気体定数: ボイル・シャルルから導かれる定数

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. ボイルの法則: Boyle's law
  2. シャルルの法則: Charles' law
  3. 状態方程式の導出

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ボイルの法則: Boyle's law

1661 年、ボイル Boyle は「一定量の気体の体積は、温度が一定ならば圧力に逆比例する」ことを発見した (1)。これが Boyle's law である。


この式は、温度一定の条件下で PV = k (k は定数) とも表せる。これが ボイルの法則 Boyle's law である。感覚的に非常に理解しやすいので、小さい頃は「ボイルはコレ適当に言ってみただけじゃないだろうか?」と思っていた。今でも少し思っている。

シャルルの法則: Charles' law

ボイル・シャルルと一緒にされることが多いが、シャルル Charles の研究は Boyle から 100 年以上もあとのことである。Gay-Lussac の研究と合わせて「圧力が一定 のとき、体積は温度に比例して増加する」ことがわかった。つまり

V ∝ T       (P = 一定のとき)


比例関係なので、V/T が常に一定の値をとるということになる。


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状態方程式の導出

この 2 つの式から 状態方程式 を導出する。式変形はシンプルである。


ステップ 1.

圧力、体積、温度がそれぞれ P1, V1, T1 である気体 (P1, V1, T1) を考える。この気体を 温度一定 のまま体積 V1' まで変化させたときの圧力を P2 とする。つまり(P2, V1', T1) という状態を想定する。

このとき、ボイルの法則から

P1V1 = P2V1'       (式 1)

である。



ステップ 2.

(P2, V1', T1) を、さらに状態 (P2, V2, T2) まで変化させる。この変化は 圧力が一定で温度を変化させる ものなので、シャルルの法則を適用して

V1'/T1 = V2/T2       (式 2)

である。両辺に T1 をかけると

V1' = V2T1/T2       (式 3)


ステップ 3.

式 3 を 式 1 に代入すると、

P1V1 = P2V2T1/T2       (式 4)

これを整理すると

P1V1/T1 = P2V2/T2       (式 5)


となり、任意の 2 つの状態で PV/T が一定の値をとる ことが示された。気体を 1 mol と仮定した場合のこの値を 気体定数 gas constant といい、R で表す。気体が n mol あるとき、P および T は量の影響を受けないが、V は nV となる。よって状態方程式は


PV = nRT       (式 6)


となる。気体定数は実験的に求められ、現在では R = 8.3145 J K-1mol-1 が用いられている。

気体定数の単位

式 6 から単位は (圧力 x 体積)/(温度 x mol) である。各単位の次元を簡単に復習しておく。

  • 力は ma = F で定義される。質量 x 加速度なので MLT-2
  • 圧力は力を面積で割ったものなので、ML-1T-2
  • 体積はもちろん L3

R の次元は ML2T-3mol-1 になるが、エネルギーの次元 (力 x 距離、箱を押す状況を考えよう。ML2T-2) を分子にもってくるとエネルギー/温度 • mol になり、上の単位になる。

状態方程式の解釈

示量変数と示強変数

熱平衡状態にある理想気体は、P, V, T, n の熱力学変数で記述することができる (1)。状態方程式 PV = nRT は、このうち 3 つを決めると残りの 1 つが自動的に決まってしまうことを示している。

系の体積 V およびモル数 n (質量 m も n の関数である) を 示量変数 といい、その値が系に含まれる物質の全量に依存する。一方、圧力 P および温度 T は 示強変数 であり、系のそれぞれの点で確定した値をもつ。


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References

  1. Amazon link: 平尾, 加藤 1988. 化学の基礎 分子論的アプローチ.

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