食事制限 (カロリー制限) の実験: 餌の量を振ることの重要性

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6-17-2017 updated

  1. 餌の量を振ることの重要性


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餌の量を振ることの重要性

ショウジョウバエの例

ショウジョウバエでは、DR を理解する上で非常に重要と考えられる報告がなされている (1)。

文献 1 では、図のように様々な餌の濃度で2系統の寿命を比較している。chico はインスリン受容体基質 IRS の相同分子で、Drosophila で欠損させると寿命が長くなることが報告されている分子である。


図からわかることは、以下の通りである。

  • chico の変異は、DR による寿命延長が起こる条件を変えているだけで、最大寿命は延ばしていない。
  • このことから、chico と DR は重複するメカニズムで寿命に影響している可能性がある。
  • 餌の濃度を固定した実験だと、chico の変異は Drosophila の寿命を延ばす or 縮めるという 両方の結果が出る可能性がある

したがって、寿命を調べる実験においては、常にこの報告のように餌の濃度を振って、寿命が最大となるポイントで評価することが重要である。しかしこれはとても手間がかかるので、多くの論文では行われていない。寿命が延びる or 変わらない or 短くなるという矛盾した結果が報告されているときは、このような可能性も視野に入れて議論する方がよい。


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C. elegans の例

C. elegans のカロリー制限に関する論文としては Klass (2) が有名である。この論文は 2014 年 5 月の時点で 474 回引用されている。

餌のバクテリア濃度を 0 から 1 x 1010 まで変化させて寿命を比較しているが、どこがカロリー制限で、どこが過給餌であるかという判断は難しい。

  • 4日(0)産卵数 0
  • 5日(1 x 104)0
  • 5日(1 x 106)0
  • 15.1日(5 x 107)14
  • 25.9日(1 x 108)63
  • 19.4日(5 x 108)206
  • 16.0日(1 x 109)273
  • 15.0日(1 x 1010)26

かっこの後ろの数字は産卵数で、これが最大となる 1 x 10を最適な餌の量とすると、そこから段階的に餌を減らすことで寿命が延びていることになる。1 x 1010 は過給餌、5 x 107は餌不足と思われる。

この傾向は最近の論文でも確認されている (下図、文献 3 Rから引用)。

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References

  1. Clancy et al. 2002a. Dietary restriction in long-lived dwarf flies. Science 296, 319.
  2. Klass 1977a. Aging in the nematode Caenorhabditis elegans: major biological and environmental factors influencing life span. Mech Ageing Dev 6, 413-429.
  3. Greer & Brunet 2009a. Different dietary restriction regimens extend lifespan by both independent and overlapping genetic pathways in C. elegans. Aging Cell 8, 113-127.