細胞分裂、代謝、アポトーシスなどを制御する転写因子 Foxo: 構造、がんとの関係など

protein_gene/f/foxo
2018/12/06

  1. 概要: Foxo とは
  2. Foxo の活性制御
    • リン酸化による制御
    • アセチル化による制御
  3. Foxo の標的遺伝子
  4. その他未整理
  5. C. elegans の FoxO: DAF-16
    • インスリン用シグナルとの関係
    • カロリー制限との関係

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概要: Foxo とは

Forkhead domain をもつ転写因子の一群をフォークヘッドファミリー forkhead family という (2I)。Forkhead family には A から Q までの17 のサブファミリーがあり、A に対して B, C, D, ... の順に相同性が高い (1)。

Foxo とは、forkhead family の O サブファミリーに含まれるタンパク質の総称である。ヒト遺伝子は FOXO のように全て大文字で,マウスは Foxo のように最初だけ大文字で,他の生物は FoxO のように F と O のみ大文字で表す (1)。

哺乳類 の FoxO family には、Foxo1、Foxo3a、Foxo4 および Foxo6 の 4 種類が含まれる (1,9)。

Foxo1
(FKHR)

横紋筋肉腫 (rhabdomyosarcoma) の原因遺伝子として Pax3 との融合遺伝子の形で同定されたことから、当初は FKHR (forkhead in human rhabdomyosarcoma) と名付けられた。

Foxo3a
(FKHR-L1)

これが C. elegans DAF-16 および Drosophila の dFOXO に相当する (7I)。

Foxo4
(AFX)

Foxo6

Akt によるリン酸化サイトを欠いており、特殊な細胞内局在を示す (1I)。


マウス Foxo1, 3a, 4 の mRNA の分布はノーザンブロットで調べられている (13)。

  • ほぼ全ての組織で検出され,肝臓で発現が低く,白色脂肪組織で高めなどの共通点がある。
  • この論文では,Foxo結合配列がTTGTTTACという配列を共通して持っていることも示されている。

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Foxo の活性制御

リン酸化による制御

Akt によるリン酸化がもっともよく研究されている。Foxo1, 3a, 4 はいずれも Akt によってリン酸化され、転写活性を失う (10I)。

> マウス Foxo は Thr24, Ser253, Ser316 でリン酸化される (4R)。

  • マウスの肝細胞、インスリン 刺激を用いた実験。
  • Ser253に変異を入れると,インスリンによるリン酸化が完全に阻害される。
  • 他の2残基では,部分的なリン酸化は起こる。Ser253がgatekeeperである。
  • インスリン依存的なリン酸化はwortmanninで阻害されるため,PI3K経路を通じたものである。

> 同じマウス Foxo でも、IGF 刺激ではリン酸化のパターンが異なる (5R)。

  • マウス肝細胞では,Ser253がリン酸化されることで他の2つの残基がprimingされる。
  • Thr24はインスリン刺激でリン酸化されるが,IGF-I刺激ではリン酸化されない。
  • IGF-I刺激ではFoxo1は核外に出ず,つまり Thr24 のリン酸化が局在を制御していると思われる。

アセチル化による制御

少なくとも CBP [cAMP-response element-binding protein (CREB)-binding protein] と Sir2 によってアセチル化される (8)。図もこの論文から。

  • アセチル化酵素でもある CBP によってFoxo1とFoxo4がアセチル化されると転写活性が低下(8I)。
  • Sir2はFoxo1を脱アセチル化し,転写活性を回復させる(8I)。細胞のストレス耐性が上がる傾向。

また、酸化ストレスによってもリジン残基がアセチル化され,核へ移行する(12I)。

一般に、アセチル化によって Foxo の DNA 結合能は低下する。DNA と結合している Foxo は Akt/PKB によるリン酸化を受けにくいため,アセチル化によって Foxo はリン酸化阻害を受けやすくなり、さらに DNA 結合能が下がる。

> 哺乳類ではSIRT1が酵母のSir2に最も近く,FOXOと関連が深い (12)。

  • SIRT1は,酸化ストレス条件下でFOXO3と結合して脱アセチル化する。vitroでもvivoでも。
  • 脱アセチル化は,全体にFOXOによってストレス耐性が獲得される方向に作用する
  • 例えばp27の発現が上がって細胞周期が止まり,BIMが下がってアポトーシスが抑制されるなど。

