWAS

5

発展途上国で働く研究者限定。$15,000,2 年間,更新あり。この団体はスカラーシップも出している。

RWJF

Rolling

Robert Wood Johnson Foundation.

ニュージャージー州に本拠を置く団体で,健康に関する研究を支援。特定の募集ではなく,常に proposal を受け付けている。


スカラーシップ

ポスドクまたは大学院生のためのスカラーシップ。

グラント コメント

上原記念生命財団

海外留学助成が有名。研究科長の推薦が必要で,1 推薦者に原則として 1 件なので,つまり学部または研究科で 1 人だけである。450 万円以内。

このハードルをクリアできれば,比較的採択率は高いという噂も。毎年 100 名前後が Research fellowship または Postdoctoral fellowship に採択されている。

来日研究助成,研究費,国際シンポ開催助成などもある。

TWAS

発展途上国への支援を主体としたグラント。

  • インドで研究したいポスドク,などの限定公募多し
  • Visiting researcher 向けなどもある

CAS PIFI

中国科学院 Chinese Academy of Sciences (CAS) から,ポスドク向けに CAS President’s International Fellowship Initiative (PIFI) というスカラーシップが毎年募集されている。詳細は検索のこと。


グラントと給与

教員

アメリカでは,9 ヶ月報酬システム を採用している大学が多い (1)。このシステムでは,6 - 8 月の給与が大学から支払われず,外部資金があればこの間の給与をそこから支払うことができる。つまり,グラントの有無が年収に大きく影響するのである。

給与は,通常は普段の給与,そのプロジェクトへの労働時間 (エフォート) などから計算される。自分で「$1,000,000 もらおう!」という感じにはならない。


ポスドク

教員同様に,所属機関ごとに計算式が定められているのが普通である。州の法律にも左右され,ポスドクの経験などによって給与が定まる。

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References

  1. 川崎 2001a. アメリカ暮らし雑感 (3) グラント. 比較生理生化学 18, 119. Link.
  2. 研究留学ネット NIH グラントのしくみ
  3. 伊藤. 若手研究者の活性化を促進する競争的研究資金 (研究グラント)の整備の必要性. Link.
  4. NIH K Awards. Link: ここから色々とリンクあり。
  5. NIH SOP page Link.
  6. Amazon link: Making the Right Moves (English Edition), Ch.9. Getting Funded.