老化の定義と概要

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このページの最終更新日: 2020/02/14


このページの内容

  1. 概要: 老化の定義
  2. 老化の意義とメカニズム
  3. 細胞の老化と個体の老化

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概要: 老化の定義

「老化」という言葉にはさまざまな定義があるが、メイナード・スミスの定義 (文献 1、以下の定義リストの 1 番) がクリアでわかりやすい。その他、いくつか原著論文で見かけた表現とともにリストにしておく。

  1. 老化とは、心身機能の進行性の衰退をもたらし、結果として死の危険を増大させるような現象である (1)。
  2. Aging is the universal, progressive, and intrinsic accumulation of deleterious changes (3).
  3. Aging is commonly characterized as a progressive, generalized impairment of function, resuting in an increasing vulnerability to environmental challenge and a growing risk of disease and death (4).

英語では、老化に該当する単語として agingsenescence がある。一般の辞書では aging は「加齢 (単に年月が経って変化が起こること)」を意味し、機能の低下というニュアンスをもつ「老化」には senescence が該当する場合が多いようである。Oxford online dictionary では

  • Aging: The process of growing old. The process of change in the properties of a material occurring over a period, either spontaneously or through deliberate action.
  • Senescence: The condition or process of deterioration with age.

と定義されている。原著論文の定義と、少しずれがあるように思う。


老化の意義とメカニズム

生物はなぜ老化するのか? という疑問は昔からあり、いくつかの老化理論が提唱されてきた。「~説」という名前で受け入れられている理論を表にまとめる。

いくつかはメカニズムにも言及しており、またそれぞれの説の概念には重複しているものもある。詳細はリンク先を参照のこと。

プログラム説

老化は遺伝子によってプログラムされた過程であるとする説。

エラー説

プログラム説に対する大きな概念で、老化は体に蓄積するダメージの結果であり、遺伝子によってプログラムされてはいないとする説。

酸化ストレス説
(フリーラジカル説)

エラー説の一種とも言える。活性酸素によるダメージの蓄積が老化の原因であるとする説。

使い捨ての体理論

Disposable soma theory という (1)。体を germline と soma に分けて考えるのが特徴で、soma には限られた投資しかしないことが老化の原因であるとする。

摩耗説

熱力学の第二法則 (エントロピー増大の法則) で老化を説明しようとする説。生物は開放系であり、この法則は適用できないため誤りとされる。

テロメア説

ヒトの体細胞は、約 50 回しか分裂することができない (2)。これを ヘイフリック限界 という。ヘイフリック限界に近い回数の分裂を終えた細胞は、いくつかの老化症状を示す。これを 細胞老化 cellular senescence という。

個体の老化を、細胞老化という観点から説明しようとするのがテロメア説である。個体老化と細胞老化の関係の詳細は、ヘイフリック限界 のページを参照のこと。


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References

  1. Kirkwood 1999a. 生命の持ち時間は決まっているのか - 「使い捨ての体」理論が開く希望の地平.

生命を germ line と soma に分け、寿命を説明しようとする使い捨ての体理論 disposable soma theory に関する本。Kirkwood は多くの論文や総説を発表している一流の老化研究者でもある。

Germ line とは生殖細胞系列のことで、次の世代に伝える遺伝情報がこれらの細胞に保持されている。そのため、germ line cell には生物は多大なエネルギーを投資し、DNA が傷ついたりしないように配慮している。

一方、それ以外の体細胞 soma には不必要なエネルギーを投資しない。これらが古くなってきたら、新しい体に作り変えれば良いためである (繁殖活動)。Pierce の遺伝学 などでも取り上げられている、広く受け入れられた老化理論であり、その提唱者であるカークウッドが自ら平易な言葉でこのアイディアを説明した名著である。


  1. Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。
  2. Kipling et al. 2004a (Review). What can progeroid syndromes tell us about human aging? Science 305, 1426-1431.
  3. Kirkwood 2005a (Review). Understanding the odd science of aging. Cell 120, 437-447.

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