アメリカの研究費: NIH グラントの書き方
- 概要
- 採点システム
- ネット情報
- Aim の書き方
- その他グラント関係メモ
- "globally engaged" とは
- and/or のときは and だと思え
広告
概要
NIH (National Institute of Health) は、アメリカの医学・生命科学に関する主要な公的研究費を支給している機関である。グラントの種類などは、アメリカの研究費システム のページに示している。ここでは、NIH Grant の書き方に関する情報をまとめる。
また、グラントには Scientific premise, Scientific rigor など、論文とはまた異なる言葉が使われる。これらのキーワードは、研究費関係のキーワード のページにまとめた。
採点システム
2007 年から新しい採点システムが検討され、2009 年に採用されている (5)。もっとも一般的な R01 グラントを例に説明するが、他のグラントでも概ね共通のシステムがある。
審査は 2 段階に分かれている。最初は
SRG では、グラントに
上位の criterion score を得た申請書は、SRG のミーティングでさらに discussion される。スコアが低かったものは not discussed となり、これらが採択される可能性は低い (ほぼ皆無)。Meeting では
2 段階目の審査は、 NIH Institute and Center (IC) の各セクションにある Advisory Councils/Boards で行われる (5)。ここでは申請書の内容が program の主旨に合っているかどうかなどが審査される。
Advisory Councils/Boards は IC director に各申請書に対する recommendation を提出し、これに基づいて IC director が最終決定をする (5)。Overall impact score はもちろん重要であるが、それ以外に PI の経験なども考慮されるようだ (10)。
ネット情報
- SRG meeting では、それぞれの reviewer が割り振られた申請書の内容を 2, 3 分のプレゼンにまとめ、それを他の人が聞いて impact score をつける。申請書を見ながら議論することは事実上ないので、reviewer のプレゼン能力に左右される。
- 同じ申請書でも、SRG が違うとスコアが全然違うことはもちろんある。これは査読システムの宿命で、腐らないように地道に良い申請書を書き続けるしかないのだろう。
- Study section の reviewer の多くは、トップではなく中間層の研究者。
- R01 更新の審査は、良い論文が出ているかどうかでなく、ちゃんと申請書に書かれた研究が行われているかが重視される。
広告
Specific aim の書き方
Specific aim は、プロジェクトの目的を述べる重要なセクションで、通常は 1 ページである。Reference は含めても含めなくても良さそうだ。NIH sample applications (3) ではどちらもある。
書き方は命令形でいいような気がする。"Investigate A" など。To 不定詞にするとかっこわるい印象。
新しいアイデアは不要
ステムセル分野での原則、Aim の書き方 (1) を中心に、他のサイトや私の経験を追加したもの。元サイト必見。全体に、「新規アイディアが良い計画書に必要だ」というありがちな誤解を解くのに有効。
- 絶対に冒険しない。アイデアの良さでなく、こうすれば目標達成できるという作戦計画書を書く。この理由からスクリーニングは禁忌。
ユニークであってはいけない。 Innovation スコアはアイディアのユニークさを示すのではなく、新しい技術を開発したりエンドユーザーとして使うことで加点されるもの。新しいコンセプトは、十分な preliminary data や他分野の知見からほぼ確定されている場合にのみ言って良い。- the concept that ... , while reasonalbe, is not convincing. という身もふたもないコメントを受け取ったことがある。レビューアーは、このように個人の印象だけで悪い点をつけることができ、審査は減点法である。「納得させる」というよりは「隙を見せない」ストラテジーが良い。
- 結果として、取りうるストラテジーは old question を new systemでアドレスするか、new question を old system でアドレスするかのいずれかのみとなる。これは feasibility と innovation のバランスをとるためで、new-new は feasible でないから没, old-old は innovation も impact もないからだめ。
Aim 同士の関係
全体の構造は、疲れているレビューワーのためにシンプルに。具体的には、チャートに書いたら一直線のアルゴリズムになるように (1)。つまり条件分岐は避ける (2)。
- 複数の aim を、ちょうどよい距離感で示す。コンセプトは一つで、それに対するアプローチが異なるのが aim 1, aim 2 となるのが良い。コンセプトが複数あると混乱を招く。
- これは別のサイトで言われていることと同じ (2)。曰く、specific aim は 3 つとかが良く、
Central hypothesis を証明するための 3 つの実験目標 と表現されている。 - さらに、specific aim 1 の成功が aim 2 に必要というプランは好ましくない (2)。こうならざるを得ない場合、aim 1 は 100% 成功するものにしておく。
- Potential pitfalls はサブ aim で必ずつぶすこと。
広告
その他グラント関係メモ
内容が増えたら整理していきます。
and/or のときは and だと思え
経験談。申請書に書く項目で、A and/or B という指定があった。A について内容を記述したら、
基本的に
References
- Nuggets for grant writing. すぎりおのがんばったるねん. Link: Last access 6-22-2017.
- グラントの書き方. Ryohei's neuroscience notes. Link: Last access 6-22-2017
- NIH Sample applications & More. Link: Last access 6-22-2017
- Amazon link: Amazon link: Making the Right Moves (English Edition), Ch.9. Getting Funded.
Eblen et al. 2016a. How criterion scores predict the overall impact score and funding outcomes for national institutes of health peer-reviewed applications, PLoS ONE 11, e0155060.- The NIH significance and innovation sections: demystified. Link: Last access 6/24/2017.
- Scientific premise in NIH grant applications. Link: Last access 6/25/2017.
- Reviewer Guidance on Rigor and Transparency: Research Project Grant and Mentored Career Development Applications. Pdf: Last access 6/25/2017.
- Reviewer Guidance on Rigor and Transparency: Research Project Grant and Mentored Career Development Applications. Link: Last access 7/6/2017.
- NIH の Study section への戦略. Ryohei's neuroscience notes. Link: Last access 8/3/2017.
Fang et al. 2016a. Reserch: NIH peer review percentile scores are poorly predictive of grant productivity. eLife 5, e13323.
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。