アルツハイマー病

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4-4-2017 updated

  1. 概要: アルツハイマー病とは
  2. 疫学調査
  3. 原因
  4. 症状と診断

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概要: アルツハイマー病とは

アルツハイマー病は,全認知症患者の 50% 以上を占める神経変性疾患 neurodegenerative disease である。

記憶障害を初発症状とし,40-90 歳の間で発症することが多い (1)。65 歳以下では早発性,65 歳以上では晩発性とされる。

以下の要因が危険因子として知られている (1)。

  • 加齢
  • 女性の方が発症率が高い
  • 低教育歴
  • 頭部外傷歴
  • 遺伝性: とくに apoE 遺伝子の ε4 多型

疫学調査

65 歳以上人口の 13%,85 歳以上人口の 45% が AD を発症していると見積もられている (15)。


> 新潟県糸魚川での調査報告 (4R)。
  • 65 歳以上: 6.2%が認知症, AD 4.0%, vascular dimentia 1.2%, others 0.3%
  • 6.2% は他の調査よりやや高いが,糸魚川は年齢層が高く,地方であるのでそのためかもしれない。

原因

遺伝的要因

アルツハイマー病に関係する遺伝子がいくつか同定されているが,遺伝性アルツハイマー病 Familial AD の割合は 5% 程度と低く,ほとんどが散発性 sporadic である (5I)。

アルツハイマー病との関係が報告されている遺伝子を表にまとめる (1,7)。

ApoE
プレセニリン
Presenilin

プレセニリン 1, 2 があり,130 以上の変異が報告されている (8)。家族性 AD の 90% を占める (11)。

Amyloid precursor protein (APP)

20 以上の変異がみつかている (8)。


直接的要因

アルツハイマー病の病態は多様であり,全ての病態を説明できる原因というものはない (11)。アミロイド β の蓄積と過剰リン酸化タウ hyperphosphorylation of Tau protein の蓄積は多くの病態で観察される現象で,有力な原因として考えられている。ただし,これは認知症の程度と相関する,またはしないの両方の報告がある。

また,アルツハイマー病患者の脳ではアセチルコリン acetylcholine が不足しており,分解酵素アセチルコリンエステラーゼの阻害剤フィゾスチグミン,タクリン,ドネパジルなどが治療薬として用いられている (13)。

原因として提唱されている現象を簡単にまとめておく。

アミロイド β の蓄積

文献 5I, 7

過剰リン酸化 Tau の蓄積

文献 5I, 1I

カルシウム代謝の異常

文献 5I

エネルギー代謝異常

文献 5I,ミトコンドリア機能不全 (7)

酸化ストレス

文献 5I,金属イオンが酸化ストレスの要因となる (7)

炎症

文献 7


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症状と診断

認知機能の診断

アルツハイマー病の診断は,原則としてマニュアルを使った認知機能のテストに基づく。よく使われているマニュアルに,ADAS-cog および FAQ がある。

ADAS-cog

Alzheimer's disease assessment scale-cognitive subscale の略で,認知機能を評価するために一般的に用いられている方法である (14)。日本語版の ADAS-Jcog もある。

もともとは Rosen et al. (16) に基づくもののようである。実際には,40 のチェック項目を作って,それに基づいてアルツハイマー病と対照群の人を検査すると,病気を統計的に検出できるということが示されている。


FAQ: Functional activities questionnaire

FAQ も認知症診断テストの一種だが,ADAS-cog よりも実用的で,実際に一人で生活していける能力があるかどうかを診断することに重きを置いている。


脳イメージングによる診断

MRI や PET などのイメージング技術が診断に用いられている。重要なことは,多くの脳疾患が認知機能の低下に先んじて現れる ことである。

たとえば,PET で診断する低グルコース代謝は,将来の ADAS-cog および FAQ スコアの低下を予測できる (14)。これはアルツハイマー病の早期発見および治療を可能にする。

図は文献 9 の MRI scan 画像である。軽度認識傷害 (MCI; mild cognitive impairment) およびアルツハイマー病 (AD) の患者で,海馬 hippocampus に萎縮があることを示している。

たとえば左下の AD-MCI の青い部分は,MCI 患者に比べて AD 患者で 2 mm 前後の萎縮が起こっている。同様に,左上のパネルをみると,MCI 患者では健常者 NC (Normal Control) に比べてあまり萎縮が起こっていないこともわかる。


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References

  1. よくわかる脳 MRI 第 3 版, 秀潤社, 2013
  2. Johnson 2012a (Review). Brain imaging in Alzheimer disease. Cold Spring Harb Perspedt Med 2, a006213.
  3. Mueggler 2003a. Age-dependent impairment of somatosensory response in the amyloid precursor protein 23 transgenic mouse model of Alzheimer’s disease. J Neurosci 23, 8231-8236.
  4. Nakamura 2003a. Prevalence and predominance of Alzheimer's type dimentia in rural Japan. Phychogeriatrics 3, 97-103.
  5. Lecanu 2006a. Beta-amyloid and oxidative stress jointly induce neuronal death, amyloid deposits, gliosis, and memory impairment in the rat brain. Pharmacology 76, 19-33.
  6. Zhang 2010b (Review). Disease and the brain's dark energy. Nat Rev Neurol 6, 15-28.
  7. Tiiman 2013a (Review). The missing link in the amyloid cascade of Alzheimer's diseare - metal ions. Neurochem Int 62, 367-378.
  8. Gotz 2008a (Review). Animal models of Alzheimer's disease and frontotemporal dementia. Nat Rev Neurosci 9, 532-544.
  9. Yang 2012a. CSF and brain structural imaging markers of the Alzheimer's pathological cascade. PLoS One 7, e47406.
  10. Kashiwaya 2000a. D-β-hydroxybutyrate protects neurons in models of Alzheimer's and Parkinson's disease. PNAS 97, 5440-5444.
  11. Dong et al. 2012a (Review). Advances in the pathogenesis of Alzheimer's disease: a re-evaluation of amyloid cascade hypothesis. Transl Neurodegener 1, 18.
  12. Arbizu et al. 2013a. Automated analysis of FDG PET as a tool for single-subject probabilistic prediction and detection of Alzheimer's disease dimentia. Eur J Nucl Med Mol Imaging 40, 1394-1405.
  13. Amazon link: 河合良訓 監修 2005a. 脳単―ギリシャ語・ラテン語 (語源から覚える解剖学英単語集 (脳・神経編)).
  14. Landau et al. 2011a. Associations between cognitive, functional, and FDG-PET measures of decline in AD and MCI. Neurobiol Ageing 32, 1207-1218.
  15. Liu et al. 2013a. Apolipoprotein E and Alzheimer disease: risk, mechanisms and therapy. Nat Rev Neurol 9, 106-118.
  16. Rosen et al. 1984a. A new rating scale for Alzheimer's disease. Am J Phychiatry 141, 1356-1364.

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