カドミウム: 生物学的な重要性について

other_metabolites/elements/48_cadmium
2018/08/01 更新


  1. 概要: カドミウムとは
    • 発見の歴史
    • イタイイタイ病
  2. 生体内のカドミウム
    • カドミウムの吸収・代謝
  3. 食品中のカドミウム
  4. カドミウムの工業的利用

広告

概要: カドミウムとは

カドミウム cadmium は原子番号 48 の金属元素である。蓄積性かつ遅効性の毒物で、国連環境プログラムの有害汚染物質リスト top 10 に含まれている (2)。


発見の歴史

名前はラテン語の cadmia に由来する (2)。1800 年代の初頭、ドイツでは天然の炭酸亜鉛 (菱亜鉛鉱; りょうあえんこう; cadmia) を加熱し、酸化亜鉛 (亜鉛華) を調製していた。

亜鉛華は本来は純白だが、黄色に着色することがあり問題となっていた。カドミウムは 1817 年にこの着色の原因物質として単離され、新元素として報告された。

ただし、カドミウム自体は 2000 年以上前から黄色の顔料として用いられていた (2)。現在の年間生産高は世界で約 14,000 トンで、カナダ、アメリカ、オーストラリア、メキシコ、日本およびペルーが主な生産国である。


イタイイタイ病

富山県婦中町周辺で最初に報告されたイタイイタイ病は、カドミウム曝露とビダミン D 不足 による公害病である (2)。

神通川上流にある亜鉛鉱山からの排水に含まれていたカドミウムが、これを用水としていた米を通じて摂取されたことによる。


生体中のカドミウム

血液中に 5 ppt、骨および体組織に約 2 ppm の濃度で存在する (2)。

  • ただし肝臓と腎臓に濃縮される傾向があり、ときに 10 倍以上の高濃度の存在が認められる。
  • 全量は年齢とともに増大し、50 歳代で約 20 mg となる。

海水中のカドミウム濃度は、たとえば 2017 年の気象庁の調査で 1 - 81 ng/kg (1)。海棲生物に蓄積する傾向があり、珪藻 Thalassiosira weissflogii はカドミウムを含む酵素をもつことが知られている (2)。

カドミウムの吸収・代謝

カドミウムの代謝は、亜鉛のそれと似ている (2)。ヒトの腸は摂取量の約 10% のカドミウムを吸収する (通常は数 µg/日)。

システイン に富むタンパク質メタロチオネインは、1 分子あたり 7 個のカドミウムと結合し、これを腎臓へ輸送、排出する。メタロチオネインは亜鉛とも結合するが、カドミウムとの親和性の方が 300 倍も高いため、カドミウムは腎臓に蓄積しやすくなる (2)。亜鉛は DNA polymerase の構成成分のため、これがカドミウムに置換されることは望ましくない。


広告

食品中のカドミウム

さまざまな食品に含まれるが、文献 2 では糠、甲殻類、コメ、レタス、ホウレン草、キャベツ、カブなどが挙げられている (2)。

一方、ジャガイモ、トウモロコシ、エンドウその他の豆類にはほとんど蓄積しない (2)。タバコには多量に含まれる。

もちろん、土壌が汚染されていると植物類に含まれる濃度は高くなる。レタスでは 70 ppm という高濃度が報告されている (2)。WHO は、安全な一日摂取量として 70 µg を提案している。


カドミウムの工業的利用

カドミウムは性質の似た亜鉛と比較して便利な性質を持っていることが多いが、毒性のため利用は低下傾向にある。

鋼鉄の表面のメッキに使われた (2)。

  • 0.05 mm 程度の厚さでも、腐食性の大きい海水中で鋼鉄を保護できる。
  • 海水に触れると、表面に溶解度が小さく、かつ透過性のほとんどない塩化カドミウムの皮膜を形成するため。
  • 亜鉛のコーティング (いわゆる「トタン」) では、塩化亜鉛の溶解度が大きいので防護機能は非常に低い。

ニッケルとカドミウムから、ニッカド電池が作られる (2)。

  • 陰極にニッケル、陽極に酸化カドミウム、電解液に水酸化カリウムを使用。
  • 日産で、ニッカド電池を搭載した電気自動車が制作されている。鉛蓄電池よりも軽いのがメリットで、15 分の充電で 250 km を走行可能。

また、カドミウムは中性子捕獲断面積が大きいので、原子炉の制御棒にも使われている (2)。


広告

コメント欄

コメントをどうぞ! (500 字まで)


フォーラムを作ったので、各ページにあるコメント欄のうち、コメントがついていないものは順次消していきます。今後はフォーラムをご利用下さい。管理人に直接質問したい場合は、下のバナーからブログへ移動してコメントをお願いします。


References

  1. Link: Last access 2018/07/18.
  2. Emsley 著、山崎訳 元素の百科事典. 丸善株式会社.