Foxo の標的遺伝子

p27kip1

Foxo4を過剰発現するとp27の発現が増大し,細胞周期が止まる(10R)。MEF,A14などの細胞で実験。

IGFBP1

IGF binding protein 1のプロモーター領域にあるinsulin-responsive elementに結合する(13I)。



その他未整理

Foxo の分子系統 (3)。


ヒトの Foxo が長寿と関係しているという association study は,2012年の時点で少なくとも8個ある(15I)。以下に示すマウス,Drosophila,C. elegansと同様に,寿命を延ばす作用があると考えられる。

> dfoxo null mutant は,野生型に比べて寿命が短い(16R)。

  • ただし,カロリー制限やタンパク質制限に対する寿命の変化は野生型とほぼ同じである。

> Head fat body で dFOXO を発現する系統はオスもメスも寿命が長い(7R)。

  • 酸化ストレス耐性も増大するが、繁殖には影響しなかった。
  • Head fat body, peripheral fat tissueに脂質がたまった。
  • ほぼ同時に,fat body での過剰発現で寿命が20 - 50%延長という論文が別団体からも出ている(6R)。なお,fat body で dPTEN(ショウジョウバエのPTEN)を過剰発現しても長寿になる(14)。

脂肪組織での dFoxo 過剰発現は,dlip2 を通じて寿命を延ばすかもしれないが詳細は不明である(14)。

  • Head fat body でのdFoxo過剰発現は,神経細胞 mNSCs で dilp2 の発現を低下させる。
  • mNSCs はインスリン様リガンドを分泌する神経で,哺乳類のβ細胞と相同と考えられている。
  • しかし,abdominal fat body で過剰発現しても mNSCs dlip2 の発現は変わらない。

C. elegans DAF-16

C. elegans の寿命は多くの遺伝子の変異により変化するが,その多くは DAF-16 を必要とする。

インスリン用シグナルとの関係

C. elegans では,daf-2 遺伝子(インスリン/IGF受容体をコード)の変異体は寿命が長くなることがよく知られている(4R)。この長寿表現型には DAF-16 が必要である(daf-2 & daf-16 double mutant は寿命が長くない; 文献5)ことから,DAF-16 と寿命の関係が盛んに研究されるようになった。

> daf-2 変異体では,さまざまな組織で DAF-16 の核への蓄積がみられる(2I)。

> age-1 変異体では27℃にするとやや核に局在する。完全に核局在しなくても dauer へ移行できる(7)。

> daf-2, daf-16 double mutantの一部の組織で DAF-16 を発現させ,寿命への影響を調べた報告(2R)。

: 神経では 5-20% 程度回復。予想外に短かったのでいろいろ検討したが,やっぱりそうだった。

: 一番回復したのは腸(脂肪組織)で,50-60%。

: ただし,dauer formationへの寄与が最も大きいのは神経だった。

> DAF-16:GFP fusion protein を C. elegans で発現させ,ストレスによる局在変化を調べた論文(7R)。

: DAF-16:GFP はほぼ全身,とくに神経系で強く発現する。Functional であることも確認されている。

: DAF-16:GFP を過剰発現すると成長が遅くなる。逆に,DAF-16 をノックダウンすると成長が早い。

: DAF-16:GFP を発現させると,寿命とストレス耐性が増大する。

: 飢餓,熱ストレス,酸化ストレスで DAF-16:GFP は核へ移行する。UV 処理ではなぜか移行しない。


カロリー制限との関係

C. elegans では,少なくとも以下の8種類のカロリー制限 dietary restriction 法がある(6I)。

  • eat-2 という遺伝子の変異で,餌を食べる能力が低下して結果的に DR になる。
  • Liquid culture において餌の濃度を下げる方法 x 2 種類。
  • DR のような表現型を引き起こす薬品 x 2 種類。
  • 培地上で飼育した際に,ペプトンの量を減らすことでバクテリアの増殖を遅くする。それを食べる C. elegans も DR になる。
  • プレート上に全くバクテリアをおかない(dietary deprivation, DD)。
  • プレート上でバクテリア量を段階的減らす。107 - 1013/mL の範囲で幅広く (solid DR, sDR) 。

