In situ ハイブリダイゼーション: 原理、方法など

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: in situ hybridization 法とは
  2. プローブについて
  3. プロトコール: 固定
  4. プロトコール: ハイブリダイゼーション
  5. プロトコール: 検出
    • 蛍光検出
    • 化学検出
  6. トラブルシューティング

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概要: In situ hybridization 法とは

In situ hybridization とは、標識した DNA または RNA のプローブを組織上で標的とする遺伝子の mRNA とハイブリダイゼーションさせることで、標的遺伝子の空間分布を調べる実験である。in situ は、「その位置において」という意味のラテン語である。

図 (Public domain) は、DIG で標識したプローブを 2 つの抗体で検出する in situ hybridization の原理を示したものである。

In situ ハイブリダイゼーションの原理

組織切片を使った in situ ハイブリダイゼーションでは、下の図 (1) のような染色像が得られる。組織全体がピンクに染まっているのは HE 染色、白い矢尻で示された紺色の部分が in situ ハイブリダイゼーションのシグナルである。

In situ ハイブリダイゼーション

Figure 2. Regionalized expression patterns of Nkx2-5, Nkx2-6, Isl1, Gata3, Foxg1 and Sox2 in the 3rd pharyngeal pouch at E10.5 (30–33 somites). Parasagittal sections (10–14 mm) of embryos that were hybridized to the indicated probes are shown. Anterior is up and dorsal is left. Arrowheads indicate the 3rd pharyngeal pouch. All of the genes are expressed in the ventral 3rd pouch except for Sox2 (F). Scale bar represents 100 mm. doi:10.1371/journal.pone.0026795.g002


プローブについて

DNA or RNA?

ノーザンブロット Northern blot など、他のハイブリダイゼーションを基本原理とする実験でも同じであるが、プローブに求められる条件は 特異性と検出感度が高い ことである。

原則として、検出感度が高い → プローブと標的 mRNA の結合力が強い → 特異性も低くなりがちであることから、この条件に合うプローブを開発する努力が続けられてきた。長く使われてきた DNA および RNA プローブに加え、最近では locked nucleic acids (LNA), ペプチド核酸 (peptide nucleic acid, PNA) というプローブが使われている。


プローブ メリット デメリット
DNA
  • 合成が RNA プローブより簡単
  • 分解しにくい
  • アンチセンスを使ったネガティブコントロールを作れない
RNA
  • RNA-RNA hybrid は、DNA-RNA hybrid よりも Tm が高く安定。つまりハイブリ温度を上げることができる。
  • アンチセンス RNA でネガティブコントロールを作れる
  • DNA に比べて分解しやすい
  • DIG RNA labeling kit が $700 以上と高額
LNA
  • Locked nucleic acid。リボース環の 2 位の酸素原子と 4 位の炭素原子がメチレン架橋されている (図、ref. 6)。
  • 標的 DNA との結合が安定。詳細は LNA プローブを用いた in situ hybridization を参照のこと。
LNAの構造
PNA
  • 1991 年に開発された人工核酸 (図、ref. 7)。
  • DNA, RNA プローブより Tm 値が高く、短時間で高感度の検出が可能。
  • 糖リン酸骨格の負電荷がなく、塩濃度依存的な核酸同士の静電的反発がなくなることによる。
  • ヌクレアーゼ、プロテアーゼに耐性あり。
PNAの構造
  • 水溶性が低く、静電的に中性であるため、細胞への導入が難しい (5)。

プローブの長さと検出感度

一般に、プローブが長いと標的 mRNA との結合力が増し、検出感度が高くなる。ただし、細胞内へのプローブの浸透が弱くなる場合もあり、この場合は検出感度が低下してしまう。

プローブの長さは、以上のバランスを考えて設定する。プローブの長さ等に関する記述を集めてみた。ただし、これらはおそらく RNA プローブについての記述である。

  • 長さは 0.5 - 1.5 kb を推奨、使用量は 1 解析あたり 2 µg 程度。株式会社 徳島分子病理研究所の受託解析の記述 (3)。
  • 文献 5 では、Probes are nucleic acid strands that may be composed of DNA, cDNA or RNA; they may be single-stranded or double-stranded and may vary in length from 20 bases to over 1,500 bases と書かれており、短いオリゴプローブにも言及している。
  • BraInSitu の神経系の in situ のまとめ (4)。Non-RI の場合、常に感度が問題になるので、プローブは長い方が良い。700 - 1200 bp くらいだと、加水分解せずにそのまま使えると書かれている。GC 含量は 50% 程度を推奨。3' UTR は特異性が高くて良さそうだが、このページには「変な配列が多いので避けることが多い」と書かれている。

RNA プローブを加水分解した場合、どのように短くなるかを調べた研究がある (Cox 1984)。

t = (Lo - Lf)/(0.11 x Lo x Lf)

記号は

  • Lo = もともとのプローブ長 (kb)
  • Lf = 断片化後の平均プローブ長 (kb)
  • t = 処理時間 (min)

である。

プローブの Tm 値

プロトコール: 固定

プロトコール: ハイブリダイゼーション

ハイブリダイゼーションバッファー

ハイブリダイゼーションの温度

  • ハイブリダイゼーションは、Tm 値よりも 15 - 30 ˚C 低い温度で、15 - 20 時間行うのが通例である (8)。
  • Tm から 5 - 10 ˚C 低い温度で 12 - 14 時間 (9)。Tm - 5 ˚C なら stringency は高く、完全マッチのハイブリッドのみが形成される。Tm -20 ˚C ではミスマッチもある。RNA プローブを使用する場合、50% ホルムアミド中、50 ˚C で 12 - 14 時間が推奨プロトコール。プローブが 50 塩基以下の DNA なら、低 stringency 条件でハイブリダイゼーションする。


プロトコール: 検出

化学検出

蛍光検出

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References

  1. Wei et al. 2011a. A focused in situ hybridization screen identifies candidate transcriptional regulators of thymic epithelial cell development and function. PLoS ONE 6, e26795.
  2. ISH 法解説. Link: Last access 2020/03/09.
  3. 株式会社 徳島分子病理研究所. Link: Last access 2022/01/25.
  4. BraInSitu. Link: Last access 2022/01/25.
  5. 池田ら、2016a. ホールマウント in situ ハイブリダイゼーション (WISH) 法のための機能性ペプチド核酸の設計. 東京家政大学研究紀要 56, 59-65.
  6. By J3D3 - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20727722.
  7. By Mixtures - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1737834.
  8. 小路, 2002a.光顕in situ ハイブリダイゼーションによる 特異的RNA分 子の細胞質内不均一分布証明. 電子顕微鏡 37, 77-80.
  9. 富士フィルム in situ ハイブリダイゼーション用試薬. Link: Last access 2022/09/27.

Wei et al. (2011a) is an open-access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited. Also see 学術雑誌の著作権に対する姿勢.

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