ゲルマン魂とは: 言葉の起源、ドイツ人も使うのか?

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: ゲルマン魂とは
  2. キャプテン翼とゲルマン魂
  3. 「ゲルマン魂」はサッカー関連でよく使われる?
  4. 「ゲルマン魂」のドイツ語は?
  5. Germanentum は「大和魂」に相当するのか
  6. 結論

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概要: ゲルマン魂とは

ゲルマン魂 」は一般的な単語のように使われているが、私はこれは高橋陽一の造語で、ドイツ人にはそんな概念はないんじゃないかと疑っている。

まだ結論はまだ出ていないが、調べたことをこのページにまとめてみた。

キャプテン翼とゲルマン魂

私がゲルマン魂という言葉を知ったのは、漫画「キャプテン翼」が最初だったように思う。

キャプテン翼 ゲルマン魂 カルツ

キャプ翼にはいろいろシリーズがあるが、これは一番最初のシリーズ、いわゆる「無印」である。Ultrabem の兄弟サイト Ultrabem - Hobby にレビューがあるので、興味のある人は下のサイト内リンクからどうぞ。


「無印」キャプ翼では、ラスボスにあたるチームは西ドイツ。「ゲルマン魂」は西ドイツチームのメインキャラクターであるカール・ハインツ・シュナイダーのセリフだと思っていたが、実はシュナイダーのアシスト役、ヘルマン・カルツの方が先に使っている (文庫版 20 巻より引用)。

なお、シュナイダーもこのすぐ後に「ゲルマン魂」という言葉を使っている。「ヨーロッパサッカーの伝統を日本などにけがされてたまるか!! 西ドイツサッカーの歴史はおれたちが守るんだ!! おれたちのこのゲルマン魂で!!」 という、若干差別的な内容を含むセリフである。

このページを作った 2022 年には、日本はワールドカップでベスト 8 を狙う位置にいるが、初めてのワールドカップ出場は 1998 年。J リーグの設立は 1991 年。

無印「キャプ翼」が連載されていたのは 1981 - 1988 年で、当時の日本は一度もワールドカップに出場したことのない国だった。西ドイツチームのこの認識も、ある意味で当然のものと言える。


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「ゲルマン魂」はサッカー関連でよく使われる?

2022 年ワールドカップ、ドイツは日本に敗れてグループリーグで敗退した。同年の 12 月現在、「ゲルマン魂」でググると、以下のようにサッカー関連の記事が並ぶ。

ゲルマン魂 検索結果

Google Trends で「ゲルマン魂」がどれくらい検索されているかを調べてみた。サーチ可能な 2004 年から継続的に使われていることがわかる。これは当然の結果。ワールドカップごとにピークがあったりすれば面白かったのだが、そういうわけでもないようだ。

ゲルマン魂 検索結果

どのように「ゲルマン魂」が使われているかを一応把握できたが、検索では言葉の起源までは明らかにならなかった。ちゃんとした文献があれば、いずれ情報を更新したい。

「ゲルマン魂」のドイツ語は?

では、ドイツ語で「ゲルマン魂」をなんというのだろうか?

「魂」だと seele という言葉が出てくるが、これはむしろ「霊魂」みたいな意味のようだ。人々の気質を表す言葉だと、geist という単語になるようである。

Yahoo 知恵袋の関連ページ では、Germangeist または Germanentum という単語が「ゲルマン魂」のドイツ語として挙げられている。ただし、これらは民俗学などにおける専門用語で、日常生活では使われないと書かれている。ナチスの歴史が、ゲルマン民族という意識づけを避けさせるように働いているということもあるらしい。

Germangeist

  • Google Trends ではデータなし、つまり検索数が不十分。
  • Google Scholar では 1,230 件ヒット。非常に少ない。
  • 単なる Google 検索では 800 件ほど。これも少ない。
  • Collins という辞書では、対応する英語なし。

極めてマイナーな単語と言えそうだ。

Germanentum

こちらは、Google Trends でデータがある。ドイツで主に検索に使われている。

意味的にも the culture, history, religion, and traditions of the Germanic peoples とあり、ドイツ人の気質を表すわりと一般的な単語のようだ。

英語でこの言葉に対応するのは Teutonicism であるとしている辞書もある (Collins)。Teutonicism は the character, spirit, or culture of the Teutons, esp. the Germans とされており (参考)、まあこれが「ゲルマン魂」に相当すると考えていいのではないかと思う。


Germanentum は「大和魂」に相当するのか

最後に、Germanentum は「大和魂」に相当するのかを考察する。まず大和魂だが、Oxford Languadge によると「儒教・仏教などが入ってくる以前からの、日本人本来の物の見方・考え方・精神」と説明されている。

日本大百科全書では、「漢才、すなわち学問上の知識に対して、実生活上の知恵・才能を意味することばとして平安朝の文献に現れているが、いまは日本民族固有の精神をさすことばとして通用している」である。

「大和魂」は実は古くからある言葉で、なんと 初出は源氏物語 とされている (Wikipedia)。当時、漢の文化が日本に入ってきており、これに対する概念として用いられていたようだ。現在のような、やや軍国主義・国粋主義的な意味合いの「日本人の根性」というイメージは薄かったようである。

一方で、「大和魂」を画像検索するとこんな感じになり、やはり国粋主義のイメージが強い。どうみてもあまり知恵・才能といった雅な感じではない。

大和魂 検索結果

江戸時代の国学の発展、明治の西洋文化に対する概念として使われた経緯、さらに第二次世界大戦を経て、このような「大和魂」のイメージが作られていったものと考えられる。


では、Germanentum はどうか。

まずみつかるのは、この Mees 2004 の論文「ヒトラーと Germanentum」。日本と同じように、軍国主義と結びついて使われていたようである。

ヒトラーとゲルマン魂

イメージ検索では本が多く出てくる。また、ニュース検索で出てくる記事は、たとえば「Der Kult um das Germanentum und die extreme Rechte (翻訳: ゲルマニズムのカルトと極右)」。

Germanentum

よって、ドイツ語ではこれが国粋主義的な意味での「大和魂」に対応した言葉であると言えそうだ。

結論

日本語の「ゲルマン魂」は、「大和魂」に対応するような民族主義、国粋主義的なニュアンスをもった「根性」のような意味合いで使われる。スポーツの場面でとくに使用例が多い。

ドイツ語では、おそらくこれに対応する言葉は Germanentum である。

ただし、ドイツではナチス軍国主義の影響で、このような国粋的な概念に対する反発が強い。そのため、日本人が気軽に「ゲルマン魂」を使うような形で Germanentum という言葉が使われることは一般にない。


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