PC12: ラット由来の神経細胞株

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: PC12 cell line
  2. 分裂と分化
  3. 低酸素の影響

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概要: PC12 cell

PC12 は、Greene & Tischler (2) によって rat の副腎髄質 adrenal medulla からクロム親和性の細胞として単離された細胞である。神経の細胞株として広く用いられている。

  • The PC12 cell line is an O2-sensitive noradrenergic clonal line of rad adrenal pheoxhromocytoma cells (1I).

培養条件:
RPM 1640 medium with 10% FBS, 37℃.

分裂と分化

PC12 cell は EGF の存在下で分裂を続ける (4)。他のホルモン、たとえば NGF (neuve growth factor) を投与すると分裂を停止し、分化を始める (3I) ことが知られていた。

> 最近、PC12 cell は EGF 存在下でも分化することが報告された (5)。
  • 数学的モデリングを使った論文で、ホルモンの影響を数百の細胞レベルで調べている。
  • 3 分間の EGF パルスのような、ホルモンが作用するタイミングが重要であるとしている。

低酸素の影響

神経は原則として低酸素に弱く、さらに虚血 ischemia や脳障害によって低酸素にさらされることが多い。そこで、PC12 cell を使って低酸素の影響を調べる研究が数多く行われている (1,3)。

低酸素と PC12 のアポトーシス

Hypoxia (3% O2, 24 h) で生存率が低下する。アポトーシス、ネクローシスの両方を示唆する報告がある (3I)。

> カルシウムシグナルとアポトーシスの関係が調べられている (1)。
  • 細胞内カルシウムイオン濃度も上がる。
  • 電位依存性カルシウムチャネルである Cav1.2 および 1.3 の mRNA 量が上がる。
  • HIF-1α の阻害剤である echinomycic で、低酸素による Cav1.2 の増大が阻害される。1.3 はされない。
  • 以上のことから、この Ca2+ overload が細胞死の原因であると考えている。

オートファジーの関与

近年では、低酸素による細胞死のメカニズムとして、オートファジーの関与も指摘されている。一般に細胞死に関係するプロテアーゼには、カルシウム依存性のカルパイン calpain のほか、カスパーゼ caspase やカテプシン cathepsin などがあるが、オートファジーに関係の深いカテプシンの阻害で生存率が向上するためである (3)。

> PC12 cell では、低酸素とグルコース欠乏による細胞死にはカテプシンの寄与が大きい (3)。

  • Cathepsin D, E 阻害剤 pepstatin A を培地に加えると、OGD によるアポトーシスがみられなくなる。
  • Caspase inhibitor と calpain inhibitor は効果が低い。
  • 上のパネルは未分化の PC12、下は NGF で分化した PC12 のデータ。
  • 低酸素で生存率が低下するが、1 または 5 µM pepstatin A で細胞死が抑制される。


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References

  1. Li et al. 2015a. Hypoxia-inducible factor-1α regulates the expression of L-type voltage-dependent Ca2+ channels in PC12 cells under hypoxia. Cell Stress Chaperone, published online.
  2. Greene & Tischler 1976a. Establishment of a noradrenergic clonal line of rat adrenal pheochromocytoma cells which respond to nerve growth factor. Proc Natl Acad Sci 73, 2424-2448.
  3. Kristis et al. 2011a. Proteases inhibition assessment of PC12 and NGF treated cells after oxygen and glucose deprivation reveals a distinct role for aspartyl protease. PLoS ONE 6, e25950.
  4. Marshall 1995a. Specificity of receptor tyrosine kinase signaling: transient versus sustained extracellular signal‐regulated kinase activation. Cell 80, 179–185.
  5. Ryu et al. 2015a. Frequency modulation of ERK activation dynamics rewires cell fate. Mol Syst Biol 11, 838.

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