アファーマティブ・アクションについて

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このページの最終更新日: 2022/10/17

  1. 概要: AA とは
  2. AA は逆差別か
  3. AA にまつわるおかしな理屈
  4. その他メモ
  5. 結論

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概要: AA とは

アファーマティブアクション (affirmative action, AA) とは、弱者がおかれている不利な現状を是正するための改善措置のことをいう。歴史的な経緯などが考慮され、具体的には以下のような措置が挙げられる。

  • 大学などにおける貧困層に限定した援助
  • アメリカの大学における差別を受けてきた人種 (黒人、ラティーノ、ヒスパニック など) に対する優遇措置
  • 会社などで、女性や被差別人種が優先的に採用されたり昇進したりする
  • 研究者の女性限定・女性優先公募

このページには、AA について関連する情報や私の考えなどをまとめていく。とくに研究者の女性優遇措置についての話が多くなると思う。

日本のアカデミアにおける AA で、もっとも問題となっているのは、なぜ若手だけが責任を取らされるのかという点。

  • 男性優遇の歴史はあった。なら、それを是正するためには、優遇されてきた年代の男性 (教授クラス?) をクビにして、女性を入れれば良いはず。
  • しかし、AA は新規採用枠に適応されることがほとんどである。なぜ、過去の差別を若手が是正しなければならないのか。

結局、この なぜ若手に皺寄せがくるのかという質問に対して、説得力のある回答を見たことがない 状態が続いている。この状態で、「AA は差別ではない」と主張する人が推進派なので、余計なところに論点が移り、建設的な議論ができないのが現状と認識している。


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AA は逆差別か

研究者の女性優遇措置については、私の中では マクロで見れば進めるべき格差是正、ミクロで見ればどう言い訳しても逆差別 ということで既に決着してしまっている。

つまり、雇用・採用側が「すいません、過去の差別を是正するために、これからは男性をちょっと差別しますので耐え忍んでください。我々は採用にバイアスをかけていいと上から言われてますんで。」と正直に言えば、問題はシンプルである。

そもそも、アカデミックポジションの配分が男性優先であった歴史を是正しようとしているわけなので、逆差別なしにこれを完了するには、男女が完全に平等に評価される状態を、全てのポジションが入れ替わるだけの時間 (数十年?) だけ継続する必要がある。これを短い時間で行うのだから、逆差別が生まれるのは仕方ない。

別の言い方をすれば、これを「差別ではない」と言う人がいるから反感を買うのであって、これを「社会状況を考慮して容認されるべき差別である」というところを出発点にすれば、もっと建設的な議論ができるのではないかと思う。例えば、女性のみ更衣室を作ったり、女性が産休を男性よりも長く取れることと同様に考えるべき。

イギリス英語では positive discrimination

Affirmative action はアメリカ英語、日本語では「積極的格差是正措置」という。どちらも曖昧な言葉を使っているが、イギリス英語では、なんと positive discrimination つまり「肯定的差別」と呼ばれる。

条約での記述など

とりあえず目に止まった「第五回 科学技術系専門職の男女共同参画実態調査 男女共同参画学協会連絡会 (2022)」からの引用。

「女子差別撤廃条約」の第 1 部第 4 条 の 1 には、「締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなってはならず、これらの措置は、機会および待遇の平等の目的が達成された時に廃止されなければならない。」と謳われている。


これを含め、差別でないとする根拠には以下のような文書があるようだ。

  • 「女子差別撤廃条約」の第 1 部第 4 条 の 1
  • 2005 年ポジティブアクション研究会の報告書 (Pdf file)。

しかし、「差別と解してはならない」とか言われても、これは単に利害に関わる人が言い張っているだけにしか聞こえない。差別でないのなら、将来的に廃止する必要もないんじゃないか。

つまり、「男性不利なのはわかっているが、これを差別と呼ぶのはやめようね」という提案があるだけのことと言える。

「そもそも」に「基本的に」という意味がある、という閣議決定がされたことがあったが、これは公式な文書にもろくでもないものがあるという好例だろう。上記の条約や報告書を盲信して、そこで考えることをやめてはならない。

