分子生物学で使われる抗生物質 アンピシリン:
濃度、作用機序など
reagents/a/ampicillin
2018/05/30 更新
- 概要: アンピシリンとは
- 作用機序
- Amp 耐性遺伝子
- プロトコール
- ストック溶液の調製
- 培地などに添加する濃度
- アンピシリンはどれぐらい保つのか?
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概要: アンピシリンとは
アンピシリン ampicillin とは、
つまり、アンピシリン耐性遺伝子と目的遺伝子の両方をベクターに組み込み、形質転換された大腸菌を選抜するわけである。
アンピシリンは、ペニシリン G にアミノ基を付加した aminopenicillin であり (3, 構造は 文献 1 より)、これによってグラム陰性菌の外膜を透過するようになっている。そのため、グラム陽性菌および一部のグラム陰性菌に有効である。

アンピシリンの構造には、ページ下方にある
作用機序
アンピシリンの標的になる生物では、細胞壁の一部に薄い (わずか 1 または 2 分子) ペプチドグリカン peptideglycan でできている部分がある (3)。グリカン鎖はアミノ糖であり、δ-アミノ酸を含むペプチド鎖と cross-link している。
ペニシリン (アンピシリンを含む) は、この
Amp 耐性遺伝子
アンピシリンの構造には lactam ring が含まれており (図, 4)、これを加水分解する酵素

β-lactamase はペリプラズムに存在する 酵素 で、bla 遺伝子にコードされる TEM β-lactamase が分子生物学実験における Amp 耐性遺伝子としてよく使われる。
この酵素は 286 残基のタンパク質で、最初の 23 残基はシグナルペプチドである。Amp を含む LB プレート で大腸菌を選択する実験を考えてみよう。形質転換された大腸菌は β-lactamase を細胞外に分泌する。すると、形質転換されたコロニー周辺に Amp を含まない部分ができる (3)。ここには形質転換されていない大腸菌もコロニーをつくることができる。これが
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使用プロトコール
ストック溶液の調製方法
ストック溶液は、以下の方法で調製する (5)。
- アンピシリンナトリウム塩 Ampicillin sodium salt を蒸留水に 5 - 20 mg/mL で溶解。
- 0.22 µm のフィルターで滅菌。
- ストック溶液は -20 °C で保存可能。
使用濃度など
寒天培地 (LB 培地など) には、20 - 50 µg/ml の濃度で加える (5)。20 - 200 µg/ml としている文献もある。
アンピシリンは熱に弱く、45℃ ぐらいまで冷ましてから加える。安定なアナログとしてカルベニシリン carbenicillin がある。これはペニシリンにカルボキシル基を付加した carbopenicillin で、アンピシリンに比べて高価である (2)。
アンピシリンはどれぐらい保つのか?
- ストック溶液は数ヶ月安定 (6)。Ref 6 のサイトでは 1 ヶ月と解釈しているが、元は for months なので数ヶ月。私の感覚でも、少なくとも 3 ヶ月は大丈夫。
- 35°C で 1 ヶ月保存すると、元の溶液の 59% になるという情報がある (6)。しかし、こんな条件で保存することはあまりないはず。
- 培地などに加えて 4°C 保存なら、数週間。
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References
- By Jü - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11213692
- 分子生物学実験の便利帳. Link.
Green and Sambrook, 2012a. Molecular cloning: A laboratory manual, 4th edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press.
- By Edgar181 - English Wikipedia, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1955126
- Sigma じっけんレシピ. Pdf file.
- アンピシリンの半減期. Link: Last access 2018/05/31.