抗体 (イムノグロブリン):
定義、種類、構造、産生機構など

UBC/protein_gene/protein_gene_meta/antibody_overview

  1. 概要: 抗体とは
  2. 抗体 IgG の構造
  3. 抗体と抗原の結合
    • 多様性を生み出すメカニズム

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概要: 抗体とは

抗体 antibody とは、免疫系 (リンパ球; B 細胞) でつくられる、抗原 antigen と高度に特異的な反応をするタンパク質 protein のことをいう (1)。

タンパク質としての名前は イムノグロブリン immunogloblin, Ig である (2)。抗体が認識する抗原部位は、エピトープ epitope と呼ばれる。

B 細胞などの用語については、免疫系の概要 を参照のこと。


5 種のイムノグロブリン

イムノグロブリンには、以下の 5 つのクラスがある (2)。

Class 血中濃度
mg/ml
分子量
kDa
沈降係数
s
軽鎖 重鎖 構造
IgG 12 150 7 κ or λ γ κ2γ2 or λ2γ2
IgA 3 180-500 7, 10, 13 κ or λ α 2α2)n or (λ2α2)n
IgM 1 950 18-20 κ or λ µ 2µ2)5 or (λ2µ2)5
IgD 0.1 175 7 κ or λ δ κ2δ2 or λ2δ2
IgE 0.001 200 8 κ or λ ε κ2ε2 or λ2ε2

> 血中濃度は IgG が最も高いが、最も早く誘導される のは IgM (2)。

  • IgM は表からもわかるように 5 量体であり、抗原に強く結合することができる。

> IgA は、唾液 saliva、涙 tear、各種粘液などに含まれる 分泌性の抗体 である(2)。

  • 外界からのバクテリアなどの侵入に対して最初に働く抗体と言える。

> IgE は寄生虫に対して働くが、同時にアレルギー反応にも関わっている (2)。

  • IgE と抗原の複合体は、mast cell 表面の受容体を刺激してシグナル伝達を惹起する。
  • これによってヒスタミン histamine などが放出され、平滑筋の収縮などを引き起こす。

抗体は以上のような役割分担をしているが、IgD の役割は不明と書かれている (2)。


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モノクローナル抗体とポリクローナル抗体

ポリクローナル抗体 polyclonal antibody は、抗原の異なる部位を認識する抗体分子の集合である。抗体産生細胞を操作し、1 種類のエピトープを認識するモノクローナル抗体 monoclonal antibody を作らせることもできる。

抗体 IgG の構造

IgG は図 (3) のように 2 本の軽鎖 (25 kDa, 緑色) と 2 本の重鎖 (50 kDa, 青色) から成る複合体である (2)。

ただし、抗体の characterization は古い時代に行われたため、プロテアーゼ消化による名前もつけられている。結果として、抗体の構造に関する名称は非常に複雑である。重鎖と軽鎖、Fabと Fc、可変領域と定常領域という少なくとも 3 パターンの名称がある。

重鎖と軽鎖、または重鎖同士はジスルフィド結合で繋がっている (2)。イムノグロブリンドメインというドメインが、重鎖には 4 つ、軽鎖には 2 つ含まれている。

抗原結合部位は、軽鎖および重鎖の N 末端側であり、多様な配列をもっているため 可変領域 variable region と呼ばれる。それ以外の部位は 定常領域 constant region と呼ばれる。

実際に直接抗原と接触する部位はとくに変異が大きく、これをとくに 相補性決定領域 complementarity-determining region (CDR) という。


  1. Fab 領域
  2. Fc 領域
  3. 青い鎖が重鎖
  4. 緑の鎖が軽鎖
  5. 抗原結合部位
  6. ヒンジ領域

IgG は原則として Y 字型をしているが、重鎖と軽鎖を繋ぐ部分は非常にフレキシブルであり、IgG は抗原と様々な形で結合することができる (2; segmental flexibility という)。1 つの IgG には、2 つの抗原結合部位がある (図の 5)。たとえば、ウイルスの外殻のタンパク質に対する抗体は、segmental flexibility のために 2 ヶ所でウイルスに結合することも可能となっている。

IgG をプロテアーゼであるパパイン papain で消化すると、2 個の Fab と 1 個の Fc に切断される (2)。F は fragment であり、Fab は抗原と結合する能力を有している。図の 1 の部分であり、ab は antigen binding の略である。重鎖全体と、軽鎖の N 末端側から成る。

Fc は結晶化することが容易であったため、c は crystallization に由来する (2)。この部分は抗原と結合することができない。軽鎖の C 末端側から成る。


抗体と抗原との結合

抗体と抗原との結合は、原則として酵素 enzyme と基質の結合と同じメカニズムによる (2)。つまり複雑な立体配置をとったアミノ酸 amino acid と抗原との相互作用であり、以下のような結合が関与する。


およそ 15-20 残基 のアミノ酸が抗原との結合に関わる (2)。


多様性を生み出すメカニズム - V(D)J 組み替え

抗体は、遺伝子領域の一部を「切り貼り」し、その組み合わせによって多様性を実現している (5)。


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References

  1. 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  2. Berg et al. Biochemistry: 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。
  3. By user:Y_tambe - Y_tambe's file, CC 表示-継承 3.0, Link
  4. 鈴木隆二 2015a. 免疫学の基礎がわかる事典.

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