男性教授をクビにしたら

仮に、教授クラスの男性 A をクビにして、女性 A と入れ替える措置がとられたとしても、これは男性差別にあたると考えられる。男性 A が教授として認められた能力・実績のうち、何%が「男性であったための優遇」によるものか、正確に計算できないためである。

もしかすると、男性 A は当時としては珍しく「全く下駄をはいていない人材」だったかもしれない。優遇分を定量することが不可能である以上、男性 A は不当に評価されてクビになる可能性がある。これは同年代の女性教授には起こらないため、やはり男性差別に相当するではないかと思う。

AA にまつわるおかしな理屈

優秀な男性なら職をみつけられる

2022 年 4 月ごろ、Twitter で有名になったやりとりがあった。個人名は伏せるが、典型的なやりとりなので概要をメモしておく。個人的にはスクショを保存済み。

  • 女性限定公募で心が折れるという男性は、これまでに折られてきた女性の心を考えたことがあるのか?
  • なぜ、これまでの罪を若手が背負わなければならないのか? (はっきりとした回答なし)
  • 「優秀な若手男性がポストに恵まれないことは周囲を見ていて無いと思います」

このごく主観的な回答のあと、いかに女性が研究者として優秀であるかというデータを羅列。しかし、女性の方が科研費の採択率が高かったりしても、それは女性限定公募の正当化にはならない。これが OK なら、女性の方が離職率が高いというデータを以て男性を優遇する (いくつかの医学部で行われていて問題になった) ことも正当化されてしまう。

AA の財源は普通の雇用と異なる

財源の問題。「女性限定公募の財源は、普通の雇用とは異なる」として正当化する意見もある。これも詭弁に過ぎないように思う。結局はカネをどこからか持ってきているわけなので、「だったらその財源を通常の雇用に使って、男性も考慮しろ」と言えば、それだけでこの議論は終了なのではないだろうか。

「財源」なんて、どこかで人間が決めているだけのものなのに、それを神から与えられた不可侵のもののように思ってしまっているのが問題。「女性限定公募推進」「現状の盲目的肯定」「権威主義」が同居してしまっている例を見ることがあるのだが、一般化してほしくないところである。

その他メモ

その他の論点として「男性が極端に少ない分野 (看護など) では、男性を優遇する AA をしなくていいのか」というポイントもある。これも検討に値する。

大きな視点では、男性が女性よりも dominant であったという歴史があるため、これを根拠とすれば、男性優遇の AA は必要ない。

分野を限定すれば、女性が dominant である分野もあったはずで、これを根拠にすれば、男性優遇の AA は必要だろう。つまり、「dominant であった」という視点をどこに置くかが論点になる。アカデミアの場合は男性なので、これはあまり問題とならなかったが、たとえば看護では、以下の 2 点のバランスを考える必要が出てくる。

  • 小中学校、受験などでは、おそらく男性有利。
  • 看護師としての採用などでは、女性有利だったと予想される。

結論

以上のように、AA は完全な男性差別である。多くの場合、若手に皺寄せがきているので、これは年齢差別の問題 (若手は任期制になり、老人は定年を延長するなど) と重なり、若手研究者をさらにストレスフルにしている。

ただし「若手」と言っても色々あり、40 歳未満限定のグラントなどもあるので、むしろ就職氷河期の世代の扱いが悪いという議論もある。これも時間があれば年齢の問題としてまとめてみたい。

話を AA に戻すと、このような不完全かつ差別的なアクションを、一部が余計な理屈をこねてを正当化したがるから、余計な議論が生まれているのが現状。まずは推進側にまともな人間をもってくる必要がある。

とはいえ、アカデミアは今でも男性主体で、その弊害は大きいと考える。AA は差別であるものの、この問題を是正するためには、「差別します、すみません」と正直に言いながら AA を進めるのが、現時点で思いつく最適解である。


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References

  1. 共同さんかく、応募のしかく、ごかくの評価は得られるか? Link: Last access 2022/10/09.

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