DNA ポリメラーゼ

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6-30-2017 updated

  1. 概要: DNA ポリメラーゼとは
  2. 真核生物の DNA ポリメラーゼ
  3. 原核生物の DNA ポリメラーゼ
  4. ミスマッチの修復

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概要: DNA ポリメラーゼとは

ポリマーの伸長反応を触媒する酵素 enzyme をポリメラーゼ polymerase という (1)。DNA ポリメラーゼは DNA の伸長反応を触媒する酵素 である。

DNA を鋳型にする DNA polymerase は,DNA の複製や PCR に使われる。RNA を鋳型とする DNA polymerase は,逆転写酵素 reverse transcriptase という名前でよく知られている。

DNA ポリメラーゼには,以下の 3 つの重要な活性がある。


5' - 3' polymerase

5' から 3' 方向に DNA を合成する活性であり,全ての DNA polymerase が有している。


3' - 5' exonuclease

3' 末端のミスマッチ塩基を削り取って修正することができる。


5' - 3' exonuclease

DNA の伸張先にある DNA を分解することができる。原核生物の DNA ポリメラーゼのみがもっている活性である。


真核生物の DNA ポリメラーゼ

真核生物の DNA ポリメラーゼは,局在や機能によって以下のように分類されている (2)。ただし,この表には主要なものだけが載っており,全体では 15 以上の DNA ポリメラーゼがあるとされている。

原核生物のものと異なり,5'-3' exonuclease activity をもたない。つまり,DNA が伸長する先にあるプライマーを取り除くことができない。


種類 局在 3'-5' exonuclease 特徴
α なし

DNA 複製の最初は RNA primer を合成する primase として働く。その後 DNA を 20 塩基ほど合成し,ラギング鎖では DNA polymerase δ に,リーディング鎖では ε に交代する。

β なし
γ ミトコンドリア あり

ミトコンドリア DNA を複製する。

Polg という遺伝子にコードされる。PolgD257A homozygous mutant は mtDNA に変異が多く早老症状を示す (5)。Mutator と呼ばれ,ミトコンドリアが 老化 に関係していることを示した有名なモデルである。

ただし heterozygous mutant は mtDNA に変異が入りやすく,ヒトの老化で通常みられる以上の変異が入るものの,老化速度は野生型と同じで,mtDNA と老化が直接リンクしていないことを示している (5)。

δ あり ラギング鎖において中心的に働く。
ε あり リーディング鎖において中心的に働く。

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原核生物の DNA ポリメラーゼ

原核生物には,6 種類の DNA polymerase がある。

ポリメラーゼ 5'-3' exonuclease 3'-5' exonuclease 特徴
Pol I あり あり DNA 修復に関わる。
Pol II なし あり 損傷 DNA の複製に関わる。
Pol III なし あり DNA 複製に関わる中心的なポリメラーゼ。
Pol IV
Pol V
Pol VI

ミスマッチの修復

ミスマッチの蓄積は,細胞の老化やがんに繋がる恐れがあるため,できる限り DNA 複製の際に修復する必要がある。

ヒトでは,ミスマッチ修復に関連する遺伝子の変異や,エピジェネティックな silencing が リンチ症候群 という病気をもたらすことも知られている (3)。この病気は,大腸,子宮内膜,胃,卵巣などにおける若年性がんの原因となり,全大腸がんの約 5% に関与していると考えられている。

修復する鎖を決定する方法

DNA ポリメラーゼについて調べてみた理由は,「どうやって二本鎖 DNA の一方を修正するように決定するのか」という質問を受けたためであった。DNA polymerase の場合は,単に 3' 末端のミスマッチを認識しているだけのようである。調べている過程で,ミスマッチ修復に関するわかりやすい総説をみつけたので,DNA polymerase 以外のミスマッチ修復機構についてまとめておく。

ミスマッチの修復機構は,大まかにヒト型と大腸菌型に分けられるらしい (3)。どちらの場合でも,修正する鎖を認識するのはエンドヌクレアーゼである。


大腸菌型ミスマッチ修復

修復は以下のように進む (3)。

  1. MutS がミスマッチ塩基対を認識し,MutL と相互作用する。
  2. MutS-MutL 複合体が制限酵素である MutH を活性化し,その認識配列 GATC が切断される。
  3. 鋳型側の DNA は,メチル化修飾を受けている ため,新生鎖のみが切断される。

大腸菌では GATC という配列でしかミスマッチ修復が起こらないということか?


ヒト型ミスマッチ修復

MutS および MutL のオーソログが大腸菌と同じように機能するが,MutH オーソログがヒトに存在しないことから,ミスマッチ修復の機構は長い間未解明であった (3)。

この論文をあまり読み込んでいないのだが,Incision Occurs Without Strand Bias とあり,leading strand ではどちらの鎖も同程度で修正されたようである。ということは,leading strand の方が変異が入りやすいということになる。続報を待つ。

  1. ヒトでは MutL 自身がエンドヌクレアーゼ活性をもち,ミスマッチ塩基の両側を切断する。PCNA, RFC, ATP などに依存的な切断である。
  2. MutL が切断する鎖を決めるのは PCNA である (4)。PCNA は DNA 上を図のようにスキャンし,3'-OH を認識して MutL に伝える。DNA 複製が分かれて起こる lagging strand では,これで新生鎖のみが修復されると考えて良さそうである。図の A のような場合。
  3. Leading 鎖の場合には,PCNA は何を手がかりに新生鎖を特定するのか?

From PNAS. See Ref. 4.

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References

  1. Amazon link: Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology.
  2. Amazon link: 水島 (訳) 2015a. イラストレイテッド細胞分子生物学.
  3. 福井 2015a (Review). DNA ミスマッチ修復系における DNA 切断活性の制御機構. 生化学 87, 212-217.
  4. Pluciennik et al. 2010a. PCNA function in the activation and strand direction of MutLα endonuclease in mismatch repair. PNAS 107, 16066-16071.
  5. Payne and Chinnery 2015a (Review). Mitochondrial dysfunction in aging: much progress but many unresolved questions. Biochem Biophys Acta 1847, 1347-1353.