炭水化物の概要

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4-8-2017 updated

  1. 言葉の定義
    • 炭水化物と糖の違い
    • 糖類,糖質,糖分
  2. 単糖 Monosaccharide
    • アルドース Aldose
    • ケトース Ketose
  3. 多糖 Polysaccharide
  4. 配糖体

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言葉の定義

炭水化物と糖の違い

まずは言葉の定義から。基本的に定義は混乱していて,決定版と呼べるようなものはない。辞書の中では,A Dictionary of Biology (Amazon link) の定義が良いように思う (3,以下のボックスの英語部分)。

日本語部分は 理化学辞典 (2, Amazon link) からであるが,この定義では炭水化物 = 糖質 = 糖となり,さらに例えば重合体のセルロース cellulose まで糖ということになってしまいナンセンスである。

このサイトでは下記の英語の定義を採用し,

  1. 炭水化物の方が糖よりも広い概念
  2. 糖 = サッカライド saccharide は,比較的構造が単純な水溶性の炭水化物 (オリゴ多糖は含むが,いわゆる食物繊維であるセルロースなどを含まない)

としておきたい。


炭水化物 carbohydrate

含水炭素または糖質ともいう。多くは一般式 CnH2mOm をもち,その 成分元素として炭素以外に水素と酸素とを水と同じ割合に含む のでこの名がある。構造は一般に多価アルコールのアルデヒドまたはケトン (単糖) と,それらが脱水縮合した生成物 (二糖,三糖,四糖などオリゴ糖や多糖) をさす。またこれらの還元誘導体 (糖アルコール,デオキシ酸,グリカール) や酸化誘導体 (アルドン酸,ウロン酸,アルダル酸など),脱水誘導体 (グリコセエン,アンヒドロ糖など),さらにもっと広範囲の誘導体 (アミノ糖,チオ糖) までも総称する。広く動値物界に存在し,緑色植物によって二酸化炭素と水から光合成される。動物の 3 大栄養素の一つ。簡単なものは人工的にも合成される (2)。

One of a group of organic compounds based on the general formula Cx(H2O)y. The simplest carbohydrates are the *sugars (saccharides), including glucose and sucrose. *Polysaccharides are carbohydrates of much greater molecular weight and complexity; examples are starch, glycogen, and cellulose. Carbohydrates perform many vital roles in living organisms. Sugars, notably glucose, and their derivatives are essential intermediates in the conversion of food to energy. Starch and other polysaccharides serve as energy stores in plants, particularly in seeds, tubers, etc., which provide a major energy source for animals, including humans. Cellulose, lignin, and others form the supporting cell walls and woody tissue of plants. Chitin is a structural polysaccharide found in the body shells of many invertebrate animals. Carbohydrates also occur in the surface coat of animal cells and in bacterial cell walls.

糖 sugar

元来は Cn(H2O)m で表される炭水化物。現在では多価アルコールのアルデヒド,ケトン,酸や多価アルコール自体,およびそれらの誘導体や置換体,さらにそれらのアセタールまたはケタール型ポリマーもいう (2)。

Any of a group of water-soluble *carbohydrates of relatively low molecular weight and typically having a sweet taste. The simple sugars are called *monosaccharides. More complex sugars comprise between two and ten monosaccharides linked together: *disaccharides contain two, trisaccharides three, and so on. The name is often used to refer specifically to *sucrose (cane or beet sugar).



糖類,糖質,糖分

ここでややこしいのは,日本語には糖類,糖質,糖分という言葉があることだ。これらは 栄養学に関連する言葉 で,ここでも定義がはっきりしない。

いくつか調べてみた最大公約数的な定義では,

  1. 「糖質」は英語の sugar に相当しそう。「糖質 = 炭水化物 - 食物繊維」で,ヒトが消化できる炭水化物という感じ。
  2. 「糖類」はグルコースやフルクトースなど。誘導体である人工甘味料を含まない,糖質よりも狭い概念。
  3. 「糖分」は明確な定義なし。糖質,糖類よりもさらに適当な言葉か? - 文献 4

ちなみに,炭水化物 = 糖質という理化学辞典の記述はかなり分が悪い。農林水産省のページ では「炭水化物には消化吸収されるもの (糖質) とされないもの (食物繊維) があります」となっている。



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単糖 Monosaccharide

単糖 monosaccharide は,重合していない糖のことである。一般に Cn(H2O)m という組成であるが,C, H, O をランダムに並べれば良いわけではなく,アルデヒド基 -C(=O)H またはケト基 -C(=O)R と 2 個以上の水酸基 -OH を含むという制約がある。