 

このなかで DAF-16 の果たす役割は実は小さく,sDR による寿命延長にしか必要でない(6I)。他の文献からの関連する記述は以下の通り。

> DAF-16 は IISの低下に伴う寿命延長には必要だが,DRによる寿命の延長に必要ではない(1)。Drosophila でも FoxO は DR に伴う寿命延長に必要ではない(6I)。哺乳類ではまだテストされていない。

> Sir2 overexpressionによる寿命延長にはDAF-16が必要(1)。

: 哺乳類でも,Sir2 ortholog SIRT1はFOXO3を直接脱アセチル化して活性を制御する(3R)。

> Germ cellsを取り除くとC. elegansは長寿になるが,このときにintestine DAF-16がはっきり核移行する(1)。

> 熱ストレスでもDAF-16は核へ移行する(1)。

C. elegans DAF-16 の文献はここにあります。いずれ整理します。

  1. Kenyon 2005a (Review). Cell 120, 449-460.
  2. Libina 2003a. Cell 115, 489-502.
  3. Brunet 2004a. Science 303, 2011-2015.
  4. Kenyon 1993a. Nature 366, 461-464.
  5. Ogg 1997a. Nature 389, 994-999.
  6. Greer & Brunet 2009a. Different dietary restriction regimens extend lifespan by both independent and overlapping genetic pathways in C. elegans. Aging Cell 8, 113-127.
  7. Henderson & Johnson 2001a. daf-16 integrates developmental and environmental inputs to mediate aging in the nematode Caenorhabditis elegans. Curr Biol 11, 1975-1980.

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References

  1. 三浦直行 2004a (Review). 発生・代謝遺伝子として注目を浴びるフォークヘッド遺伝子. 蛋白質核酸酵素 49, 2558-2570.
  2. Biggs et al. 1999a. Proc Natl Acad Sci USA 96, 7421-7426.
  3. Wang et al. 2009a. BMC Evol Biol 9, 222.
  4. Nakae et al. 1999a. J Biol Chem 274, 15982-15985.
  5. Nakae et al. 2000a. Differential regulation of gene expression by insulin and IGF-I receptors correlates with phosphorylation of a single amino acid residue in the forkhead transcription factor FKHR. EMBO J 19, 989-996.
  6. Giannakou 2004a. Long-lived Drosophila with over-expressed dFOXO in adult fat body. Science 305, 361.
  7. Hwangbo 2004a. Drosophila dFOXO controls lifespan and regulated insulin signaling in brain and fat body. Nature 429, 562-567.
  8. Matsuzaki et al. 2005a. Acetylation of Foxo1 alters its DNA-binding ability and sensitivity to phosphorylation. Proc Natl Acad Sci USA 102, 11278-11283.
  9. Lam et al. 2013a (Review). Forkhead box proteins: tuning forks for transcriptional harmony. Nat Rev Cancer 13, 482-495.
  10. Medema et al. 2000a. AFX-like transcription factors mediate cell-cycle regulation by Ras and PKB through p27kip1. Nature 404, 782-787.
  11. Accili and Arden 2004a (Review). FoxO as the crossroads of cellular metabolism, differentiation, and transformation. Cell 117, 421-426.
  12. Brunet et al. 2004a. Stress-dependent regulation of FOXO transcription factor by the SIRT1 deacetylase. Science 303, 2011-2015.
  13. Furuyama et al. 2000a. Identification of the different distribution of mRNAs and consensus binding sequences for mouse DAF-16 homologues. Biochem J 349, 629-634.
  14. Broughton and Partridge 2009a (Review). Insulin/IGF-like signaling, the central nervous system and aging. Biochem J 418, 1-12.
  15. McCormick et al. 2012a. New genes that extend Caenorhabditis elegans' lifespan in response to reproductive signals. Aging Cell, 11, 192-202.
  16. Sun et al. 2012a. Nutrient-dependent requirement for SOD1 in lifespan extension by protein restriction in Drosophila melanogaster. Aging Cell 11, 783-793.