遺伝子の水平伝播: Horizontal gene transfer

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7-23-2017 updated

  1. 概要: 水平伝播とは
  2. 水平伝播の実例
    • Wolbachia
    • ウミウシの光合成遺伝子
    • Aerosin gene

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概要: 遺伝子の水平伝播とは

遺伝子の水平伝播 (horizontal gene transfer; HGT) は 1940 年代に微生物で最初に報告され、当初は植物での研究が盛んであった (1)。

その後、他の分類群の生物でも多くの例が報告され、現在では、遺伝子重複の多くは、自然な重複ではなく HGT によると考えられている (1)。

> HGT で伝播した遺伝子の多くは中立またはほぼ中立であ (1)。
  • つまり、適応的でなくても一定期間はゲノム内に保存され、やがて適応的に機能するものが生き残る。
  • 機能的に中立の遺伝子は、長い時間の間にまた失われると考えられている。

> HGT は原核、単細胞真核生物、多細胞真核生物の様々な組み合わせで生じる (1)。
  • もちろん、原核生物 同士の HGT が最もよくみられる (4I)。
  • 単細胞真核生物への細胞内共生バクテリアからの伝播は EGT (endosymbiotic gene transfer) という。
  • バクテリアからヒトの生殖細胞系列への伝播は報告されていないが、体細胞には伝播する。

> HGT は、遺伝子の系統解析で発見される。
  • 具体的には、分子系統樹と生物の系統樹で対象とする生物の位置が異なる phylogenetic conflict である (1)。
  • したがって、系統的に近い生物の間で生じた HGT を検出するのは難しい。

Gut microbiola の中では HGT が盛んである。たとえば、日本人の腸内細菌は海藻の細胞壁に由来する polsacchaides を分解することができるが、これは海藻の寄生虫から腸内細菌に移行した酵素の働きによる (1)。



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HGT の実例

Wolbachia

Wolbachia is a maternally inherited endosymbiont that infects a wide range of arthropods and nematodes. Wolbachia からの HGT は bean beetle, filarial nematode で報告されていが、文献 3 では その分布がかなり広いこと、そのゲノムのほぼ全体が Drosophila のゲノム中に含まれることなどを示している。

原核生物 prokaryote から真核生物への HGT が広く存在する ことを示した、歴史的な論文である。


ウミウシの光合成遺伝子

図のウミウシ Elysia chlorotica は、餌である藻類の葉緑体 plastids を使って光合成をすることができる (4I)。しかし、葉緑体の代謝に関わるタンパク質 (1000-5000 個が必要とされている) の 90% 以上は核ゲノムにコードされている。

この論文では、核ゲノムにコードされている遺伝子の 1 つ、psbO がウミウシのゲノムに移行していることを示している。



Memo

  • ウミウシに移行した葉緑体は、約 10 ヶ月にわたって光合成を続ける。
  • 葉緑体の核はウミウシに移行していないため、どこからか核タンパク質が供給されていると考えられる。HGT の可能性が最も高い。
  • psbO は plastid manganase-stabilizing protein (MSB) をコードする核遺伝子で、photosystem II complex のサブユニットであり、光合成経路で最も重要な遺伝子である。

Aerosin gene

Aerolysinが水平伝播によって複数の生物界に広がったことを示した論文 (2)。

Aerolysin domain は全ての界の生物に存在し、生物の last common ancestor がもっていたと思われる。しかし aerolysin の分子系統樹は生物の進化をあまり反映しない (phylogenetic conflict)。この原因として、以下の 3 つの可能性が考えられる。

  1. Convergence でたまたま配列が似てきている (収斂進化)
  2. 本当はもっとたくさん aerosin family があり、多くの生物で lost した結果、このような分布になっている。
  3. HGT

Results

  • Cluster mapping を行い、複数の界にまたがる aerolysin homologを 選んで系統樹を描いた。
  • 複数の界の生物が同一のクラスターを形成。これは HGT を示唆する結果である。
  • In situ hybridization で発現パターンが生物ごとに全く異なっており、これも HGT を示唆するらしい。
  • 単一で働く分子なので、HGT が起こりやすいことも議論されている。

Last common ancestor は 500 - 1000 genes をもっていた と見積もられているらしく、この中に何個も aerolysin が入っているのは考えにくいことから、HGT の可能性が高いと結論している。


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References

  1. Soucy et al. 2015a (Review). Horizontal gene transfer: building the web of life. Nat Rev Genet 16, 472-482.
  2. Moran et al. 2012a. Recurrent horizontal transfer of bacterial toxin genes fo eukaryotes. Mol Biol Evol 29, 2223-2230.
  3. Hotopp et al. 2007a. Widespread lateral gene transfer from intracellular bacteria to multicellular eukaryotes. Science 317, 1753-1756.
  4. Rumpho et al. 2008a. Horizontal gene transfer of the algal nucler gene psbO to the phososynthetic sea slug Elysia chlorotica. PNAS 105, 17867-17871.