アルデヒド基をもつ単糖を アルドース aldose,ケト基をもつ単糖を ケトース ketose という。

では,上記の制約を満たした上で,もっともシンプルな構造をもつ単糖を考えてみよう。まずはアルドースから。


アルドース

  1. アルデヒド基 -C(=O)H は手が 1 本しか残っていないので,分子の末端にしか来れない。
  2. C の数 = 2 でアルデヒド基と水酸基 x 2 を含めると Cn(H2O)m を満たせない。さらに,C に 2 個の水酸基をつけることになるが,これは構造的に不安定。
  3. よって C は 3個。図の グリセルアルデヒド glycelaldehyde がもっとも単純なアルドースである。
  4. 不斉炭素原子を含み,D 型と L 型が存在する。

グリセルアルデヒドの炭素番号は,アルデヒド基から 1, 2, 3 である。C3 がリン酸化された グリセルアルデヒド-3-リン酸 glyceraldehyde-3-phosphate, GAP は,解糖系の重要な中間体である。6 個の炭素をもつアルドース (e.g. グルコース) から 2 個の GAP が作られ,反応が進んでいくのが解糖のメインフローである。


グリセルアルデヒドの構造に H-C-OH を足してゆくと,他のアルドースの構造式になる (6)。


少し画像が小さくて見にくいので,左上から順に表にした。C の数と立体構造によって異なる名前がついている。炭水化物の目次 にもこの表があり,そちらを最新に保つようにしている。


名称 特徴など

グリセルアルデヒド
Glyceraldehyde

エリスロース
Elythrose
スレオース
Threose

リボース
Ribose

核酸の骨格になる。

アラビノース
Arabinose

植物に多く含まれ,他の単糖とは異なり L 体の方が多いという特徴をもつ。

キシロース
Xylose

これのアルコール誘導体がキシリトール。

リキソース
Lyxose
アロース
Allose
アルトロース
Altrose

グルコース
Glucose

主要な栄養源となる糖。

マンノース
Mannose
グロース
Gulose
イドース
Idose

ガラクトース
Galactose

タロース
Talose

ケトース Ketose

アルデヒド基でなく,ケト基 -(C=O)R をもつ単糖を考えたとき,もっとも単純な構造のものは右図 (7) の ジヒドロキシアセトン dihydroxyacetone である。

この分子も解糖系の中間体としてリン酸化された形で生じ,グリセルアルデヒドに異性化される。

以下の図表 (8) に示すように,ケトースの異性体はアルドースよりも少ない。


ジヒドロキシアセトンの構造 (7)
C - 3

図の 1: ジヒドロキシアセトン Dihydroxyacetone

C - 4

図の 2: エリトルロース Erythrulose

C - 5

図の 3a: リブロース Ribulose
図の 3b: キシルロース Xylulose

C - 6

図の 4a: プシコース Psicose
図の 4b: フルクトース Fructose
図の 4c: ソルボース Sorbose
図の 4d: タガトース Tagatose


いずれ,アルドースと同じような表を作ってアップデートしたい。


配糖体 glycoside

配糖体 glycoside とは,狭義には環状構造をとった糖のアセタール誘導体 をさす (2)。

なお,アセタール acetal とは R-C(OR)(OR)-R という構造をもつエーテルの一種で,アルデヒドまたはケトンにアルコールを作用させると得られる。

つまり,糖の OH 基の H がアルキル基,アラルキル基,またはアリール基によって置換されたアセタールを配糖体 glycoside という。英語での発音は [glʌkəsʌid] である。


図 (9) は decyl glucoside で,グリコシド glycoside のうち,糖の部分がグルコースであるグルコシド glucoside の一種である。右に長く伸びている炭素鎖が非糖成分であり,この部分のことを アグリコン aglycon という。

詳細は 配糖体のページ へ。また,glycoside を分解する酵素をグリコシダーゼ という。


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References

  1. Amazon link: Berg et al. Biochemistry: 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。
  2. Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  3. Hine (2015). A Dictionary of Biology.


  1. 糖分とはなんのことでしょうか. Link.
  2. パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1270309.
  3. By Yikrazuul - Own work, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4030124
  4. By Christopher King (Own work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons
  5. By Yikrazuul (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons
  6. "Decyl-glucoside-2D-skeletal". Licensed under Public Domain via Commons.