凍結乾燥機の使い方

experiments/basics/lyophilization
9-28-2017 updated


  1. 原理
  2. 凍結乾燥機の使い方と注意点
  3. 凍結乾燥機の種類と選び方
  4. トラブルシューティング

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原理

凍結乾燥機 lyophilizer は、凍結させたサンプルを減圧して昇華 sublimation によって水分やその他の溶媒成分を取り除くための装置で、基本的に以下のような構造をもっている。なお、lyophilize の発音は [lʌiɑfilʌiz] である。

  • バキュームポンプ vacuum pump で装置内を減圧してサンプルを取り付ける。
  • 昇華した溶媒は、そのままだとポンプに吸い込まれていくが、大体は装置内に低温の部分 (コールドトラップ) があればここで再び液体に戻る。
  • 溜まった液体は、ドレイン drain から排出する。
  • 溶媒が昇華する際に、サンプルから昇華熱を奪ってゆく。昇華熱は一般に大きく、水の場合 2805 kJ/kg である。このためサンプルは常に冷却状態が保たれ、溶けることはない。用途によっては加熱が必要となる場合もあるようだ。

Lyophilizer

物質の物理, 化学的変化が少ないこと、原形のまま乾燥できること、乾燥粉末の水への還元性が良いことなどが凍結乾燥法の利点である (2)。

凍結乾燥法は、実験だけでなく食品産業でも広く使われており、たとえば六花亭のストロベリーチョコは苺を凍結乾燥したものである。フリーズドライと言う名前の方がよく使われているかもしれない。


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凍結乾燥機の使い方と注意点

凍結乾燥機を使う上で最大の注意点は、サンプル取り外しのときに、真空状態がなくなるまでポンプのスイッチを切らないこと である。以下、一般的な手順を述べる。もちろん機種によって詳細は異なるので、付属のマニュアルおよびローカルルールに基づいて使うこと。

  1. 本体の電源 ON

    Option 1: コールドドラップ cold trap
    蒸気を冷却することで液体に戻し、室内に拡散しないようにする装置を cold trap という。エバポレーター evaporator などにもついていることがある。ポンプを蒸気から守る働きもあるので、ついている場合は ON にする。とくに、酸など危険な溶媒を飛ばすときは重要である。
    また 蒸気がコールドドラップ部分に集まるので気圧がさらに低くなり、乾燥時間が早くなるという利点もある (1)。

    Option 2: アルコールバス alcholol bath
    回転させながらサンプルを凍らせるオプションがついている場合もある。

  2. ポンプの電源 ON。
  3. 透明の蓋をして、全ての口が塞がっていることを確認する。ホースが塞いであるかどうかもチェック。ホースが痛んでいると吸引が甘くなるので注意する。
  4. サンプルを取り付ける。通常は、サンプルの繋がっている口のつまみを回すことで調節する。完全に真空になるまでには少し時間がかかる。我々が使っている機械では、0.01 mb ぐらいまで気圧を下げることができる。ただし、経験上 2 mb 程度でもサンプルは融解せず、目的は果たせるようである。
  5. 終了後にサンプルを取り外す。まず、つまみをゆっくりと回してサンプルに空気を入れる。急激に回すと、風圧でサンプルが飛散する可能性がある。完全に真空状態が解除されたら、上部の透明な蓋を外し、全てのスイッチを切る。

Tips

  • 有機溶媒が入っている試料は凍りにくいので、予めエバポレーターにかけると良い場合もある。

オイル交換

Cold trap がついていても、揮発した溶媒の一部はポンプ内部に侵入する。頻繁に使っているときは、月に 1 回程度オイルの交換を行うことが望ましい。

  1. 本体とポンプの接続部を外す。
  2. オイルを抜いて、新たなオイルを入れる。ポンプのスイッチを ON し、少ししたらオイルを捨てるという手順を数回繰り返し、内部を洗浄する。
  3. ゲージを見ながら新しいオイルを入れる。

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凍結乾燥機の種類と選び方

凍結乾燥機はいろいろな実験で使われ、かつ長い間使える機械なので、大体の研究機関では古い凍結乾燥機が置いてあるものである。そのため、スペックについて考えることはあまりないかもしれない。しかし、実際には以下のような点を考慮して機械を選ぶ必要がある。

除去する溶媒の量

研究では小さいスケールの凍結乾燥機がよく使われるが、産業用に数十リットルのものも販売されている。まずは適切なサイズを選ぶ。


溶媒の種類

溶媒によって融点が異なる。沸点の低い溶媒を使うときは、cold trap の温度が十分に低くないと回収率が低下する。たとえば Labconco というメーカーでは -50°C, -84°C, -105°C の 3 種の cold trap がある。

主な溶媒の沸点を表に示しておく (3)。たとえばエタノールを主に飛ばしたい場合、-105 °C のコールドトラップをつけることが望ましい。そうでないとポンプにエタノールが入ってしまい、ポンプの寿命が短くなる (4)。

一般的な油回転式ロータリー真空ポンプを使う場合、溶媒がポンプに吸い込まれることはなるべく避けたほうが良い (4)。オイルを使用しないルーツ式およびスクリュー式ドライポンプでは問題は生じないが、これらのポンプはオイル式に比べて高価である。妥協案として、エタノールを先に飛ばすなどしてポンプへの流入をなるべく少なくし、オイル交換を頻繁に行うことで、ポンプへのダメージを減らすことができる (4)。

溶媒
Solvent

融点

その他の特徴

アセトン

-94.3°C

15% に希釈されていなければならない (3)。

アセトニトリル

-42°C

酢酸

16.6°C

クロロホルム

-63.5°C

DMSO

18.5°C

一般に凍結乾燥するのは難しい (3)。

エタノール

-117.3°C

15% に希釈されていなければならない (3)。

メタノール

-97.8°C

15% に希釈されていなければならない (3)。

0°C

ジクロロメタン

-97°C

15% に希釈されていなければならない (3)。


サンプルの形状

チューブか、バイアルか、トレイかなど。


ポンプの選択

真空ポンプ vacuum pump はどのようなタイプの凍結乾燥機にも必要である。水系の溶媒ならば rotary vane pump で構わないが、酸や有機溶媒を飛ばす場合には hybrid type pump が推奨される。

Hybrid pump は、溶媒に酸などが含まれる場合でもオイルが 10 倍長くもつらしい。


トラブルシューティング

気圧が下がらない
  • どこかでリークしている可能性がある。全てのコックがちゃんと閉まっているか確認する。
  • ポンプの吸引が甘い可能性がある。オイルが足りていないと引かなくなることがある。

内部が汚れている
  • 真空状態を release する前に電源を切ってしまった場合、ポンプ内のオイルが逆流して内部が汚れてしまう。引きが甘くなる気がする。

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References

  1. エイキット株式会社 凍結乾燥機による試料の前処理受託サービス. Link.
  2. 林 1992a. 食品の乾燥 (3). 調理科学 25, 70-79.
  3. 5 questions to ask before buying a freeze dryer. Labconco website. Link: Last access 8/2/2017.
  4. エタノールを含有する液体は凍結乾燥できますか? Link: Last access 10/6/2017.